儀式ツケ払い
それから緊急会議は何事も無かったかのようにすぐ終わった。
解散となり、俺たちは城跡の前で改めて集合した。
「さ、みんな約束通り色々黙っててくれてありがとうな。」
「えぇ。分かってますよ。」
「あーごめん、そろそろ見た目普通にしてくれないか?」
「そ、そうですよ!私たち人間と違う見た目だからって結構慣れない感じで嫌なんですけど?!」
予め俺は黄瀬に頼んでアルフォースとマーガレットに幻影魔法をかけてもらっていた。
バーバラはともかく、2人は人間離れしている外見なので人間の見た目を模倣して上手いことやってくれた。
「おーい!黄瀬!」
俺は遠くにいた黄瀬を呼び出した。
「てことで解いてやってくれ。」
「人使いが荒いなぁ。こっちもこっちで個人的に色々忙しいんだよ、!」
なんだかんだ黄瀬は幻影魔法を解いてくれた。
「ふう、ようやくこの姿に戻れたぜ。」
「俺ってもう行っていい感じ?」
「いや、まだ少しここにいてくれ。」
「それはそうと、みんなちゃんとやれたか?」
「えぇ!もちろん!1人は逃げ続けてたやつを転移で追ってただけだったけど、もう1人は瀕死になってたからちゃんと始末したわ!」
「私はほとんど何もしてませんが、アルフォースがちゃんとやってくれました。」
バーバラは分かっていたが、どうやらアイリスもちゃんとやってくれていたようだ。
「そんで、マーガレット。君はどうだったんだ?」
「わ、私ですか?そりゃちゃんと殺しましたよ!跡形もなくちゃーんと。」
マーガレットの言葉で疑惑が確信に変わった。
「やっぱりそうだったか…。」
「やっぱりって?どういうことです?」
「お前以外全員気付いてるんだよ。お前、マーガレットじゃないな?」
「な、何を言ってるんです?笑」
「お前からずっと魔王や魔獣たちの魔力感じてんだよ。」
「そ、それは戦う途中で…」
「それにそういう呪い的なデバフかけられたとしても、マーガレットはそんなに酷い殺し方はしないんだよ。なんだよ跡形もなくって。」
「ちっ…逃げるしか…!」
「させねえよ?」
俺が手を逃げようとするヤツの方に出すと全身の力が抜けてその場に倒れた。
「お前くらいのレベルなら簡単に体力を奪って行動不能にできる。」
「くそ…まだここにいさせてくれ…!頼む!殺さないでくれ!」
こいつ、命乞いというよりかは懇願に近いように俺にせがんで来ている。
「おいなんだよこいつ…聞いてねえぞ?!」
黄瀬がかなり動揺している。
「こいつにかかってる幻影魔法、お前なら解けるだろ?黄瀬、周りに見られないようにしてからこいつの魔法を解いてくれ。」
黄瀬が周囲に幻影魔法をかけてこいつにかかつた魔法も解いてくれた。
やはり魔獣のような異形の姿をしている。
「これでいいか?」
「あぁ。言うまでもないがこの一件は全て他言無用だ。」
「おい、お前。なぜマーガレットを人質に取ろうとしない?」
「どうせイーサンが今マーガレットのところにいるから意味ないんだけどね!」
「そ、そんな…お願いです!どうか!殺さないで!」
「いいから答えろ。返答次第で殺すか生かすか考える。」
彼は少し黙ったあとに質問に答えた。
「俺は…俺はただ、魔獣として人形のように生きるのは嫌なんだ!人間になりたいだけなんだ!」
「人間になりたい?おかしなやつだな。魔人じゃなくてか?」
「どっちでもあまり違いはありません…。ただ、駒のように扱われるのはもう嫌なんだ!」
「はぁ、なるほどな。だったら話は別だ。お前とお前を創造した魔人の繋がりを解く。」
俺のひと言にみんなかなり驚いている。
「おい!なに考えてんだよ!こいつ敵なんだぞ!」
「黄瀬、まだいたのか。」
「そりゃ見過ごせるわけないだろ!裏切ると分かっててなぜ助けるんだ!?」
「そうだぞ小次郎!何を言ってるのか分かっているのか?!」
「そ、そうよ!何を言い出すかと思えば…」
「いいんだよ。俺にとっちゃ魔人か人間かなんてどうでもいい。こいつもそうなんだろ。」
「ほんとに、いいんですか?!」
「あぁ。その代わり、俺の目的に付き合え。分かったな?」
「あぁ!もちろんだよ!」
「よし、決まりだな。ちょっと待ってろ。」
俺は本物のマーガレットとイーサンをこに転移させた。
「あ!あなたは!」
「本当にごめんなさい!どう謝ればいいか…僕の身勝手な都合であなたを…」
「いいんですよ。あなたは別に悪い人では無さそうですし。小次郎さん!許してあげてください!」
「マーガレットがそう言うなら別にいいが、最初から許すつもりだったぞ?」
「そ、そうなんですね!良かったぁ」
マーガレットは自分のことのように安心している。
「もう!俺は知らないからな!聞いてない聞いてない!なにもここでは起きてないし俺はいなかった!!」
怒ったように黄瀬はどこかへ行ってしまった。
「まぁ、2人とも、徐々にでいいから分かってくれ。」
「…小次郎がそう言うなら、分かってあげるわよ!」
「はぁ、分かった。努力しよう。」
バーバラもアルフォースもなんだかんだ良い奴だ。きっとこの魔獣を放っておけないのだろう。
「それじゃ早めに済ませよう。イーサン頼む。」
「分かりました。これより私の魔法であなたと主との繋がりを断ちます。手を出してください。」
恐る恐る彼はイーサンに手を出した。
するとイーサンは容赦なく小刀で手のひらを浅く切り、血を流した。
「痛っ!」
「ほらまだ手は出していてください。」
イーサンの言葉を信じて彼が手を出すと、イーサンがその手を強く握った。
「それでは始めます。赤涙ノ鎖!」
少し異質なイーサンの魔力が魔獣の手から流れた。
数分後に儀式は終わって、その頃には不思議と手のひらの傷も治っていた。
「も、もう本当に大丈夫なんですか?!」
「私は依頼は必ず対価以上で返します。間違いないですよ。」
少しそれを実感しているようで安心のあまり笑顔が漏れて少年のように笑っていた。
「そういえばお前、名前はなんだ?」
「僕はレンカ!レンって呼んでよ!」
「あら、あんた女だったの?笑 」
「そ、そうなんですか?!」
「まーね笑 男っていうことにしないとご主人様にぶたれちゃうからそうしてるんだ…笑」
こいつも色々暗い過去があるようだ。表情で笑っていても心で笑っていないのが分かる。
「言っておくがレンカ、さっきの依頼の代金はツケだからな。結構な値段するからちゃんと働いて返せよ?」
「もちろん!僕、なんでもするよ!」
レンがまた笑顔になった。こいつ、かなり表情豊かなやつだな。




