表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

5.戦いを終えて。







 俺とミレイナはダンジョンの中層部を歩いていた。

 先ほどから、少女は一言も発していない。こちらは何を話していいのか分からずに、沈黙を貫いていた。そのため、俺たちの間には静寂が降りている。


「キーン。アンタは……」


 そうして、少しばかり頭を悩ませていた時だった。

 不意にミレイナが俺の名を口にする。少しビックリしつつも彼女の顔を覗き込むと、そこには色々な感情がない交ぜになったような表情が浮かんでいた。

 俺は急かすことなく、彼女の言葉を待つ。


 そうすること、数分。

 ミレイナはおもむろに、こう言うのだった。


「アタシは、これから――」


 どこか、決意したようなそれになって。



「アンタの言うことに、従うことにするわ」



 そう、静かに。

 なにを考えての言葉かは分からない。

 ただ確実なのは、それが少女の決意であるということだった。俺に従うということ。それが何を意味するのかは、まだ俺には分からない。

 それでもその提案は、その時の俺にとっては願ってもないものだった。


 何故なら――。


「それじゃ、ほら!」

「…………? どうして、しゃがんでるのよ」

「おんぶだ。さっきから、足を引きずってるの見てて気になってたんだよ」


 怪我を負った少女。

 とりわけ、プライドの高い彼女に命令できるのだから。

 そんなわけで、俺はミレイナに身を預けるように言ったのだった。すると、まるで想像していなかった発言だったのだろう。

 彼女は少しばかり驚き、狼狽えた。


「ど、どうしてアタシが背負われないと……!?」

「従うんだろ? だから、素直に乗れって」

「………………」


 だが、拒否しようとするのを俺が阻止する。

 言質は取ったのだ。今さらナシになんてさせない。


「……分かったわよ」


 そうしてしばし待つと、ようやくミレイナは観念したようだった。

 俺の背中に身を預け、ゆっくり体重をかけてくる。

 なんとも軽い、そんな身体。


「それじゃ、帰りますか!」




 そして俺はあの綺麗な剣舞を思い返しつつ、そう宣言した。



◆◇◆



 ミレイナは軽やかな足取りで進む少年――キーンの背中に触れながら、どこか居心地の悪い表情を浮かべていた。これは予想外。思いもしない展開だった。

 少女は気恥ずかしさと、誇りの喪失感を抱いてうつむく。

 脚の痛みなんて、気にならなくなっていた。


「ホントに、コイツは……」


 ぽつり、そう呟く。

 それは声にならない声で。

 キーンは気にした様子もなく、どんどん先に進んでいく。


「………………」


 改めて少女は少年を見た。

 黒髪に童顔の、どこにでもいるような少年だ。

 それが、あのような戦闘を行った。しかし百歩譲ってそれは良い。もっとも重要なのは、彼女自身が彼に『命を救われた』こと、だった。


「はぁ……」


 ミレイナはため息をついた。

 大きな出来事だが、不思議と嫌悪感はない。

 少女は思うのだった。この少年なら、許せるかもしれない――と。



 そうして、最初のクエストは終わりを迎える。

 それはどことなく、希望に満ちているようにも感じられるものだった。


 


ここまでが第一章になります。

次回の更新は19時頃に!


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


もしそう思っていただけましたら『ブックマーク』や、下記のフォームより評価など。

創作の励みになります。


応援よろしくお願い致します!


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー 「最弱の魔法使い、最強前衛職に覚醒する」2巻発売中です。応援よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ