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巻き込まれ宇宙人の異世界解釈 ~エリート軍人、異世界で神々の力を手に入れる?~  作者: こどもじ
学園立志編

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出会い


 海底に堕ちていく怪物を追いかけるように、ダンも暗闇の底に沈んでいく。


 既に水深は2000メートル付近に到達し、SACスーツ越しでも外圧が高まってきているのを感じる。


 それでもまだまだダンの潜航限界には余裕がある。


 常人の精神なら恐怖で押しつぶされてしまいそうな暗黒の深さまで、ダンは平然と追跡していく。


 ――そして、それから少し進んでから、水深2100メートルを少し越えた当りで、ようやく底が見えた。


 怪物の巨体は深海の底に落ちてズシャリと土煙を上げたあと、ゆっくり底に横たわる。


 未だにまだ息があるのか、怪物は口をパクパクとさせながら虚ろ気な眼差しを海面に向けていた。


 ダンが目に光を当てると、ギョロリとそちらに視線を向けて、何かを言いたげに口を動かす。


 ――しかしやがて、目からも光が失われ、ゴボリと大きく息を吐いたあと、怪物は永遠に意識を失った。


 (死んだか……)


 ようやく一息ついたあと、ダンは改めて周辺の景色をライトを付けて確かめる。


 百万ルーメンを誇る強力な高輝度ライトであるにも関わらず、この海底において見えるのはほんの僅か20メートル先まで。


 それでも、マッピングソナーと組み合わせることで、それなりの視界を確保出来ていた。


 先程から、ソナーの視覚化映像によって、周辺の地形が詳細に知らされる。


 (これは……!)


 ダンはソナーが捉えた帆船のような形状を見つけて、思わず周囲をライトで照らす。


 ――そこには、この怪物が沈めたであろう、沈没船の残骸らしきものが、それこそ数百に登る数でこの地に残されていた。


 低温の海水で微生物が活動できず、分解されずにほぼそのままの姿で残っている。


 ダンがどうこうする前に、ここはとっくに死の海だったらしい。


 (凄いな……! 見る人が見れば歴史資料の山だろうに)


 ダンは少年のロマンをそのまま映したような光景に、今自分がいるのが死の世界であることも忘れて興奮する。


 しかし、その時――


 「キュウゥゥゥゥゥーー!」


 突如としてプラスチックが擦れるような音が深海に響き、ダンのマッピングソナーに大量の謎の反応が現れる。


 (なんだ!?)


 ダンは水中銃を構える。


 音の反響からしてその数は百以上。


 かなり突然に現れたが故に、すっかり取り囲まれていた。


 そして、そのソナーの反響は、突如として現れた反応に、異常な形状をダンに示していた。


 (これは……"人間"の形だと! こんな場所で!?)


 あり得ない事態にダンは混乱する。


 ここは空気もなければ光も届かない海の底。


 人間などこんな場所にいれば、ほんの一瞬で圧壊してまともな形は残らない。


 だというのに、ソナーの反響は間違いなく人間の形状をこちらに伝えて来ていた。


 そしてそれは、ゆっくりダンに近付いてくる。


 (どうする……?)


 ダンは水中銃の引き金に指をかける。


 原則として職業軍人であるダンは、知的生命体と思われる存在に先制攻撃は出来ない。撃つ前には必ず勧告をしなければならない義務を負っているのだ。


 相手が攻撃を仕掛けてきたら即座に反撃する用意はあるが、それまでは出方を見守るしか無かった。


 ――そして、ライトの向こうからそれが姿を表す。


 ぬめりとした体についた長い尻尾。


 頭頂部から尻尾の先まで続く長い背びれ。


 単色の青い眼球に、鱗の生えた青白い体。


 いにしえのファンタジーで見た、半漁人のような生き物がそこに立っていた。


 (……!)


 驚いて硬直するダンを他所に、その半漁人は先程倒した怪物の死体を見て回り、手に持った槍で突き刺したり、生死を確認する。


 水深2000メートルで自由に動けている事自体が驚きだが、しかも彼らは知的生命体だ。


 槍のような武器といい、貝殻を飾りに用いた服のような物まで纏っている。


 どうやら敵意はないらしく、ダンの姿と先程の怪物をじっくり見比べて、何かを考えているようであった。


 やがて――


 「キュウゥゥゥゥゥゥ!」


 ダンの正面に立っていた、最も立派な貝殻飾りを付けていた者がそう叫ぶと、半漁人たちは一斉に引き上げていく。


 最後の一人が、ダンに向かって高く槍を掲げたあと、その場から全員立ち去っていった。


 (……なんだったんだ?)


 取り残されたダンは一人呆然とするも、後には真っ暗闇と静寂ばかりが残る。


 しかし目的を達した以上、ここに長居する必要もなかった。


 ダンは身を翻してその場を立ち去り、海面に浮上して無事帰還を果たしたのであった。


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