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4.『剣鬼』の誕生。







 ミレイナは目を疑った。

 何故【ブレス】が消失したのか。それも疑問であったが、彼女の中に浮かんだ第一の疑問はそれではなかった。

 少女の疑問――それは、何故キーンがここにいるのか、ということ。


「アンタ、馬鹿じゃないの!? どうして逃げなかったのよ!!」


 自分は何のために活路を開いたのか。

 これでは、さっきまでの戦いの意味がなくなってしまう。それに対する怒りと同時に、この少年が死んでしまうという問題に直面した動揺があった。

 だからミレイナは声を震わせる。

 へたり込んで、自身を守るように立つ彼を見上げるのだ。


「――仲間、だから」

「え……?」


 その時だった。

 キーンの口から出てきたのは、聞き慣れない単語。

 それに思わず、間抜けた声を発してしまう少女。しかし、そんな彼女に反して少年は、ニッと笑みを浮かべてこう伝えるのだ。



「少しの間だけど、ミレイナは俺の仲間だからね。見捨てるなんて、出来ない」



 そこには一片の迷いもなく。

 後悔や憂い、そういった感情は微塵も見て取れなかった。


「どう、して――」


 そんな彼に、少女は込み上げた感情を爆発させる。



「そんな綺麗事を言ってる場合じゃないでしょ!! ――このままだったら、二人とも死んじゃうの! たった一度、気紛れで仲間になったからって、命を懸けるような間柄ではないの!! そんな普通のことも分からないの!?」



 半分、泣き出しながら。

 その感情の名前を、少女は知らなかった。

 いいや。知ってはいるものの、終ぞ経験することがなかったのだ。


「仲間、だなんて……!」


 だから、少女は狼狽えるのだ。

 そこには『剣姫』と呼ばれた才覚溢れる剣士の姿はない。

 間違いない。そこにいたのは、ミレイナという名前の一人の少女だった。


「冒険者の誓い――仲間を信じて、協力し、困難に立ち向かえ」

「な、にを……?」


 そうしていると、キーンが不意にそう口にする。

 ミレイナは半ばに口を開いたまま、こちらを振り返った少年の幼い顔を見た。彼の口にしたそれは、冒険者ならば皆が共有している言葉、その一部。

 数ある誓いの中でも、序文に書いてある基本的なものだった。


「だとしたら、俺はミレイナと協力して戦いたい。一人の冒険者として、一人の仲間として、そして何よりも――」


 キーンはミレイナが落とした剣を拾い上げながら、こう続ける。



「もう、友達だろ? 俺たち」――と。



◆◇◆



 俺は思いの丈をミレイナに伝えた。

 彼女には、色々と聞きたいことがある。あの悲しげな表情の理由はいったい何なのか、そしてどうして孤独であろうとするのか。

 しかし、それ以上に胸の中にあったのは――。


「友、達……?」

「そ。俺たちはもう、同じ釜の飯――は、まだ食ってないけど! とにかく友達だ。それを見捨てるなんて、俺の中の俺が許さない!」


 ただ一人の、この女の子を守りたいという気持ち。

 理由は分からないけれど、この子は一人にさせてはいけない、そう思った。


「だから、これ借りるね」

「あ……」


 俺は拾い上げた剣を見ながら、そう笑う。

 ミレイナはもう言葉が出ないらしい。ただ呆然とし、こちらを見上げていた。

 それならもう、了承を得た、ということで良いだろう。そういうことにしておこう。というわけで、俺は魔物の群れに相対した。


 剣を構える。

 こちらには少女のような戦闘技術はない。

 だけども、以前よりは出来ることがあるはずだった。


「――さぁ、行くぞ!」


 気合を込める。

 そして、一直線に駆け出すのだった。




◆◇◆




 少女は異次元の戦いを目の当たりにしていた。


「嘘、でしょ……?」


 思わず、そんな声が漏れる。

 何故ならキーンという少年は、ギルドでも有名な役立たずな冒険者のはずだったからだ。それなのに、そのはずなのに、彼はいま戦っている。

 ミレイナの剣を手にして、魔物に駆け、やみくもにそれを振るった。

 だが、それだけで良い。


「なにもの、なの……?」


 一撃で、凶悪な魔物たちが魔素へと還っていった。

 血飛沫を浴びながら、次から次へと、彼は魔物を屠っていく。



 その姿は――まさしく『鬼』だった。



「こんな馬鹿げた戦い方、考えられない……!」



 やがて、すべての魔物が消え失せる。

 立ち尽くす少年は真っ赤な血に塗れて、一つ息をついた。



 それが最強の剣士、誕生の瞬間。

 後に『剣鬼』と呼ばれる、一人の少年の初陣だった。


 


次回の更新は、明日の12時頃に予約投稿!

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