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巻き込まれ宇宙人の異世界解釈 ~エリート軍人、異世界で神々の力を手に入れる?~  作者: こどもじ
七人の子編

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ドッキング


 「ノア、この設備を"起動"させてくれ」


 「了解しました」


 ダンがそう指示を出すと、ノアは平坦な声で答えて信号を設備全体に送る。


 次の瞬間――ゴゴン……と重い音と同時に、地響きを上げながら設備が浮上し始めた。


 「なっ……なんですか! まだ敵が……!?」


 「大丈夫、ただ地上に戻っていっているだけだ。安心してくれ」


 焦るイーラの肩を支えながら、そう声を掛ける。


 それを他所に、施設は鈍い駆動音を立てながらどんどん上に向かっていく。


 いい加減地上までたどり着いた当たりで、ゴン、と鈍い音を立てて静止した。


 「と、止まった……?」


 「着いたな。よし、外に出よう」


 ダンはそう言うと、二人を伴って出口に向かっていく。


 中に入っていたのはたった一時間足らずだが、外の光はかなり懐かしく感じられた。


 まだ日差しは中天を指しており、出口の周りには、急に変形し始めた遺跡に、なんだなんだと黒妖(ダークエルフ)たちが詰め掛けていた。


 「う、おおお! イシュベールだ!」


 「お供の方もいらっしゃるぞ!」


 「姫様? なんで中から??」


 顔を見せるや否や、集まった黒妖(ダークエルフ)たちから一斉にざわめきが上がる。


 その声に応えるように、ダンは手を上げながら、そして全員に向かってこう宣言した。


 「聞いてくれ! 皆がこれまで遺跡を守ってきてくれたおかげで、私は無事巡礼を終えることが出来た。黒妖(ダークエルフ)族は見事使命を果たした! もうこの地に縛られる必要はない!」


 「お、おお……!」


 ダンのその言葉に、全員が噛み締めるように声を上げる。


 「ここに住まうもよし。別のところに移住するもよし。これから君たちは自由だ。使命を与えた者に代わり、私から礼を言いたい」


 「う、うう……」


 ダンの言葉に、集まった者たちは涙ぐむ。


 特に老人は長い間ここで苦しい生活をしてきて、感慨深いものがあるのか泣き崩れていた。


 「もちろん、ここで暮らすなら私がそれなりに生活を支援する。それがここを守ってくれた君たちに対する恩返しだ。今まで長い間本当にご苦労だった」


 「おおおおッ!」


 ダンがそう締めくくると、黒妖(ダークエルフ)族たちから一際大きな歓声が上がった。


 皆でダンの名前を称えながら拳を突き上げる中で、その内の一人が空を指して大声を上げた。


 「なんだあれは!?」


 そう言われ皆が一斉に視線を向けると――そこには天から太いロープのようなものがシュルシュルと降りてきて、浮上した遺跡の方に向かっていく所であった。


 ダンはそれが何か一目で理解した。


 それはケーブルであった。


 静止軌道上にある"ブラックホール炉"と地面にあるコントロール部と加工場を繋ぐためのものである。


 互いにケーブルで繋いで、リフトを行き来させて生成した金属を地面に運ぶ"軌道エレベーター"である。


 地球でも実用化されているさして珍しくもない技術だが、天から蜘蛛の糸のようにケーブルを垂らしてドッキングする様は、現地人の度肝を抜くのに十分な光景であった。


 「安心してくれ! あれは危険なものじゃない。これこそが皆が守り続けて来たものの真の姿だ」


 ダンがそう宣言すると、黒妖(ダークエルフ)族たちは「おお!」と感心した声を上げる。


 そして、ダンは続けて言った。


 「今から私たちは、改めてこの中を調べる。皆はこのまま元の生活に戻ってくれ。昼になるまでには戻ってくる」


 それを聞いて、集まった住人たちはぞろぞろと解散して元の生活に戻っていく。


 「あ、あの、私も皆と一緒に戻ったほうがいいですか?」


 「いや、君も一緒にくるといい。共に戦った仲だし、君はここの族長の血筋だろう? 内部がどうなっているか知る権利はあるはずだ」


 所在なさげに尋ねるイーラに、ダンはそう答える。


 イーラはそれに嬉しそうに頷いたあと、改めて再び遺跡の中へと足を踏み入れた。


 

 * * *



 浮上した地下の遺跡は、ローマのパンテオンのようなドーム型の形状をしており、中心部の尖塔からケーブルを伸ばして、静止軌道上にあるブラックホール炉と繋がっていた。


 どうやらここはこの星における赤道上に位置するらしく、軌道エレベーターを使用するのに最適な土地であるらしい。


 施設の中心には、さきほど天から垂らされてきたケーブルが繋がっており、これを辿ってリフトが上下する仕組みとなっている。


 「これがコントロールパネルか」


 ダンは、ドームの端の別室にある、小さな端末を前にそう呟く。


 そこにはこれまでと同じように、アクリル板の操作端末と、ホログラムを表示させるパネルが青白い光を放っていた。


 「これは……なんて不思議な……」


 イーラは人工的な光が形作る幻想的な光景に、キョロキョロと興味深そうに室内を見回していた。


 「この施設の中枢だ。……多分ちょっとうるさいのがくるぞ。あまりびっくりしないでくれ」


 「はい?」


 その言葉の意味がよく理解できず、イーラはそう聞き返す。


 しかしそれを他所に、ダンはパネルに手をかざした。


 次の瞬間――


 『いえーーいっ! どんどこどんどんどん! 三つ目の巡礼成功、おめでとうございまーす!』


 『わー……パチパチ……』


 大音量で大騒ぎするエヴァと、三角座りしながらやる気なさそうに手を叩くエアが、ホログラフィックパネルに表示される。


 突如現れた二人の少女に、イーラは目を白黒とさせながら言葉を失う。


 「あ、あれ!? ノアさん?? でもちょっと違うような……」


 『おやおやおや〜? 誰だいこの可愛子ちゃんは! ニューヒロイン誕生って奴ですかい? 旦那も隅に置けやせんなあ』


 『わかる……無双……チート……ハーレム要素……とても大事……』


 「なに訳の分からんことを言っているんだ……。イーラ、こいつらの言うことは気にしないでいいからな。ノアとは似てるだけで全く別の生き物だ」


 「は、はあ……」


 ダンのその言葉に、イーラは釈然としないながらも頷く。


 『あー! AI差別はんたーい! お姉様だけ優遇するのはやめろー!』


 「やかましい。……そんなことはどうでもいい。それよりお前に頼みたいことがある」


 『お父様が私に?』


 ダンの言葉に、エヴァは自身を指差しながらそう聞き返す。


 「ここにビットアイを連れてきて、彼女たちの住まう集落を防衛してやることは出来るか? この付近ではレーザーが有効な化け物が辺りをウロウロしていてな。何機が護衛がいるとありがたいんだが」


 『あー、多分出来るよ? 水の館(エアブズ)を中継してそっちまで何機か連れて行ってもいいけど……どうせなら人工衛星でも打ち上げた方がいいんじゃない? そっちのほうが索敵範囲が広がるし通信も安定するしさー』


 「人工衛星か……。確か白き館(エバッバル)で打ち上げられるんだったか?」


 『うんにゃ、今のままだと素材が足りないから無理だねえ。アルミが必要だし、そこで作ったら良いんじゃない? あと、ビットアイ自体も増産できるよ〜。最大一万機までおっけーだから、反重力(テラオン)フレームが5トン分もあれば事足りるっしょ』


 「…………」


 エヴァのその提案に、ダンは考え込む。


 ビットアイの増産は、確かに最初の段階で機能としては紹介されていた。


 しかしその時は探索するのが魔性の森周辺だけで、台数も現状で足りていたので、増産しようという考えが浮かばなかった。


 だが、これからは事情が違う。


 自分が目を配らせなければならない拠点が、海を隔てて二つに増えたのだ。


 今後また別の館を巡礼した際に増える可能性を考えると、現状の台数と索敵範囲では少々心許なかった。


 「――船長(キャプテン)、提案します。ここ天の館(エアンナ)には金属の生成及び、その加工を行える設備が整っています。ここでエヴァと設計情報を連携して生成した金属をパーツ状に加工し、水の館(エアブズ)を使って白き館(エバッバル)まで輸送すれば、効率的な増産が可能となります」


 黙って熟考していたノアが、そう新たな案を口にする。


 『おおー! さすがはお姉様! そう言うことなら、多分二月もあれば、東大陸(アウストラシア)南大陸(アウストラリス)全土がこのエヴァちゃんの完全監視下に入るよん。水の館(エアブズ)までのパーツの運搬は、そっちまでビットアイを持っていけば私が勝手にやっとくしね』


 「ふむ、それは確かに助かるな……」


 ダンがそう言うも、エヴァは更にこう続ける。


 『で〜も〜? その輸送経路を確立するには、そっちの天の館(エアンナ)が抜け殻だと困るんだよね~。ちゃんと連携が取れる賢い可愛い子ちゃんがいないとさあ』


 「はあ……やっぱりあれはやらんといかんのか」


 エヴァの言いたいことを察して、ダンは深くため息を付く。


 この流れも三回目なので、いい加減慣れてきたものである。


 『まあまあ、そう嫌そうな顔しないで! 美少女が増える分には誰も損しないでしょ? それでは元気よく、"妹ガチャ"いってみよ〜!』


 そう騒がしい声を響かせると同時に、エヴァはビシッと天を指差した。

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