さつまいもの天ぷら
きつねのキナは、おじいちゃんに言いました。
「さつまいもの天ぷらを食べたいよ。」
おじいちゃんは畑に行き、土の中から、さつまいもを三つ取ってきました。
そして、おばあちゃんに言いました。
「キナのために、これを天ぷらにしてくれないか?」
おばあちゃんは、まず、さつまいもを水で洗い、付いていた土を落としました。そして、包丁で食べやすい大きさに切りました。それから、油の入ったなべに入れて、天ぷらを作りました。天ぷらができあがると、おばあちゃんは、天ぷらをなべの中からはしを使って取り出して、皿に入れて、キナの前に持ってきました。
「はい、キナちゃん。どうぞ。」
キナは、おじいちゃんとおばあちゃんのおかげで、天ぷらが食べられます。
だから、ありがとうの気持ちをこめて言いました。
「いただきます!」
キナは、とれたてさつまいもの、あたたかい天ぷらをおいしくいただきました。
おじいちゃんのお家へのおとまりが終わり、キナは自分のお家へ帰ってきました。
おなかがすいて、お母さんに言いました。
「さつまいもの天ぷらが食べたいよ。」
すると、お母さんは言いました。
「それじゃ、今日の夜ごはんは、さつまいもの天ぷらにしようね。」
お母さんは、スーパーへ買いものに行き、さつまいもを三つ買ってきました。
お家にかえると、お母さんはさつまいもを包丁で食べやすい大きさに切りました。それから、油の入ったなべに入れて、天ぷらを作りました。天ぷらができあがると、お母さんは、天ぷらをなべの中からはしを使って取り出して、皿に入れて、キナの前に持ってきました。
「はい、キナちゃん。どうぞ。」
キナは、お母さんのおかげで、天ぷらが食べられます。
だから、ありがとうの気持ちをこめて言いました。
「いただきます!」
キナは、あたたかくて、できたての天ぷらをおいしくいただきました。
三日後、お母さんは地域の集会で出かけてしまいました。夜まで帰ってきません。
そんなとき、キナはまた、さつまいもの天ぷらが食べたくなりました。キナはさつまいもの天ぷらが大好きです。
そこで、留守番を一緒にしていたお姉さんに言いました。
「さつまいもの天ぷらが食べたいよ。」
お姉さんは言いました。
「それじゃ、さつまいもの天ぷらを買いに行こうね。」
キナは、お姉さんとスーパーへ買いものに行きました。
そして、お姉さんは、パックに入ったさつまいもの天ぷらを買ってくれました。
お家に帰ると、お姉さんは天ぷらをレンジでチンして、キナの前に持ってきました。
「はい、キナちゃん。どうぞ。」
キナは、お姉さんのおかげで、天ぷらが食べられます。
だから、ありがとうの気持ちをこめて言いました。
「いただきます!」
キナは、あたたかいさつまいもの天ぷらをおいしくいただきました。
お正月になると、キナはおとし玉をもらいました。
そのおかげで、おこづかいがたまり、好きなものを買えるようになりました。
そこで、キナは思いました。
「さつまいもの天ぷらが食べたいよ。」
キナは電話をかけて、さつまいもの天ぷらを注文しました。
しばらくすると、玄関のベルがなりました。
「お待たせしました。さつまいもの天ぷらです。」
キナがお金をわたすと、配達に来たお兄さんは、さつまいもの天ぷらをおいていきました。キナは自分のおこづかいで買ったのだから、ありがとうの気持ちをこめずに言いました。
「いただきます!」
キナがさつまいもの天ぷらを食べようとすると、なんと天ぷらが「ぷくーっ」とふくれて大きくなり、動き出しました。そして、おこった顔をして、言いました。
「キナちゃん、ぼくがここに来るまで、いろんな人のおせわになったんだよ?
さつまいものぼくを畑で大きく育ててくれた、農家のおじいさんとおばあさん。
そして、畑から天ぷらのお店に、トラックでぼくを運んでくれた、運転手のおじさん。
ぼくを料理した、天ぷらのお店のおばさん。
キナちゃんのお家にぼくを届けてくれた、配達のお兄さん。
そして、キナちゃんにおとし玉をくれた、お父さんやお母さんたちにも、感謝しないといけないよ。」
キナはそれを聞いて、「ありがとう」とたくさん思いました。だから、おこった顔の天ぷらに言いました。
「そうだね。いっぱい感謝しないといけないね。さつまいもさん、教えてくれてありがとう。」
天ぷらは、やさしい顔になり、にっこり笑って小さくなって、もとの天ぷらにもどりました。
キナは、いっぱいありがとうの気持ちをこめて言いました。
「いただきます!」
キナは、さつまいもの天ぷらが、ここに来るまでのできことを想像しながら、いただきました。とてもおいしくて、あごがおちそうでした。
(おわり)