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即興短編

きょうきょうふのお味噌汁

 あたしが学校から帰り、食堂に入ると母が料理をしていた。ご機嫌そうな笑顔であたしを振り返り、言う。


「絢音ちゃん、お帰り。今日のごはんはきょうふのお味噌汁よ」


 普通、そうじゃないんじゃない?

 あたしは心の中でツッコんだ。

 普通、『きょう、ふのお味噌汁よ』なんじゃね?


 お嬢様育ちの母は滅多に料理をしない。嫁ぐ前は家に料理番がいたらしいから、花嫁修業などもたぶん、していない。


 そんな彼女が作る料理は、確かに恐怖の料理かもしれないと考えた。


 今日はたまたま家政婦の福田さんが休んでいたようだ。そういう日には大抵、自称料理が趣味の父が担当するのだが、どうやら緊急の手術が入って忙しいようだ。


「あっ……、あたしがするよっ!」


 思わず急いで手を挙げ、小走りになった。食堂中には既に恐ろしい匂いが漂っていたので。



 鍋の中を覗くと、味噌が開けかけの袋ごとお湯の中に叩き込まれていた。レトルトカレーのように作るものだと思ったのだろうか。入り切らないところの味噌のビニール包装が、鍋に触れて溶けていた。


 隣のコンロには大きな鍋がかけられ、ぐつぐつと音を立てながら、嗅いだこともない、しかし明らかに何かの肉の臭気を発していた。


 私、これを開ける勇気がない。



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― 新着の感想 ―
[一言] こわい(;´・ω・)
[良い点] 楽しく読ませていただきました! まさに、きょうふの味噌汁ですね。 私もコレを開ける勇気はないですが、 何を入れたのかが気になります。 あ、、、私の家も きょうふ入りの味噌汁でした(笑…
[良い点] きょうふの味噌汁が、まさに『恐怖の味噌汁』だったとは!
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