第20話 カナの「笑顔」
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「お腹すいてきたな」
ボクは工房での作業を終え冒険者ギルド周辺に並ぶ屋台を回っていた。
辺りは暗くなっており星が見える時間帯であったが、今日は雲が掛かっていて見えない。月のみが雲間から覗いている。
「やっぱりハンバーガーにしようかな」
口の中であふれた涎をゴクリと飲み込み、商人のお姉さんヘカテーを探した。
「あ! ヘカテー。今日もやってる?」
「やあ、ポルカさん。ちょうど店を仕舞うところだったけど、まだ少し残っているよ。食べていく?」
「食べる!」
ボクはハンバーガーを受け取り、幸せな気持ちで頬張った。
「カナさんの分も取っておくかい?」
「お願い! というか、屋台閉めちゃうの?」
屋台の骨組みの取り外しにかかっているヘカテーに尋ねた。
「ええ。そろそろ別の町に行こうと思ってね」
「大規模遠征隊にお酒は売れたの?」
ヘカテーの表情は変わり、作業の手が止まった。
ボクは、彼女に別の町に行かれる事態を避けるため、さっさと本題を切り出し、状況を探ろうと思った。
「アタシは君に酒を売り込む話までしていなかったと思うけど?」
「この柔らかいパンを作る技術は酒を作る技術と同じでしょ? そもそも、この料理を出すことのみがメインの仕事であるなら、こんな所で屋台を開かずに街中に店を構えるはずだ。土地を所有する、もしくは借りることができなく、止む無く屋台を出すとしても王都に店を出すはずだ」
ヘカテーの顔から笑顔が消え、真剣な表情になっていく。ボクはそんなヘカテーの表情の変化を見ながら、話を続けた。
「この料理は美味しいけれど、客層は冒険者よりも町で暮らす人のほうが食いつきが良いはずだ。冒険者は長い間ダンジョンに潜るから、こういう柔らかく、鮮度が重要になる食べ物よりも保存がきく料理の方がウケが良いはずだ」
ヘカテーは観念したような表情をした。
「ええ、そうよ。まったく、君は冒険者よりも商人になったほうが良いんじゃない?」
「ボクは冒険と発明をするほうが好きだからね。というか、商人としてどう商談を攻略していくか考えることも、冒険者としてどうダンジョンを攻略していくかを考えることも同じだと思うけどね。とどのつまり、どちらも『作戦』次第というわけさ」
「はは……確かに君の言う通りかもしれないね」
「さしずめ、ヘカテーの作戦はこのハンバーガーのパンの技術が酒に使われていることを示し、イメージで差別化したかったんじゃないのかな? 酒はどこまでいっても酒だ。果実酒でフルーツの違いを見せることはできるかもしれないけど、ビールやワインであったら、冒険者にとってはモノとして同じ。貴族に対してワインを売り込むのであったら、ブドウの産地や作り方、年数などが重要になってくるかもしれない。だけど、今回はダンジョン内での飲料水確保ための酒であるはずだ。だったら、味よりもコストだ。そしてコストの競争に一石を投じたいならイメージに訴えかけるしかない。こういうパンを生み出せるほどの『凄い技術で作った、他よりちょっぴり美味しい酒』という形で競合に勝ちたかったんでしょ?」
「恐れ入ったよ」
諦めた顔で、ヘカテーは全て話始めた。
「何をしても無駄だったよ。というか、初めから意味無かったのよ」
「レイボーン伯爵?」
「ええ、そうよ!」
ヘカテーは怒りを滲ませながら、悔しそうに不満を吐き出した。
「何もかも、商流をレイボーン家が掌握していた。だから、話をすることさえできなかった。全て、どこから何を買うか……もう決まっていたのよ」
「この国……いや、この世界中でかもしれないけれど、レイボーン家は商業にいち早く着目し、力を入れてきたからね。彼らはモノを売ることだけでなく、ここ数年で『モノを売るシステム』まで作り上げてしまった。だから、彼らのルールの上では絶対に勝てないよ」
「そうね。だから、他の商人も諦めてるよ。結局アタシ達は、こうやって広げた屋台での収入しか得られなかった。もう、今後大規模遠征で行商人がこの町に集まることは無いんじゃないかな」
「そうかもしれないね。そうなればレイボーン家は外敵のことを考えなくて済む。領内、ダンジョン内での経済をどう回すかを考えていればいい。まあ……その内側の商人達に嫌われ過ぎてるから不安材料は残っているけどね」
「そうね……でも、カナさんがそのレイボーン家の人間だって信じられないわ。だって、好きな女の子の前で格好良く見せようと背伸びする、とても人間らしい方。レイボーン家の冷徹さを感じないわ」
「ごほっ! ごほっ!」
「大丈夫?」
ボクはヘカテーの話にびっくりしすぎて、食べ物が喉につまりかけてしまった。
「え? カナが『好きな女の子の前で格好良く見せようと背伸びしてた』だって?」
「ええ? 気づいて無かったの? 前店に来てくれた時、ハンバーガーを君に奢ってたでしょ? あたしとのやり取りや君にハンバーガーを渡す仕草とか、全部格好つけてたよ。笑顔もぎこちなかったし」
「『笑顔がぎこちなかった』?」
ボクは驚いて、狼狽えてしまった。
「洞察力が鋭いポルカさんなら気づいていると思ったけど……全然気づいていなかったのね……」
「いやいやいや……だって、だってカナの笑顔は『完璧』だったよ。『完璧』すぎて感情が見えなくて……」
「そうね。カナさんは君に『完璧』な笑顔を見せようと背伸びしてたね。当然感情なんて乗らないよね」
「え……嘘……。しかも、ボクのために……」
ボクは思いもよらない話を聞き、とても動揺してしまった。
――カナの笑顔は『完璧』じゃなかった? 背伸びして格好つけた笑顔だった?
「それに、ハンバーガーを食べてる時、カナさんしきりにポルカさんのことを横目でチラチラ見てたのも……気づいてなかった?」
「いや、まったく!」
「そうだったのか……いやあ、ははは。青春ね」
「笑い事じゃないよ! ボクはすごい悩んでいたんだ!」
ヘカテーはキョトンとして、ため息をついた。
「商売のことについてはあんなに鋭い洞察力を発揮して、良い作戦も思いつくのに……」
「だって! だって……ボクは恋愛なんてこれまでしたことなかったからさ」
「そうか……いや、そもそも恋愛ってそういうものか。自分では色々気づかないものだからね。アタシだって最愛の女性に逃げられてしまったから」
自重ぎみにヘカテーは俯きながら呟いた。
「その……なんで恋人さんとは失敗してしまったの? ヘカテーは頭回るし物腰も柔らかいから、とても失敗するようには見えないんだけど」
ヘカテーは頭上を見上げ、言った。
「たぶん、ちゃんとお互いに話をできていなかったからだと思う」
「え……? 話……?」
「意外に思うだろうね。ポルカさんの場合は話をせずとも色々と気づいてしまう……いや、思考力が高すぎるが故に『自分は気づいている』と思ってしまうタイプだから余計に『話をしなくてもわかる』と思ってしまうのよね」
「う……うん」
図星をつかれてたじたじになった。
「あたしもそのタイプでね。恋人の仕草や声色、話し方、話の脈略等から全て論理的に考えて、話をしなくても分かってあげられる、『理解のある良い女』になろうとしたんだ」
「う……」
ボクも同じことを考えそうだと思い、背筋に汗をかいた。
「でも、やっぱりお互いにコミュニケ―ションを重ねないと、認識のズレは生じてくるものなんだ。認識できないままお互いのすれ違いは増え、心の距離が離れていき……気付いてからはもう遅かった」
「……」
「人は理屈じゃなくて感情で動く生き物だと思ったわ。もちろん理屈は大切だから、相手の感情を推し量る作業は必要だと思う。だけど、本当にそうなのか『話』をして、確かめていかなくてはいけない。そもそもね」
「そもそも?」
ヘカテーは過去の自分の過ちを悔い、噛みしめるように言った。
「仮に必要な情報を全て知っていて、その全てが正しかったとしても、『話』をしないと進むことができないんだよ」
ボクはハッと気づかされた。
――ボクが今まで自分の中で考えているだけで、何も関係性が進まなかった。
勝手に、カナは自分と他の人に対する態度が同じであると見えていたために、自分に対して特別な感情を……恋愛感情を抱いていないと勝手に思い込んでいた。
唇を重ねたことも、挨拶の一つか、性的接触で満足しているだけかもしれないと勝手に疑心暗鬼に陥っていた。自分にそんな感情を向けてくれないかもしれない、という自分の自信の無さも相まって。
「『話をしないと進むことができない』か……。いい言葉だ」
「アタシのことを反面教師だと思って。ポルカさん達には幸せになってもらいたい」
「……ありがとう」
心の中で渦巻いていたもやもやが綺麗さっぱり無くなったような気がした。
いつの間にか、夜空に浮いていた分厚い雲はどこかへ行き、宝石をちりばめたように星達がキラキラと瞬いていた。
「それにしても……カナがチラチラとボクの方を見ていたなんて全然気づかなかったよ。当事者と第三者の視点では全然違うんだね」
「そうだよ。カナさんはしきりにポルカさんを見つめてニヤニヤしていたし、ポルカさんはカナさんと目が合う度頬が赤くなってすぐに目を逸らしていたよ。そもそも、ポルカさんがカナさんの笑顔を『完璧』だと思ってしまったのも、よくカナさんの顔を見れていなかったからじゃない? 正直、見ているこちらとしては付き合いたての初々しいカップルにしか見えなかったよ」
「……なんだよ」
ボクは、凄く下らないことで悩んでいたのかもしれないと落胆した。
「でも、これは自分に自信が……いや『勇気』が足りてなかった、ということかも」
自分を再び見つめなおし、自分の「内部」を確認した。すると、心は穏やかになり、魔力は体内で充実した流れで循環していること確認できた。
「本当にありがとう、ヘカテー。不思議なものだね。たった2回会っただけなのに、キミの言葉はボクの人生を変えてくれたと思う」
「出会いってそういうものよ」
「そうなのかも」
ボクはヘカテーと笑いあった。
そしてボクは、ボクの力になってくれたヘカテーの手助けをしたいと思った。
「ねえ、ヘカテー。感謝の印といっちゃあなんだけど、最後に悪あがきしてみない?」
「……何か良い手があるのかな?」
「ちょうど、ボクはこれから『アカツキ』に行こうとしていたんだ。オボロさんに会うためにね」
「……本当?」
ヘカテーの表情が変わった。
「やってみよう。ポルカさんの頭脳を信用する」
そしてボク達はイクリプス姉妹の屋敷へと向かった。
今ってGW中なの?
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はにゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!




