1話 料理研究部
見切り発車です。
2万文字くらいは書いてありますが、そこからはノープラン。処女作。
カチ……カチ……カチ。
時計が時を刻んだ
カチ……カチ……カチ……。
その部屋にいる大半の人が、息を潜めて時計の針を見つめる。
カチ……カチ…………カチ………………カチ。
時計の長針が30を指すと、
キーンコーンカーンコーン。
授業終了のチャイムが鳴った。
「では、」
「授業を終わります起立気をつけ礼ありがとうございました」
委員長は数学教師の言葉を遮って強制的に授業を終わらせた。
と、次の瞬間、
ドダダダダダダッ
委員長を含めた生徒の大半が廊下の窓を、ベランダの窓を、教室の出入り口を開け、とある場所へ向かって走り出した。
……さぁ、弁当争奪戦の始まりだ。
ある高校の部室に四人の男子がいた。
「俺はいつも、俺のクラスメート頭おかしいんじゃね?と思ってしまう」
顔はイケメンで背も高い少年の川原 勇火。
今はひきつった笑みを浮かべている。
「うん。『弁当ーーー!!!!』って叫びながら、三階の窓から中庭に
飛び降りるクラスメートを見ると、僕もそう思うよ」
苦笑しながら勇火に同意する、見た目も中身も好青年、山中 真。
「……たった五個のお弁当を、六百人が命がけで奪い合うなんてな。……そんなにこのお弁当に価値はあるのか?」
少し首をかしげる青っぽい黒の髪を持つの少年、玉井 夜哉。
「なにいってんだよっ。すんごい美味いじゃないか。命かける価値くらいあるんだよ、流石、料理上手の夜哉だぜっ」
キラキラした目で夜哉を見るのは背の低い少年、朝日 奏多。
今は学校の昼休み。昼食を食べる時間。
だからか、四人の前には全く具が変わらない、四つのお弁当が置かれている。
「じゃ、みんな揃ったし食いながら話すか」
勇火が夜哉を促した。
「……わかった。ではいくぞ。
異世界の食材達よ。今日も私達の命を生き長らえさせてくれる事に感謝し、貴方達の命を無駄にしないためにも残さず食べる事を誓います。
では、いただきます。」
「「「いただきます」」」
四人は透明な弁当箱を開ける。
「んーと、今日の弁当の中身はなんだっけ」
勇火は呟いた。
「……はぁ。お前は朝、説明しながら、目の前で調理した料理の内容も覚えてないのか」
夜哉は勇火の呟きに呆れてため息を吐いた。
「仕方ねぇだろ。俺は料理はサッパリだ。
そんで、覚えられないもんは覚えられないもんだ。俺は悪くない、覚えにくい料理が悪い」
「それは仮にも料理研究部の部長がいうことじゃないだろっ!?」
晴れ晴れとした顔をした勇火に、奏多が突っ込みを入れた。
ここは料理研究部の部室。食材も調理器具も冷蔵庫すらなく、四人で使うにはとても広い部室。
この部屋にあるのは学校でも使う、木の机が四つと、木の椅子が四つ。
そして部屋の四隅に置かれた、サボテンのような植物のみ。
「……お前は何故そんなに覚えられないんだ?学年一桁のお前の頭ならすぐに覚えられるはずなんだが」
夜哉はやれやれと首を振った後、真に試すような視線を送った。
「……真は今日のお弁当の献立、覚えているか?」
「ええええと、確か……」
突然、自分に質問が来たことに焦りながら真は、自分のお弁当を見ながら必死に今日の献立を思い出す。
「サンダブルー魚の味噌煮に……後はワイバーン肉の生姜焼き、後は……芋のサラダ?と海藻の……何か」
「……50点。奏多、修正を頼む」
「オーケー。サンダブルー魚の味噌煮、ワイバーン肉の生姜焼きまではあっている。そして、ヘユ芋のサラダ。
タシのカレードレッシング。
海藻は、ヌメカの煮物。……これで全部だよな?」
「……流石奏多、料理に関しては完璧だ。なに一つ間違ってなどいない」
夜哉は冷静に、しかし喜びを少し交えた声で賞賛する。
「……真も惜しかったな。途中までは完璧だった。良くやった」
夜哉は視線を真に移し、落ち込んだ様子を見せた真を励ます。
「うん……」
「そんなに気落ちすることはない。これはただのクイズだ。そしてお前より、覚えられない奴がいる。お前はすごい奴だ」
「うん、ありがとう」
真は夜哉を見て礼を言った。
「……礼を言うことなどしていない。
……さて、お前、川原 勇火。一番この中で学校の成績も、授業態度も良くない奏多が完璧に言えたのだ」
「え?おれ散々な言われよう、
なんだけどっ……」
夜哉は奏多を無視し、話し続ける。
「学校の成績が一番いいお前が覚え……」
「ごめん、夜哉。説教中悪りぃけど、……来る」
勇火が突然夜哉の話を遮った。
勇火の言葉を聞いた三人は慌てて弁当をしまう。
「……そうか、説教は後でな。皆、準備は出来たか?」
「うん」
「あぁ」
「おう」
三人は夜哉の問いに肯定した。
「来るぞ。身構えとけ」
勇火がそう言った瞬間、四人はその教室から消えた。
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