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天使と悪魔   作者: 333
天界編
9/70

第9話 チェス盤

 それから数日後、皆んなと名前で呼び合う仲に。


 食事も食べられるようになったので、

ガブリエルお手製のマドレーヌを頂こうとしたら

ウリエルから帰還きかんしたとの手紙を貰う。


「僕とアコだけで行くよ、

仲間が増えたと知られたくない」


「そうね、じゃあ気を付けて」


「危険があればぐ駆けつけるぜ!」


 2人の大天使に見送られ、図書館へ。

館内かんない談話室だんわしつでは

ウリエルがお茶の用意をしていた。


「人間に戻ったのか……

小悪魔はいじ甲斐がいがあったのに」


「アコを虐めたら許さない!」


 カマエルがビンを抱え背後に回すので、

身体があちこちぶつかり視界もさえぎられる。


「くくく、今は虐めないがな。

それよりアコを召喚しょうかんした者が分かったぞ」


 ウリエルの説明をちゃんと聞きたいのに、

後ろにガッツリ抱え込まれて何も見えない。


「ビンを放して、カマエル!」


 ドンドン叩くけど、反応がないよ~


「何人かめ上げてハッキリした。

犯人は高位悪魔のバシムで間違いない」


「奴はルシファーの側近そっきんだぞ!?」


 今度はビンを乱雑らんざつに置くから

中にいる私はグルグル回ってきそう。


「色々調べているが、大体の予想はついている」


 口元を抑えてパタリ倒れると

ようやくウリエルが気付いてくれた。


「ああ、瓶酔びんよいしたのか?」


 ウリエルは小さなクッションをビンに入れ、

倒れた私をそっと持ち上げて寝転ねころがす。


「服も毛布のままか……妖精服ようせいふくを着せよう」


 指を鳴らしたら、毛布が赤いワンピースに。


「飼い主なら服くらい用意しろ! 

彼女は元人間なんだぞ、羞恥心しゅうちしんもあるだろう」


「ぐっ……済まない、アコ」


 まだ世界がグルグル回ってるけど元気を出す。


「気にしないで、悪気はなかったんだもの」


「ほう、これを許すのか?

……ふふ、いじ甲斐がいがありそうだ」


 なんでぇ~? 

どうしてドSスイッチが入るのよ~!?


「バ、バシムは、どうして私を召喚したのかな?」


「そうだな、詳しく話す前に――

ガブリエル、ラファエル、いい加減出てこい!

出て来ないと此処ここでお仕置しおきするぞ!」


 ウリエルの怒声どせいに天使たちが慌てて登場。


「おほほ、様子見してただけよぉ」


「オレが守ると約束したからな、

護衛をする為には隠れることも必要だろ?」


 2人の天使は堂々と椅子イスに座り

ワインとミルク、マドレーヌを用意した。

お留守番を頼んだのに付いてきたのかぁ……


 チラッとカマエルを見ると

バツが悪そうに腕を組んでる。

きっと彼らの気配けはいに気付いたから

あせってビンの扱いがざつになったのね。


四大天使しだいてんしを3人も凌駕りょうがしたか……

小さくても悪魔は悪魔、末恐すえおそろしいな」


 四大天使はウリエルとガブリエルにラファエル

あとは眠ってるミカエルのことよね、

その人数だとウリエルも凌駕りょうがされた事になるよ?


御託ごたくはいい、早く理由を教えてくれ!」


「あら、ルシファーが眠りにくんでしょ?」


「アコはその守衛しゅえいとして召喚されたんだろ。

生まれたての大悪魔ならルシファーのそばにいられるぜ」


 ガブリエルは優雅ゆうがにワイングラスをかざし、

ラファエル少年もピッチャーから

新鮮なミルクをそそいで飲み干す。


「その通り、アコは偶然選ばれたに過ぎない。

ミカエルが目覚めたら黙示戦争もくしせんそうの始まりだ」


 足を組み替えて私達を見回すウリエル。


「任せろ、僕がたくさん殲滅せんめつしてやる!」


 カマエルが一番に名乗りを挙げた。


「ウリエル、その戦争で人間はどうなるの?」


終末戦争しゅうまつせんそうだ。ほとんどの人間が死ぬだろう」


「そんな! 天界と魔界の問題でしょう!?」


 ガブリエルは、ゆっくりさとすように告げる。


「私たちはお互いの国へ行けないの。

だから人間に憑依ひょういして戦うのよ……勿論

天界軍にかれた者は最優先で天使になれるわ」


「体を乗っ取り、殺し合いをさせて

列聖れっせい出来たら幸せなんて――おかしいわ!」


「人間はオレたちのこまとして生まれたんだ。

駒に同情したら悪魔との戦いに負けてしまうぞ!」


 ラファエル少年が叫ぶ。

人間が駒? じゃあ地上はチェス盤ってこと!?


「そんなの駄目よ! あんまりだわ!!」


「戦わなければ地上も悪魔に蹂躙じゅうりんされる」


 ウリエルが厳しい顔で反論した。


「いいえ、皆んなも分かってるはずよ。

黙示戦争をすれば世界は地獄じごくと化すわ」


「じゃあ、僕らはどうすれば良い? 

戦っても地獄、戦わなくても地獄だ!」


 カマエルの言葉にハッと気付く、

地獄だらけの選択ではらちが明かないわ!

私はビンの中で立ち上がって腕を組む。


「善と悪は表裏一体ひょうりいったいよ、なぜ貴方達は戦うの?」


 ラファエル少年は少し驚きながら返事を返す。


「それはミカエルとルシファーが争うから……」


「つまり、ただの兄弟喧嘩きょうだいげんかね?」


 皆んなが静まり返る――

その沈黙を最初にやぶったのはウリエルだった。


「くはは! 小娘に一本取られた!!

我々は天界のプライドにこだわり過ぎていた。

その為に多くの犠牲ぎせいを出すのはなげかわしい」


「やだわぁ~、私たち

壮大そうだいな兄弟喧嘩に巻き込まれていたのねぇ」


「2人とも分かってるのか!?

ミカエルに反旗はんきひるがえしたら

ルシファーの二の舞になるんだぞ!!」


 プルプル震えるラファエル少年をなだめる。


「ラファエルはミカエル様が怖いのね……

だけど貴方も四大天使しだいてんしなのよ、

これからは自分の意志で行動すべきだわ」


「オレは薬師なんだ。

どの天使よりも力が弱くて戦えない」


「貴方は私を人間にしてくれた。

それにミカエル様とは話し合うだけよ、

駄目でも私が全責任を負うから安心して」


「君は僕のモノのだ! 責任は飼い主が取る!」


 戦いに積極的だったカマエルが割り込む。

うう、まだペット扱いかぁ~


「えと、カマエルも賛同さんどうしてくれるの?」


「う~ん、実はよく分からないんだ。

でも最後までアコを護るよ、約束だからね!」


 カマエルって本能ほんのうで動く時があるけど、

分からないまま此方こちらについて良いんだろうか?

不安をいだいてたら

マドレーヌを千切ちぎってビンの中に入れた。


「いま食べるの?……わあ、美味しい!」


 戸惑とまどいつつかじったら

皆んなも残った欠片かけらを口にする。


「うふふ、私の自信作なのよぉ」


「甘い物は苦手だが、なかなかイケる」


 ガブリエルが嬉しそうに笑い、次に

一番小さい欠片を口に入れるウリエル。


「オレも食べるぞ! うん、旨い!」


「ほらねアコ、皆んなで分け合う方がいい」


 更にラファエル少年が続き、

最後のマドレーヌを平らげニヤリ笑うカマエル。


随分すいぶんと楽しそうですねぇ」


 ウリエルの後ろからヒョイと

茶髪ショート茶目の猫背ねこぜ青年が現れた。

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