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天使と悪魔   作者: 333
天界編
3/70

第3話 正体

 金髪パーマ青目の美少年は大体だいたい13~16才位、

服装は白シャツと黒いスラックス。

華奢きゃしゃなのにつかれを知らないようで

一日中歩き続けることもしばしば。


 山に登って木の実や果物を集めたり

湖を散策さんさくしたあとハンモックで休憩きゅうけいなど。

常に虫かごを持って出掛でかける為、

美少年の動向がつぶさに見えてきた。


 彼は独りぼっちで誰も訪ねて来ないし、

食事も果物だけで満足してるみたい。

不思議な子だわ~、お腹空かないのかしら?


何故なぜここにいるの?

貴方あなたは果物だけで、お腹も空かないの?」


 虫かごから出された私は彼を見上げて質問した。


「君には本当の事を言おうかな。

ふふふ、僕は人間じゃないんだよ」


 かじっていたリンゴを置いて微笑ほほえむ美少年

……何だかイヤな予感がしてきたわ。


「あ、貴方は何者なの?」


 まさか同じ悪魔、それとも――


「僕はね……実は天使さ! どう、驚いた?」


 て、て、天使!? ライバルじゃない!

目眩めまいがして盛大にひっくり返る。


「わわわ! そんなにビックリしないで!」


「はあはあ、どうして天使が小屋にいるの?」


 私を起こしつつ肩をすくめる美少年。


「天界は退屈たいくつだから地上へ遊びに来たのさ」


 落ち着け、彼は悪魔で私をだましているのかも。


「本当に天使なの?

白い翼もっかも見えないけど」


「もちろん隠してるさ!

地上で羽根なんか見られたらおしまいだよ」


「そうよね……」


 う~ん、天使か悪魔か判断がつかない。

どちらにしてもマズいよね、

この美少年が天使なら私を抹殺まっさつするだろうし、

悪魔なら逃亡者とうぼうしゃとしてつかまってしまう。


「あのう、なわを外して欲しいの。

自由に飛ばないとぐに死んでしまうわ」


 嘘だけど彼が天使なら願いを叶えてくれるはず


「嫌だよ、君がいなくなったら僕は一人きりだろ。

此処ここは素敵な場所だけど退屈で死んじゃうよ」


――こんな身勝手みがってな奴は絶対天使じゃない!


「ちょっと、退屈では死なないわ!

いいから外して、こっちはピンチなのよ!!」


「君は噓吐うそつきだ!

何日も虫かごにいたのに、ピンピンしてるだろ!」


 うっ、悪魔なのに嘘が下手へたなんて三下さんしただ。


「あ、貴方こそ噓吐きだわ!

本当は天使じゃないんでしょう!?」


「僕は天使だ! 証拠しょうこを見せてやる!!」


 そう言って指をパチンと鳴らすと

金色の輪っかに真っ白な複数の羽根、

目映まばゆいばかりの装飾と白いローマ服を着ていた。


 本物だ――神聖な空気をビンビン感じるもの。


「あばばば! お、お許しを~」


 慌てて平伏ひれふす私に彼が言葉をつむぐ。


「ごめん、ムキになり過ぎたね……」


「いいえ、信じなかった私も悪いの」


 グズグズ泣き出すと

美少年は元の姿に戻り謝罪しゃざいする。


「そんなに泣かないで、僕が悪かった」


「謝らなくて良いわ。

涙がこぼれるのは此処ここで殺されるから――私は悪魔なの」


 急に肩をガシッとつかまれ、はげしく揺すられた。


「そんな馬鹿な! 

君が悪魔なんて嘘に決まっている!!」


「あわわ! やめてぇ~本当に悪魔なのよぉ~」


 頭がグラグラする、うう気持ち悪い。


「ああ、ごめん。悪気わるぎはなかったんだ」


 慌てて手を離し水筒すいとうから水を注いでくれた。


「でも、やっぱり信じられないよ。

君からは悪魔の気配けはいを全く感じない、

良ければ身の上話を聞かせてくれない?」


 本物の天使だもの、もう全て話そう。

私は悪魔に転生してからの日々を語った――


「それは大変だったね、人間に戻りたい?」


今更いまさらそんなこと思わないわ。

日本人だった記憶も曖昧あいまいだし……

このまま自由に生きられれば良いのよ」


 彼は椅子いすに座ったまま足を組む。


「ええと、君は悪魔なんだろ?

悪事あくじを働かないと死んじゃうかもね」


嗚呼ああ~、きっとそうだわ!

私はなんてお馬鹿ばかなんでしょう!?」


 なんたる悲劇ひげき

空っぽの脳味噌のうみそのろいたくなってきたわ。


「落ち着いて、まだ決まった訳じゃないよ。

何より君は悪事に向いてない間抜まぬけだし……

転生の時に手違てちがいがあったのかもしれない」


 今、間抜けって言わなかった?

ズビズビ鼻をすすりながら彼をにらむ。


「ほ~ら、大事なことを聞きのがす。

君がお馬鹿で間抜けな証拠だろ?

それより調査だよ、僕と一緒に天界へ行こう。

あそこなら知識が集約しゅうやくされてるからね」


「無理よ、私は消滅しょうめつしてしまうわ!」


「平気さ、君からは悪魔の気配けはいがしない。

天使の僕がだまされたんだ、絶対大丈夫だよ」


 どうせ死ぬなら足搔あがいてみようかな……


「そうね、天界へ連れて行って。

それと、この縄も外してちょうだい」


「逃げたりしない?」


「初めての天界で、逃げる方が危険でしょ?」


「うんうん、その通りだ。

よし! 僕は君の主人あるじだから頑張るよ」


 いつ主人になったのだろう?

彼が満面まんめんの笑みで指を鳴らすと

またもや白い沢山たくさんの羽根が出てきた。

 やはり三対六枚さんついろくまいの羽根か

……その数は高位天使こういてんしで間違いない。


「貴方の羽根は随分ずいぶんと立派ね、

とても普通の天使とは思えないわ」


「そう? 天界では皆んなこんなもんさ。

さぁ君はもう一度虫かごに入ってくれ、

これから天界まで一気に飛ぶからね!!」


 上手うまく言い逃れた天使は、

かごななけにして高い空へ舞い上がった。

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