覚醒、そして友人
俺とヘイムダルの戦いによって神殿が崩壊して、辺りは神殿の瓦礫だけの殺風景な白い空間になってしまった。
「小次郎さーん!どこにいるんですか…!小次郎さん!!」
マーガレットは全力で俺を何度も呼んだが、何度叫んでも返事は無い。
「アッシューー!」
思わずマーガレットはアッシュの心配をして彼の名前を叫んでしまった。いくら叫んでも反応がない。思わず泣き目になってしまった。
「…アッシュ?」
マーガレットは懐かしい魔力の反応を一瞬微かに感じた。彼の魔力を忘れて間違えるはずがない。助けてと言っているようにポンポンと反応がある。
マーガレットはすぐに魔力の方へ向かった。瓦礫を精一杯の力でどかそうにも重すぎてビクともしない。
「…風天突破!」
泣き目を袖で拭って、瓦礫と地面の間に手を入れて風魔法で瓦礫をどかしたら見覚えのあるやつが倒れていた。
「小次郎さん…良かった、。」
首から脈を測ろうとすると首に深い傷があることが分かった。意識もないしこれじゃいくら叫んでも応答もできない。このままじゃ大量出血で死んでしまう。
古式魔法陣を錬成し回復魔法の準備に取り掛かった。
「回生治癒!」
「ゲボッゲホッ」
俺は喉を回復されたあとに不純物を吐血で外に出して目が覚めた。
「ありがとう、マーガレット。最悪の目覚め方だな。」
「心配しましたよ?笑」
「あいつはどこにいるんだ…?」
俺は得意の魔力感知で辺りのヘイムダルの魔力を探った。
「あそこだ。ちょっと行ってくるよ。君はすぐここから出る準備をしてくれ。」
俺は少し遠くにいるヘイムダルの元に向かった。
「ここか神様。いい戦いだったよほんと」
「もう起こすのか?小僧、お前もよくやるな」
「嘘つけ!お前手加減してただろ」
「さあどうかな。」
俺たちはさっきまで殺し合いをしていたとは思えないほどフレンドリーに話していた。
「さぁ、持っていけ。眼なんて1つでも損害ないし、君は私ほど使いこなすことはできない。」
「それは最初から分かってたさ。最初から眼から選ばれたお前とは違う。だけど精一杯頑張って使うよ!痛覚魔痺酔」
俺はヘイムダルの目に触れて回復魔法の麻酔を使って痛覚を麻痺させた。そのまま慎重に眼を慎重に取り出して自分の目に取り付けた。
「こ、これは…?!」
「いろいろ見えたみたいだな。ここは見通しが良くて見やすいだろ。もっと動揺すると思ったぞ?」
「まぁ、大方少しは予想していたことだ…。それよりありがとうな!」
元の自分の目は狂盗で無理やりそのまま安全にインベントリに保存した。
「小僧、忘れるなよ?その眼は私と繋がっているから視覚も全部共有される。」
「あぁ、プライベートな時はウィンクするか眼帯を付けることにするよ」
2人には奇妙な友情が芽生えつつあった。
「あ、あとこれもらって良いか…?」
俺はそう言ってそばに突き刺さっていたヘイムダルの戦斧を指さした。
「どこまでも強欲なやつだな。構わん!持っていけ。所詮試作品にすぎない。」
「へー、プロトタイプってわけか。ありがとうな!狂盗!」
さすがに持ち運びが不便すぎるので戦斧に触れて盗賊スキルを使って持ち物にした。
「じゃ!もう行くぜ!ほんと色々ありがとな、。」
「速くいけ小僧!二度と来るな。」
俺はマーガレットの方に向かった。マーガレットは俺とヘイムダルがなぜか嬉しそうな顔をしているのを見て不思議そうな表情をしている。
「さ、行こうか。目的地は意外なとこだぞ?」
「散らばった巨人王様のところに行くんですよね?どこなんです??」
「きっと驚くぞ!行こ!」
俺は転移陣を地面に描いて瞬間移動した。
「これでいいんですか?主。」
「あぁ。すまないな、君の手を煩わせてしまって。」
ヘイムダルの影から謎の男が現れた。
「君が嘘をつくなんて珍しいな。君ならあやつの心も未来でさえも見れるはずだろ?」
「あなたの命ですからね。それより…ブルートガングのことなんですが、」
「はぁ、わしから頼んでやろう。」
「ありがとうございます。あとは祈るだけですね。」
二人は一瞬で巨人王と巨人兵が封印されている場所に転移した。マーガレットは周りを見渡すとそこは見覚えのある暗い部屋だった。
「ここってもしかして…」
「あぁ。ムーニー家の地下だ。俺たちが神聖樹の上に転移したときの部屋だよ。」
「おやみなさん、もう終わったんですか?」
ゼラさんの両親のべラルゴとデルフィーが俺たちを待っていたようだ。
「はい。神律眼を無事手に入れました。そのせいでうんこのときはウィンクしながらしないといけなくなりましたが。」
「そうですか笑 ではなぜここに?巨人王様のところにそのまま向かうものと思っていました。」
「それなんですが、この壁画の文字少し変ですよね」
俺はマーガレットが樹上に来た時に話していたエーデルワイス物語の壁画を見て言った。
「…はい?」
「たしかに古い壁画なのでこっちの世界の文字で書いてあるようですが、重ねて謎の文字が書かれていますね。」
「それは大変古い壁画なので傷がそう見えるだけかと…」
「いえ、これは私の来た世界の文字”日本語”です。今の俺には読めませんが、この指輪を外せば言語理解の魔法が解けて読めるはず。」
俺はこの世界に来てからずっと指にはめたロータスリングを外した。壁画の文字が読めるようになったため、殴り書きされていた壁画の日本語を読み上げた。
『千年後に目覚めた友人へ。私を許してくれとは言いません。ですが、最後の私の望みをきいてください。どうか自由を手に入れてください。城木家寿』
読み上げた途端に音声認証が条件に組み込まれた結界魔法術式が発動し、壁の壁画の部分が開いて奥の部屋につながった。