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ドラゴンの通い妻に胃袋を掴まれています

作者: 十束

ドラゴンだしとりあえずファンタジーだろ(脳死)。

 

 仕事を終え、疲れた体で帰宅する。


「ただいま」


「おかえりなさい。夕食はカレーですよ」


「あぁ、いい匂いがするな」


 迎えてくれるのはスタイルのいい美人さんだ。結婚している訳でも、付き合っている訳でもない。ただ、成り行きでそうなっただけの関係だ。


 パッと見普通の女性に見えるが、実はドラゴンだ。角や翼、尻尾は出し入れ自由で、体の大きさだって変えられる。


 たまたまきっかけがあり、今の通い妻状態が始まった。気づいたら家にいるし、鍵をかけて出かけても帰ってきたらここにいる。そういうものだ。


 上着を脱ぎ、手を洗って食卓に座る。家事全般をしてくれているため、部屋はとても綺麗だ。



 ―――――


 人参、じゃがいも、カレールーを用意する。


 人参とじゃがいもを適当な大きさに切り、油をひいてある程度炒める。


 尻尾を出し、切り落とした後に皮を剥く。皮は粗く刻み、肉は一口大に切る。


 尻尾の肉と皮も入れて軽く炒めたら、水を入れ煮込む。


 野菜が柔らかくなったらカレールーを入れ、手首を切って小さじ一〜二程血を入れる。


 さらに煮込んだらドラゴンカレーの出来上がり。


 肉は舌でとろける絶品で、皮はサクサクとした食感がアクセントになる。血を入れることによって栄養抜群になり、味にまとまりと深みが出る。


 これを味わってしまうと、普通のカレーでは満足出来ない体になってしまうため注意が必要。


 ―――――


「うん、美味い」


「よかった。おかわりもたくさんあるので遠慮せずどうぞ」


 俺が食べているのを、笑顔でずっと見つめている。ドラゴンはめったに補給がいらないようで、たまに俺が作る大雑把な料理しか口にしたのを見たことがない。最初は戸惑ったが今では慣れたものだ。


 その後二杯程おかわりをして、残りは明日の朝飯だ。どこからか取り出した鱗を鍋に入れている。


 鱗が少しずつ溶け出し、少し辛さが増し味変になる。時間が経って固まったり、鍋にこびり付くのをなくす効果もあるらしい。


「じゃあ、そろそろ帰りますね。また明日」


「そう、だな。また明日」


 もうかなりの間家事を任せ、彼女に頼りきりになっているが特に関係性が進む訳でもなく、喉につっかえる様な罪悪感とそれでも異種族だという葛藤が胸に残る。


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。なんでもないんだ」


「そうですか。では、また」


「ああ、気をつけてな」


 曖昧な態度でうやむやにして、だらだらと日々を過ごすのはやめにしなくてはならない。決断しなくては、自分と相手どちらにとっても良い結果は待っていないだろう。


「まあ、もう決まってるんだよなぁ」


 そう一人口に出し、自室の棚にしまっている指輪を眺める。


「勇気、出すか」






 一週間後、一組の夫婦が誕生した。とはいえ、一人は戸籍がないのであくまでも本人達の中で、ではあるが、幸せならなんだろうと構わないのだ。


 ちなみに、理由の一つは料理だそうだ。美味しいは正義とのことである。


お腹が空いて書いた。後悔している。

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