四話
「……お前、薬の調合も出来るのかよ、真面目になんでもできるんだな」
「……一人が長いと覚えルものだから」
討伐依頼を受けたら、すぐに現地に向かうというわけでなく、集合日時は決まっている。だからそれまでの間に、必要な準備を皆整えるわけで、アフ・アリスが始めたのは、何と薬の調合だった。
物凄く慣れた手つきで、安い薬草とかをすりつぶしたり、千切ったり水をくわえたり、色んな事をして、薬を作っていく。
あんまりにもなめらかな作業だから、セトさんが感心した顔で見ている。
場所はギルドの調合部屋と言われる部屋で、ギルドメンバーが薬を調合したい場合に使える部屋だ。
何でこんな部屋があるのかと言えば、薬屋では扱わない薬とかがあったりするから。
民間療法と言われている、全国的に広まっていない調合の薬は山のようにあって、それを作りたい人っていうのは一定数いるそうだ。
だから、普通の家でやったら煙がすごくて苦情が来るとか、失敗したら大きな音が出るとか、問題もある薬の調合という物をしたい人が、使用する部屋なのだ。
そこでアフ・アリスは、せっせせっせと何かを量産している。
「あんたが作っているのは何の薬だ?」
「セト達が、逃げる時に、役に立つ薬ダ」
「そんなものがあるのか?」
「魔性の目くらましニなる。数分は動きを止められる」
「おいおい……なんかすごいのだな」
「後、春の癒しの薬だナ。今の季節に一番、よく、効ク」
「聞いた事がない薬なんだが、それも古の薬なのか?」
「ウロボロス時代、よく使われていた物だ。効果は……てきめんダな」
「古い墓守ってのはいろいろ詳しいんだな」
セトさんが、心底感心したという声で言う。アフ・アリスはごりごりと材料を潰し、煮込み、出来上がったものを小瓶に入れていく。小瓶は格安で販売されているのを買ったものだ。
そうして出来上がったものはなんと十本にもなり、それだけの量を数時間で同時に完成させる手際の良さは、際立ったものに違いなかった。
「セトはこれ。目くらましの方ダ。フィロは春の癒しの薬。盾になると言っていたかラ。ギザは両方。術者は逃げる事も癒す事も必要になル」
三人はそれぞれ頷き、懐にその薬たちをしまった。
余った一本を、アフ・アリスは私に渡した。
「目くらましだ。君は逃げる方が大事だから」




