第9話 貞操の危機
<前回のラスト>
「やめろ!」
ズーレはゆっくりと再びカナに近づいた。
嫌がって顔を背けるカナの顎を掴み、自分の方に向かせるズーレ。
「安心しな。じきに気持ち良くなる」
そう言ってズーレはゆっくりとカナに顔を近づけた。
ボクの心臓が激しく鼓動する。嫌な汗が全身から噴き出す。
――なんとかしないと!
だけど、両手両足も動かせず、部屋の力で上手く力も出せない。
なんとかしないと、カナが目の前で……目の前で……!
ボクは為す術が無いことを認識しながらも、脳をフル回転して解決方法を探す。だけど、見つからない。ボクは悔しくて、情けなくて涙が込み上げてきた。
「やめろ……やめろ……」
だけど、ボクの声は届かない。現実は残酷で、どれだけボクが強くこの現実を変えたいと願っても、何も起こることは無い。ボクは感情を爆発させ、心の奥底から湧き上がるエネルギーを全て使い、叫んだ。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――バアン!
突然、部屋の扉が蹴破られた。そして、二人の女性冒険者が中に入ってきた。
「なんで……お前たちは……お前たちは……まさか、イクリプス姉妹?」
――最強の冒険者。イクリプス姉妹。
赤い軍服の戦闘服に身を包んだミカ・イクリプスと青い軍服の戦闘服に身を包んだオボロ・イクリプス。二人は圧倒的な威圧感を放っている。
二人の顔はそっくりで、お互いに対照的な左右のサイドテールに軍服の色と同じ赤髪と青髪という装いである。そして、その現実離れした美しさは同時に見る者に恐怖を与える。
「く……クソ!」
ズーレはイクリプス姉妹の姿を見て、唇、身体を震わせ、恐怖の色に染まった表情を浮かべた。
「なにこのトラップ。最近こういうトラップを使って悪いことしてたのはアンタ?」
「し、知らないな! なんだよ、勝手に入ってきて! 邪魔をするな!」
ミカ・イクリプスはズーレを問いただした。
その時、カナがイクリプス姉妹を見て叫んだ。
「ミカお姉様! オボロお姉様! 助けて!」
「カナ!」
ミカ・イクリプスは今にも襲われそうになっているカナの姿を見ると、わなわなと怒りに震えた。
「アンタねえ……カナに……カナに何したのよおおおおおおおおおおおおおお!」
その瞬間、ミカ・イクリプスの周囲に炎が渦巻き、部屋の中を駆け巡った。
「ははは! ミカ・イクリプス! ここはあたしの空間。思い通りに力を発揮できると思わないことねえええええ!」
「関係ないわ!」
ミカ・イクリプスの力強い言葉と共に炎柱が暴れだし、部屋の壁に亀裂が走った。
「オボロ!」
「任せて」
ミカ・イクリプスの言葉にオボロ・イクリプスが動いた。そして、ありとあらゆるものを凍結させる冷気を放ち、部屋の壁を凍らせた。そして次の瞬間。
――パキン!
破裂音と共に、空間ごと部屋は粉々に砕け散った。するとボク達はダンジョンの中へと戻ってきた。ボクは手足を縛られているため、無様にダンジョンの床の上で転がった。
「く……クソおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「あ、逃げた! 待ちなさい!」
劣勢になったズーレは走り出し、その場から逃げた。そして、イクリプス姉妹はその後を追った。
「ミカお姉様! オボロお姉様! ありがとうございました!」
カナはイクリプス姉妹の背に声をかけた。そして、ミカ・イクリプスは手を振りながら返答した。
「アンタも気を付けなさいよね! また後でねー」
カナは涙ぐみ、今までボクが『見たことも無い』ような笑顔で最強姉妹の背を見つめていた。
――ズキン。
急にボクの胸に痛みが走った。これは物理的痛みではなく、心の痛み。
カナを守れなかった悔しさと、ボクが知らなかったカナの顔を見てしまったことに対する痛みなのだと思う。
「ちくしょう……」
ボクはダンジョンの床の上で転がりながら、胸の痛みに歯を食いしばって堪えた。
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