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最強硬度の聖剣の鞘は、死んだ事にされてしまった! 処刑される魔王のしもべと偽りの友情を結びました。  作者: 家具付
第四部 前編 分割掲載

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「こんなに受け入れられるとは思っても見なかったな」


そういったのはフィロさんだ。事実そうとしか言いようがないと、私でも思う。

小さな村という物は、余所者を嫌う傾向が強いというのが、一般的な考え方で、実際に余所者が出入りする建物を、燃やすとか、そういう争いもそんなに珍しい話ではないのだ。

でも、セトさんの故郷は、なんだか皆さんとても、私達余所者に対してのあたりが優しい。

歓迎されているって言うのが、伝わってくるのだ。


「こうも手放しで受け入れられるって言うのも、なんだかおかしな気分よね。やっぱりセトの仲間って言うところが大きいのかしらね」


「ありえそうですよね。家族意識の強い村だから、家族の仲間だから歓迎するって事、ありそうです」


私はギザさんに同意した。今日は村をあげての歓迎会、という名前の、私達の顔を村人に見せるためのお祝いがあって、そのお祝いも夜更けには終わったから、各自帰宅している最中なのだ。

セトさんは、すでに酔っぱらいすぎて、フィロさんに担がれて寝息をたてている。

荷物のように雑に担がれているのに、ぐうぐうと寝息をたてて熟睡するセトさんって、結構図太く育ったんだろう。

寝られる時に寝られるって言うのは、旅暮らしと長期の町の外での依頼とかでは、とても役に立つ能力だ。

寝られない繊細な人は、長期の依頼の最中に体を壊してしまう事も、あると聞いた記憶がある。それは確か、訓練を受けた神殿でだった。

その当時に、ぼろぼろになるまで訓練を受けた私が、同時進行で体に叩き込まれたのは、寝られる時に寝る事だった。

それは結果として大いに役に立つ能力になった。旅の空で何度、ほかの女性の仲間達が、地べたに寝転がる時に体が痛くて眠れないとか、虫の音がうるさくて眠りが浅いとか、そういう事で調子が悪そうだったから、どこでも確実に、短い時間でも体の疲れをとる眠り方とかが出来るって言うのは、すごく便利な能力になったのだ。


「セトはよく寝る」


「こいつの道楽は、寝る事だからな。これでもやたらに、野営での寝床に力を入れているだろう」


「アア。最初に寝袋の性能を見た時、とても驚いタ」


アフ・アリスが同意する。

これは、道中の事実だ。セトさんは、野営の間の寝床ための道具に、とても力を入れていたのだ。

大きさこそ小さい天幕は、雨風を通さない密な生地で作られていたし、中で使用する寝袋は、外側はありふれた物に見えたのに、中はたっぷりの毛皮が敷き詰められていて、ちょっとした高級品だった。

フィロさんやギザさんが普通の寝袋、といわれる自分たちの使うものを見せてくれたけれども、それらは中に毛皮が敷き詰められていなかった。中綿といわれる、保温性や断熱性その他の快適性を増すための中身はそれなりに詰まっていたけれども、セトさんほどじゃなかった。


「俺達は、逆に……二人が地べたに布一枚で寝転がるという猛者っぷりに驚いた」


「最初は冗談かと思ったのだけれど、二人とも寝不足って感じの態度じゃなかったから、強い人っているのねって感心したわ」


「私は……大荷物を運べない事情の旅とかを、していた事があるので」


私は曖昧にごまかした。勇者一行の旅は、町に泊まる事の出来ない時もあって、一行の誰も、空間魔法の達人ではなかったから、持ち運びできる荷物の容量に限りがあったのだ。

私は魔法がからっきしだったし、仲間の中で魔法に長けていたシンディさんの空間魔法は、彼女が攻撃超特化型だった事から、あまり容量が大きくなかったのだ。

それでも、ないよりは百倍もいい事だったから、聖姫リリーシャさんと二人で手分けして、旅の荷物を持っていた。

その荷物の大半が、私以外の女性三人の為の色んな物で、すごかったっけな。

まあ……三人分の天幕を張るのは私の役目で、三人分の寝床をしつらえるのも私に任されていた。

それでも、立地条件が悪かったら、三人とも結構繊細だったらしくて、寝不足になりがちだった事まで、ふと思い出した。

八つ当たりされた事、けっこうあった。

もてる荷物に限りがあったから、天幕の中身の量や質にも、限界があったしね。

セトさんは市販の荷物入れに、入れられるだけの荷物という制限の中で、結構頭を使ってやりくりしているほうだと思える。

それくらいに、セトさんはすごかったのだから。

フィロさんもギザさんも野営慣れしているのは間違いない、荷物の選び方や運び方だけれども、セトさんが常識離れすぎてて、どっちが普通なのかわからなくなりそうだった。

対する私は荷物がほとんどない状態で、あっちに行きこっちに行きで、衣類さえ最低限すら持っていないかもしれない身の上。

アフ・アリスに至っては……もう何もいうまいという世界だった。


「人間、工夫するところが違うという事だ」


いいつつ、フィロさんがセトさんを担ぎなおして、家に入る。


「それでは、また明日。俺とセトとギザは、周辺の採取依頼をやるつもりだが、二人は?」


「働けそうな所を探します」


「手が足りないところが、ないか聞いてミル」


「じゃあ、俺達が帰ってきたら、お互いに情報を交換しよう。外に出る俺達は、魔性の動向がわかるかもしれないからな」


「村に二人がなじめば、私達もやりやすくなる事多そうだものね。二人とも気をつけてね」


ギザさんも家に入っていく。

私とアフ・アリスは、一人暮らしがぎりぎりと思える広さの小屋に、二人で入った、入り口がアフ・アリスには低すぎて、彼は頭をぶつけそうだった。

それでも、ぎゅうぎゅうになりつつ寝る事で、何とか場所は確保できたのだ。結果的にくっついていたから、アフ・アリスが申し訳なさそうに言う。


「私は、大きすぎるだろう」


「簡易宿泊施設の狭さと同じくらいだから、大丈夫だよ」


「……ジルダが気にしないのなら、いい」


アフ・アリスは、魔王のしもべだったからか、あちこち気にならない事の方が、多いみたいだった。






明くる日、私は村長さんに、自分は戦闘要員じゃない事を改めて説明し、この村で出来そうな仕事がないか、相談した。

すると、村長さんは、にっこり笑って


「じゃあ、この村の特産品の、絨毯を作るための糸繰りとかを、やってもらいましょうかね。大丈夫、最初は皆初心者よ。女達でまとまってやる事だから、わからなかったり困ったら、すぐに先輩達に聞けるしね」


といって、私も彼女たちの輪に加わって、そういう細かい作業をする事になった。

アフ・アリスの方は……朝、井戸で顔を洗っていたら、神殿の管理をしているというおじいちゃん神官さんが


「神殿の雑用を、あんたやってくれないか。体も頑丈そうで、背も大きくて、ぴったりだ」


そう、見た目に反する強引さで、彼を神殿の菜園の方に引っ張っていってしまった。

アフ・アリスは不思議そうだったけれども、無抵抗でついて行ってたから、まあもめ事になるのはなさそうだった。

それに元々、アフ・アリスは攻撃的な性格ではないと思う。どちらかというと温厚で、戦いが好きという感じでもないように感じられるのだ。

だから大丈夫だろう。

私はそう思って、とりあえず村長さんに連れられて、女の人達が集まる所に向かい、その日一日糸繰りをしたのだった。


「女の方が手が小さいから、繊細な作業に向くのよね」


「そうそう。男で器用な人はそりゃ器用だけど、爪とか指の太さとかは、やっぱり、男の方が大きいものでしょ、だからこういう仕事はこの村では女の仕事なのさ」


私はなれない糸繰りを一生懸命に覚えながら、村の人たちの話を聞いていた。

たぶん途中は必死すぎて聞いていなかったと思う。

故郷では嫌われ者で、こう言った集まりで行う仕事を回してもらった事はなく、もっと汚れたり皆が嫌う臭い仕事が、私の仕事だったように思い出される。

そのため、こう言った作業は完全に初心者なのだ。

さらに神殿に連れて行かれてからは、戦闘訓練に時間が費やされたし、そのための野営の訓練もあったし、普通の村での暮らしの中で行われる作業は、未知の世界といってよかった。


「あらあなた、糸繰りをした経験が一回もないのかしら」


「あはは……」


「まあ、大きな町で育ったらそうでしょうね。町だと布も糸も、お店で買うんでしょ? この村に来る商人達がいうにはね、こういった村で買い求めた糸や布で、町の女の子は服を作るんだってね」


「刺繍するのにも、糸から始めないだけ楽でしょうね!」


「町って大きいものね」


セトさんの村って、こんなあっけらかんと笑う人達が多いんだろうか。

彼の楽観的でよく笑う性格も、納得する人達の反応だった。

さすがに、私の細かい素性は言えないので、適当にごまかす事にした。

嘘は言わないでおいた。


「こういう事に、縁のない生活だったのはその、お恥ずかしながら事実でして」


「気にしないでよ! これから練習すればいいんだから!」


女の人達はそう言って大笑いした。


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