よく転ぶ光の王子
なぜ転ぶっ!
幸い、気配を消して近寄ったあたりで躓くので第二王子殿下はいまだ地面と仲良くはしていないが、…ここまで転ぶとは思ってなかった…と、少し呆れるダグ。
それは学園初日から始まった。同じ教室になったのはたぶん何かしらの力が働いているとして…、ダグの机の脇を通り過ぎようとしたときだった。あっ!と小さな声と共に転びそうになったのだ。もちろん支えたが。
これは自分が思った以上なのでは?と思ってしまったダグは悪くない。
それからはもう目が離せなかった。気が抜けるのは授業の間だけ。席を立とうものならすぐ後を追う。エリーが見れば「やだダグ、もうストーカーじゃん!」と言われること間違いなしであった。
支え続けて一カ月、今日も片腕で転ぶのを阻止し、側を離れようとしたその時、ふいに腕を掴まれ固まる。
「待って、…その…えっと…ちょっと話したいんだけど……。」
そう言われて中庭のベンチへ移動すると、
「…あの…、いつもありがとう、…兄上から言われたの?ごめんね…」
「いえ、いやその…(何て言ったらいいのか…)お気になさらず。」
「そういう訳には…あ、だったらさ、もう気配消すのやめてくれる?」
「え、迷惑でしたか?」
「ううん、そうじゃなくて、転びそうになるといきなり現れると、僕も周りもびっくりしちゃうから…。」
「それは…申し訳ありませんでした。確かに言われればそうですよね。」
「うん、だからね、普通に僕と一緒に居てくれる?」
「え、いいのですか?」
「もちろんだよ、僕こんなんだから友達いないし、兄上から言われるくらいだから身元もしっかりしてるんでしょ?気配消せるってことは暗部?」
「う、はい、目下訓練中です。」
「すごいね、暗部なんて憧れるなぁ、…僕も気配消したい………。」
何があった王子よ、気配は消せても存在は消せんぞ。
「僕のことはクリスって呼んでね、ダグ。」
そうしてダグは第二王子の側に堂々と侍ることに決まった。