第6話 ビン
「しっかりしろ、アコ!
今すぐ地上へ行くぞ、必ず助けるからな!!」
「やれやれ、慌てん坊な2人だ」
「許さない、お前を魔界へ堕とす!」
「おっと、話しは最後まで聞け。
取り敢えず君は此処に入るんだ」
羽根をヒョイと掴まれて安っぽいビンの中へ。
怒っていたカマエルも興味深々でガラス瓶を見つめた。
「ウリエル、この瓶は?」
「この中は時間軸から切り離されている。
要するに、時間の流れを遅くする効果があるのだ」
つまり、この中なら安全ってこと?
カマエルはホッとしてガラス瓶をコツンと叩く。
「アコ、苦しくない?」
「全然、むしろ居心地が良いわ」
まるで澄んだ森の中にいるみたい。
「急遽用意した割にはいい代物だろう?
さて、悪魔なのに清浄な空気を纏っているのは
誰かが君を勝手に召喚した結果と言える」
まさか魔術に失敗したってこと?
誰も弱小悪魔なんか呼び出さないよね、
ムキッー! 無理矢理転生させた上に大失敗してるじゃない!
「どうどう、君には小さなカップを用意しよう」
ウリエルが手を振ったら何とミルクジャグが現れた。
すご~い、マジシャンみたいよ!
はあ、ミルクが美味しい……水以外でもいけるわ。
「うぷぷ、単純な悪魔だ。
見ろ、ハート型の尻尾が上機嫌に揺れてるぞ」
「いいから話を続けろよ、ウリエル」
「転生術は色々と問題があり封印されたはずだ。
しかも私の管轄外で……有り得ないだろう?」
「ウリエルの目から逃れるには魔界しか考られない。
だとすると、アコは悪魔の生贄として呼び出されたのか?」
うそぉ~、私ってイケニエだったの!?
「いや、わざわざ転生させたんだ。
生贄なんて些末なことの為に大掛かりな魔術は駆使しない」
「じゃあ他に何がある?」
「さあな、ともかく術者の特定が先決だ。
魔界に於いて大魔術を発動できるのは……」
ウリエルは足を組み替えて考え込む、
それを見ながらカマエルが質問する。
「そもそも、なんで転生させたんだ?」
「資料には転生者からの魂は極上で
高位クラスが生まれると書いてあったな」
2人の天使はビンの中にいる私を見つめた。
「うぷ、アコは高位悪魔に見えないぞ?」
「フッ、極上の魂か……コレは大失敗だろう」
分かるよ、笑いたいのを堪えてるんでしょ?
ウキッー! どうせ最弱な悪魔ですよ
小っちゃな悪魔ですよ、召喚者めぇ~許せん!!
「因みに、君は何処で生まれたんだ?」
「う~ん、日本人だった事しか覚えてないの。
気付いたら小さな悪魔でブラック会社にいたわ」
「ふむ、転生術のせいで記憶が飛んだか……
まあ誰かが地上のみならず、
天界をも荒らそうとしてる可能性が高いな」
んん~? きな臭い話しになってきたよ!?
「その時は、僕が一掃する!」
「さて、私も断罪人の仕事を始めよう。
高位悪魔を探してお仕置きをしなくてはな、
……くくく、捕らえて断罪するのが楽しみだ」
黒く笑うウリエルに寒気がする。
この天使は間違いなくドSだよ~
話し合いも終わりカマエルと外へ。
「この状況に落ちた原因は分かったけど、
今のところ私は小さい悪魔のままね」
「ごめん、期待させて更に小さくした」
「いいのよ、ビンも貰えたし
死なずに済むなら万々歳よ!」
「いや、時が遅くなるだけで
寿命はどうなるか分からない」
「うぐぅ、もう一度ウリエルと話せないかな?」
「それは無理だな、今頃地上へ向かっている」
あゝ犯人を探すと言ってたもんね、
カマエルと立ち尽くしていたら
そこに長身美女と"そばかす顔"の少年が現れた。