プロローグ
「どうしたんだい。受けないのかい?」
???「…………怖いんだ…………」
「試験に落ちることがかい?……心配する必要はないよ。君は受かる。破壊皇帝に免じて。」
僕はアレス・カリアナ。魔剣士族と人間族の間に生まれた普通の16歳……
と言いたいところであるが、正体は1万年前からの転生者である。
破壊皇帝 ゾーア・ガルガンチュア。1万年前、この世界で争いが起きていたのを自らの命に替えて人々の記憶を消して争いを止めた伝説の四天王の1人。ゾーアは争いを嫌っていた。
僕は人間族と魔剣士族の間に生まれた混血だけど、1万年前は混血は許されなかった。この世にはマジシャン(魔法士族)、スピリット(精霊族)、ヒューマン(人間族)、デーモン(魔剣士族)の4種類があり、
仲が悪く戦争は日常茶飯事だった。
でも僕の両親はそんなこと知らない。僕は普通の子どもを演じてきた。
でも、ある人には正体がバレてしまった。元サリア王宮魔剣士団大隊長ラオス・カノウスター。又の名を、ラオス・カノウスター・ガルガンチュア。僕の師匠だ。正確に言えば僕の方が師匠なのだが……
全世界の人々の記憶を消し、世界を4つに分解する古代神魔法 ジオ・グラビティ【記憶消去・世界分裂】これは大魔法師オリオンが使った今は亡き魔法だ。が、これは発動するのに多大な魔力がいる。世界の大魔法師オリオンですら1人で扱うことは出来ない。英雄勇者レオン、大精霊ナリアナ、破壊皇帝ゾーア。僕の一族は若干悪者臭いがそんなことは無い。僕自身が、一番平和を望んでいた。魔剣士族はその侍魂と強さから恐れられ、魔物と同類であるとされていた。しかし、そんなことはなく、魔剣士族とて愛があり、破壊皇帝と呼ばれる僕も平和を愛していた。
その4人が力を合わせ発動した魔法。それが、ジオ・グラビティである。
4人は命と引き換えに、自分の子孫を残した。その魔剣士族の始祖ゾーア・ガルガンチュアの一族の末裔がラオス・カノウスター・ガルガンチュアである。僕は転生した時に前世の記憶を少し失っていたが、ある日森で遊んでいる時にラオスに会い、そこから魔力なども徐々に回復していき、ほとんど完全体になることができた。
というのが今までの経緯だ。そして今日はサリア王国、魔剣士学院ウィズリーブの入学試験。最も、僕が魔剣士族の始祖だからね。落ちるはずはない。
待機室に足を運ぶ。
個室なんだなぁ。
「今日はようこそお越しくださいました。アレス・カリアナ様。」
見たことの無い鳥のような物が喋りかけてきた。なるほど魔法でコントロールされているのか。スタッフのようだ。
「本学院の入学試験は実技試験です。我が校の生徒と対戦し、力を示せれば入学することができます。勝敗は関係ありません。」
ふむ。なるほど、殺さないようにしないとだね。
「試験中に死の危険が迫った時、魔法障壁 極限を100層、レンジ10センチで展開しますので死ぬことはありません。試合には規定の魔法具が使用可能です。」
魔法具とは、魔法をかけて特殊能力をつけられる武器や、魔法を付与することが出来る防具のことだ。
そんなモノ……要らないね。