3.サティーさんに会ってみた!
ひらがなだと「ぬ」が好きです
この世界の神は幼女しかいないのかよ、と思わず心の中でツッコミを入れた。古着のようなヨレヨレの子供服を身につけていてとても神のようには見えないが、そういった服装の神なのだろうか。
「サティーさん、初めまして坂下風雅です」
「ひゃっ、ひゃい、ミきゃエルさんとエンみゃさんからきいてます、きてくれて、ありぎゃとうございみゃす」
溢れ出る可愛さに思わずニヤけそうだが、俺はロリコンじゃないと呪文のように唱えて抑えておく。幼女ながらに、丁寧ではあるが、何を言っているのか頭に入ってこない。しかもさっきから遠くのクマのぬいぐるみに隠れて喋っている。内気な女の子なのかな?。
だけど、相手は神だ、もしかしたらサティーさんもミカエルさんやエンマさんみたいに美女に変身するかもしれないと思うとニヤけがでてしまいそうになる。
「え、えとそれで、僕は何を……」
「ひゃ、ひゃい!え、えと……」
「そこから先は私が説明致しましょう」
「え!しゃ、しゃべった!?」
「失礼、私の名前はテディ、こんなクマのぬいぐるみのなりですが、サティー様の執事をさせて頂いてます」
見た目とのギャップに驚きを隠せないが、サティーさんが隠れていたクマのぬいぐるみが喋りだして執事だと言うのだから驚いた。
「まぁここは一旦、リラックスして話し合いましょう。」
パチッ
テディさんが指を鳴らした途端、目の前に椅子と机、紅茶がでてきた。
「わ!?」
とても驚いたが、ここがファンタジーの世界かと改めて実感した。
しかし、なにか違和感を覚える。周りを見渡すと教室ほどの広さの部屋に神の使うものの割には普通の家庭にあるような質素な机と椅子が出てきて、イメージとの違いに実際はそんなもんなのかなぁと、どこか納得いかない。よくよく見てみるとテディさんにほつれがある気もする。
失礼な事を思いつつ紅茶をすすると、美味しいのだが、これも普通の紅茶と言った感じだ。
「申し訳ありません、坂下様、今はこんな安物しか、お出し出来なくて」
「い、いえ!十分美味しいです、ありがとうございます」
怪訝な表情がバレたのか慌ててそう言うと、テディさんは笑顔を返してくれる。見た目は可愛いクマのぬいぐるみだが、大人の余裕を感じさせる。
「さて、突然ではありますが初めにサティー様の収める地、ルギドについて説明致します」
テディさんが再び指を鳴らすと、目の前に地図が現れた。
「これが……」
「はい、こちらがルギドでございます」
地図を見て絶句した俺に真剣な眼差しを向けるテディさん。一方サティーさんは紅茶をすすってご機嫌なご様子。
「大部分が黒いのですが、これはいったい……」
「黒の部分は魔族の支配する地域となります」
「魔族ですか?」
キタコレー!異世界といえば人と魔族の争い!不謹慎ながらもワクワクしてしまう自分がいる。
「言葉や社会、文化を持ち、人類の敵となる存在なのですが、かつて人類と魔族は戦力や領土、物資などにおいて均衡を保っていたのですが、ここ100年はずっと魔族が優勢でして、今ではルギドの7、8割が魔族の支配する地となりました」
「……原因はなんだったのですか?」
「サティー様の弱体化でございます……」
そう言われてサティーさんを見ると、クッキーを食べてご満悦な様子で視線に気づいたのか、こちらに笑いかけてくれた。かわいい。
「かつてのサティー様は素晴らしい御活躍をされていたのですが、各世界の神の会議にて、ルールを破ったと糾弾されまして」
「サティーさんがですか?」
とても、ルールを破るようには見えないのだが……
サティーさんも話し声が聞こえたのか真剣な眼差しをこちらに向けてくる。それもまたかわいい。
「神々の間には様々なルールが定められているのですが、その中に自分の世界の個々人への干渉を禁止するものがあるのです しかし、心優しいサティー様は世界を見回る際に、人や魔族の貧しい子供に食べ物を与え、救っていたのです それがどうやら摘発されたようでして…… 」
「だ、誰が摘発を?」
「わかりません……その時からサティー様の力は減らされ、上手くルギドを運営出来なくなり、人類の力が弱まって今のような状態になってしまいました」
だから、質素な服装や部屋なのか!と合点がいく。
それにしてもやるせない話だ。世の中いいことをすれば報われるって訳じゃないのはわかるが、テディさんの言い方だと、誰かが意図してサティーさんを貶めたようにも感じる。
だがなぜ、そんな状況下で俺が必要なのだろうか。一端の人間である俺に何が出来るのだろうか。
「そこで、サティー様の親友で在られるエンマ様とミカエル様が1つの計画を持ちかけてきたのです」
「ほう、計画というのは……?」
100PV超えありがとうございます!
これからも今作をよろしくお願いします