第22話 告白
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「ただいまー」
ボクは胸をドキドキさせながら屋敷に帰ってきた。
――これからボクは、ちゃんとカナと話をしようと思っている。
イクリプス姉妹の屋敷からここまでヘカテーが馬車で送ってくれたけど、別れ際に「頑張って」と応援してくれた。それに応えるためにも、ボクは勇気を振り絞る!
夜も遅くなってしまっているため、あまり音を立てないように建物の扉を開く。そしてカナと一緒に使っている寝室に入った。
「あれ? カナ?」
寝室にカナの姿は無かった。それから、いつも食事をしている部屋にも向かったが居なかった。
「どうされましたか?」
「わっ!」
カナを探しているボクの背に、突然使用人の人が声をかけてきた。ボクは突然背後から話しかけられたために驚いてしまった。
「あの……カナはどこに居るの?」
「お嬢様は……温室に居ます」
「ん? そうか、ありがとう」
ボクは使用人の人にお礼を言い、温室へと向かった。使用人さんの様子が少し暗かったのが少し気になったが。
「カナ、居るの?」
ボクは温室の扉を開きながら、声をかけた。
「あら、ポルカ。どうかしましたか?」
「いや、どうかしましたかって……こんな夜遅い時間に寝室に居なかったから」
カナは温室に設置された椅子に座っていた。照明魔導具も使っていないから辺りは真っ暗になっている。ただ、テーブルの上に置かれた、ボクが作ったランタンだけが、カナの周囲をぼんやりと照らしていた。
また服装もいつもの鎧や部屋着ではなく、白いシルクのドレスを身に纏っていたから、カナはいつもと違う雰囲気を醸し出している。とくに、カナの細身に合うスリムなドレスが、今にも消えてしまいそうなほど儚いカナの状態を際立たせている。
「ここ座っていい?」
「どうぞ」
ボクはカナとテーブルを挟んだ向かい側の椅子に腰かけた。
「お父さんと……何かあったんだね」
「まあ、少し言い合いになりまして」
カナはボクに『完璧な』笑顔を見せた。
――「カナさんはポルカさんに『完璧な』笑顔を見せようと背伸びしてたね」
ヘカテーの言葉が脳裏に浮かんだ。だから、ボクはカナの顔を――目をしっかりと見つめた。すると、ボクが今まで『見る』ことができなかったカナの表情が浮かび上がってきた。
「何があったか、聞いてもいいかい?」
「大丈夫ですよ、ポルカ。私の問題ですし、自分で解決できますわ」
そう言うカナは、表情を崩さないように目と頬、口元に力が入っていて、唇を微かに震わせている。そんなカナの姿を見たボクは、急激に胸が熱くなった。感情が爆発した。
「カナ、ボクはキミに伝えたいことがある」
「……何ですか?」
カナの声は震えていた。そして、少し怯えたような目をした。
ボクは、そんなカナを今すぐ抱きしめたくなった。だけど、強く拳を握り、堪えた。
そして、ボクは椅子から立ち上がってカナの目の前に立った。
「ポルカ?」
ボクはカナの手を握り、片膝を立ててその場にしゃがんだ。
そしてカナの瞳をじっと見つめて、言った。
「カナ。ボクはキミのことを愛してる。カナとずっと人生を共にしたいと思っている」
「ポル……カ……」
カナは口をぱくぱくさせながら、混乱した表情をした。
――カナの『完璧な』笑顔は、完全に崩れ去った。
「だから、カナ。ボクにも……キミの抱えている『重荷』を一緒に背負わせてくれ」
「ポル……カ……ああ……あああああああああああああああああああああ!」
カナは泣き崩れた。そしてボクに飛びついてきた。
「いきなり飛びついてくるなんて、危ないじゃないか」
「ポルカあああああああああ! ポルカああああああああああああああ!」
カナに飛びつかれたせいで、ボクは温室の地面の上に倒れこんでしまった。
そしてカナがボクの胸に顔を押し付けながら強く抱きしめてくるものだから、ボクは身動きが取れないでいる。
ボクはカナを抱き返し、カナの頭を右手で撫でた。
カナの『虚勢』で作られていた『完璧な笑顔』という仮面が完全に剥がれた。
いつまでそうしていただろうか。ボクはカナが泣き止むまで、カナを抱きしめ続けた。
きたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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