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1.仲間を集めよう!(冒険者らしく)






 さてさて、数日後のこと。

 俺とミレイナは、ギルドの談話室に集合していた。

 先日はいきなりパーティーを組んで、あのような事態になってしまったのだ。その教訓を活かすために、今後の方針を話し合おう、そうこちらが提案した。

 意外だったのは、彼女があまりに素直な表情でそれに同意したこと。


『アンタの言うことに、従うことにするわ』


 そういえば先日の一件で、ミレイナはそう言っていた。

 もしかして、昨日の一戦で恐怖心を与えてしまったのだろうか。いかんせん初めての実戦。そのため、加減というものも、立ち回りも分からなかった。

 結果として、戦いを終えた時に俺は鮮血に塗れていた。

 ミレイナも女の子だから、もしかしたら、ということもある。というか、血塗れの相手に背負われるなんて、普通に嫌だと思えた。


「ごめんな、この間は言うこと聞かなくて……」


 なので、とりあえず謝罪から入ることにした。

 まずは彼女の忠告を無視して、あのような行動を取ったこと。

 しかしテーブルを挟んで向かいに座る少女は、ハッとしてから首を左右に振った。そして、どこか慌てたような口調でこう言う。


「い、いいわよ、別に! ――結果として、助かったんだし」


 後半はどこか消え入るような、そんな大きさで。

 うつむいてしまったミレイナに、俺はどうしたものかと頬を掻く。なにやら微妙な空気になってしまったが、どうにかしてそれを変えなければ。


「ところで、ミレイナ。訊きたいことがあるんだけど、良いかな?」

「いいわ。アタシも、アンタに訊きたいことがあるから」


 そう思って切り出すと、彼女も面を上げてそう答えた。

 俺はふっと一つ息をついてから、しっかり言葉を選んで話し始める。


「ミレイナは、どうして一人で行動しようとするんだ? パーティーで動いた方が得すること多いのに、どうして……」

「…………それ、は」


 こちらの問いかけに、ミレイナは一度目を瞑る。

 そして、ゆっくりそれを開いて答えた。


「アタシには、強くならなきゃいけない理由があるの。ただ、それだけよ」


 それ以上でも、それ以下でもない。

 そう言わんばかりにキッパリと、彼女は口にした。そして同時に、これより先には踏み込んでくるな、と。そう言っているようにも思われた。

 だとすれば、俺からこれ以上訊ねることは出来ない。

 こちらに従うという約束は、こういう時に使うべきではないだろう。


「そっか。それで、そっちが訊きたいって?」


 とりあえず会話が出来るようになったので、良しとしよう。

 俺はミレイナに話すよう促した。すると少女は、少しだけ緊張した様子で俺のことを見た。というよりも、睨んだ、といった方が正しいか。

 そして、おもむろに開かれた小さな口から出たのは――。


「キーン、アンタは……何者?」


 そんな、俺の正体を疑うようなものだった。

 それに対して、こちらは答えを一つしか持っていない。だから、


「普通の冒険者だよ。どこにでもいる、そんな冒険者だ」


 そう、伝えた。

 それを聞いたミレイナは、小さくため息をつく。そして、


「分かったわよ、これ以上は訊かない。でも、アタシとのパーティーは継続させてもらうわよ。それで良いわよね?」


 呆れたように、そう言うのだった。


「もちろん。ミレイナみたいな凄腕と組めるなんて、俺は嬉しいよ」


 対してこちらは、素直に思っていることを口にする。

 だが、それに今度はミレイナが怒ったような顔をして言うのだった。


「アンタ、それ嫌味で言ってるの……?」

「え、そんなことないけど?」


 どうしたというのだろうか。

 素直に褒めただけなのに、相手を不機嫌にさせてしまった。


「はぁ、まぁいいわ。アンタが、どこかズレてるのは分かったから」

「…………んん?」


 と思ったら、今度は苦笑いをされた。

 意味が分からずに、俺は首を傾げてしまう。

 だけど、考えても分からないのであれば、話を前に進めた方が良い。俺は今後の方針を、ミレイナに提案することにした。

 それというのも……。


「それじゃ、まずは仲間を集めよう!」


 パーティーメンバーを募る。

 そんな、基本的でなかなか難しい問題だった。

 何故に難しいのか。それは簡単な理屈で、最弱の役立たずと有名な俺、そして性格に難ありなミレイナ、この二人の間に入りたい奴がいるのか、という話だった。

 それをミレイナも理解しているのか、目を細めてこう訊いてくる。


「そんなに、仲間が欲しいの?」

「あぁ、欲しいさ! だって、その方が――」


 それに、俺は両腕を広げて答えた。

 その理由というのは、言うまでもないことだ。そう――。




「冒険者っぽくない!?」




 俺が憧れた冒険者ライフ。

 それに、近付くことが出来ると思えたから!


「…………はぁ」

「ん、ミレイナさん? なにか、ご意見でも?」

「別に……? アンタがそうしたいなら、そうすれば良いわ」

「…………?」


 だけど、少女には大きなため息をつかれてしまった。

 俺、なにか変なことを言っただろうか……?


「まぁ、とにもかくにも! これから、仲間を募集するとして――」


 気にしても仕方ない。

 そう考えて、俺は話を進めようとした。

 その時だ。



「――ごめんなさい!」



 そんな、大きな謝罪の言葉が聞こえてきたのは。

 何事かと談話室にいた冒険者がみな、一斉に声のした方を見た。果たしてその先にいたのは、とてもとても可愛らしい、ウサ耳を生やした小柄な女の子。


 そんな子が、屈強な冒険者たちに頭を下げていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい!」


 何度も何度も、惨めなぐらいに。

 しかし、その相手の男たちは無情にもこう告げるのだ。



「ヴァニア、お前は今日限りで追放だ!」――と。



 


次回の更新は明日の12時に予約投稿します!


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