三話
換金が終わったセトさんが、さっき声をかけてきたスヴィンさんに教えられた依頼書を、すごい目つきで読んで居る。
そして顔をあげて、フィロさんとギザさんを手招きした。
「フィロ、ギザ。 アフ・アリスだったか? ちょっとこっち来い」
「なあに、命がけの依頼は受けたくないわよ」
「セト、この前の討伐依頼で、死にかけたのはお前だろう」
「わかってらぁ。でもこれ見て見ろよ! すっげえ金額が入るぜ? 受けなきゃ損だろ」
「……セト。金額ガすごいという事は、危険度も高イのでは」
アフ・アリスがさすがに言いたいという調子で言う。中身が何か私も見せてもらうと、そこに書かれていたのは、かなり大掛かりな討伐依頼だった。
王国は、魔王が倒された後の魔性たちの強さが上昇している原因を、突き止めたという事で、北西の荒れた山に、魔神の水晶という物があるらしい。
それは魔性たちが村とか街を滅ぼしていくごとに、邪悪な力を増加していき、魔性たちに加護を与えるとんでもない物なのだとか。
それを破壊すれば、魔性たちの力は激減すると調査の結果判明しており、王国の兵士たちからも精鋭を集めるが、ギルドにも協力依頼をかけたとの事だった。
魔神の水晶を守る魔性たちが、一個体でも相当強いからだとか。
「そんなの当たり前だろうが! 金の高い依頼はやべえなんてな、当たり前のこと過ぎるんだよ!」
「その当たり前の事をわかってても受けちゃうのがセトよ、アフ・アリス」
救えないという声でギザさんが言う。フィロさんはしげしげと依頼書を読み、セトさんに言う。
「セト。お前個人で受けるのか、それともチームか? チームなら、アフ・アリスとジルダは家に残した方がいいだろう」
「……チームの場合、全員参加以外認められてねえって印あるだろ。だから俺単独で受けるぜ!」
朗らかに言った彼の頭を、フィロさんとギザさんが容赦なく殴った。
えっと……あの? 殴るの普通なの……?
びっくりして固まった私と、理解しがたいという顔をしているアフ・アリスを置いて、フィロさんとギザさんが言う。
「お前は盾になるのがいないと、攻撃できないだろう! 一個体が強力だという事は、お前の短剣の間合いではなかなか成功しないって事だからな!?」
「私の術で素早さを増加させて、戦っているおバカがなぁにを馬鹿な事言うのかしら」
「死にに行くわけじゃねえのに」
「あんた単独だと死ぬって言ってんの」
「よく考えろ、セト。他に受注するだろうギルドメンバーは、恐らくチーム単位か、個人でなんでもこなせる奴だろう。お前は一人では何でもできないだろうに」
二人に突っ込まれて、ぐうの音も出なくなったセトさんが、私達の方まで見て、言う。
「じゃあ、チーム全員で受けていいのかよ」
「いざという時は、アフ・アリスとジルダは補助要員という事で、逃がしてもらえばいいだろう」
「個人の能力だけで見たら、あんたも補助要員側って事を忘れないでね、セト」
そして三人が私達を見る。
「受けてもいいか?」
「補助要員だってわかっていれば、前線に出なくて済むし」
「チームに補助要員がいるのは、ごくごく一般的な事だから怪しまれないぞ」
それを聞いて、私は、なんか入れてもらう時とちょっと話違うな、と思いつつも、逃げればいいとわかっているなら、直ぐ逃げようと心に決めて頷いた。
「危ない事はこれっきりですからね」
「……」
私が言うと、アフ・アリスも頷いた。
こうして、私達はその討伐依頼を受ける事になったのだった。




