第2話 オウム
魔法円陣から離れた森に到着。
記憶があれば住んでいた場所へ行きたいけど
残念ながら全く思い出せなかった。
住まいは木の穴に決めて数日、
熊も出没しないし追っても来ない。
標高が高いのか動物や人も訪れない湖は
飲み物の確保と日光浴のパラダイスだ!
今日も吞気に寝転がっていたら
目の前にブワッと巨大な網が!?
「やった~! 上手くいったぞ!!」
いや~! バタバタ暴れてもビクともしないよ。
終わった、たぶん登山者か研究員だろう。
その人間は私を網に入れたまま
器用に虫かごへと移動させた。
ずっと羽根を掴まれていたので
どんな人に生け捕りにされたか判明せず、
虫かごからそっと狩猟者を確認すると――
そこには金髪パーマ青目の美少年が
ニコニコ上機嫌な様子で此方を見ている。
「やあ! 珍しい生き物だ。
特にハート型の尻尾が可愛いぞ~!」
皆んな尻尾好きねぇ、ともかく
今は逃げる隙を窺うべきだわ。
古い小屋には机と椅子、ベッドのみ。
そのボロボロな机の上に虫かごを置いて
私を取り出し縄を括り付けた。
グルグル首に巻かれ、
先端を籠に結ばれたので逃げられそうもない。
「しかし何の動物だろう、
こんなの見たことがないぞ?」
サイコパスだったらどうしよう……
恐怖でプルプル震えていたら
彼はおもむろにグイッと尻尾を引っ張る。
体中に電気が走り、ビリビリ痛い!!
「あわわ、やめてぇ~死んでしまうわ!!」
「うわあ! この動物は喋れるのか!?」
つい声を上げてしまったけど悪魔とは言えない。
「君は何者?」
「ええと、オウムの突然変異かもね」
「ふうん、一応羽根は生えてるし
オウムなら人間の言葉を話せるか……」
まぁ、素直に信じてくれたわ~
これぞ人を騙す悪魔の力なのかしら?
彼の他には誰もいないようで、
縄を切れば逃げるチャンスはありそう。
ハサミは……机の中が怪しいわね。
色々思考してる間に質問タイムが始まる。
「君は何を食べるの?」
「食べ物は必要ないの。
綺麗なお水だけで生きていけるわ」
「へぇ~飼うのに便利だね」
悪魔を飼うなんて趣味が悪い、
でもオウムだと思ってるなら仕方ないか。
「ねぇ、私をどうするつもり?」
「僕のペットにするつもりだよ」
どうやら解剖や実験はされないみたい。
「あのう、貴方の名前は?」
「旅人に名前なんか無いさ、
それより君の名前を考えなきゃね!」
腕を組み真剣に悩んでいる姿は
王子のように美しく、とても旅人には見えない。
頑なに名乗らないのも気になるし、
――暫く彼を観察してみようかな。