1.キーンの過去を知る男性。
「さて、今日も一日頑張って冒険者しようか!」
俺は二人の仲間に、意気揚々とそう宣言した。
ミレイナとヴァニアは、はいはい、といった感じに頷く。それを確認してから、俺はギルドの中に足を踏み入れた。
すると、ちょうど外へと出ようとした冒険者の男性と衝突。
互いに尻餅をついて、声を上げた。
「あ、すみません。えっと……」
「テメェ、いてぇじゃねぇか! ちゃんと前を見やがれ――ん?」
その男性は、何かに気付いたように俺のことを見る。
その視線に反応する形でそちらを見て、こちらもその理由に気付いた。
「キーン……。お前、まだ冒険者やってたのかよ……!」
そこにいたのは、筋骨隆々な一人の冒険者。
顔に深い傷を負って、片目には眼帯。ボサボサの髪を後ろで一つに束ねていた。
その名前を俺は知っている。彼の名前は――。
「ルドルフ……」
――ルドルフ・アーキハント。
彼はかつて、俺とパーティーを組んでいた人物だった。
◆
「アンタ、あのオッサンとどういう関係なの?」
「…………あぁ、うん。少しね」
ギルドの談話室。
打って変わって意気消沈している俺のことを見て、ミレイナが心配そうに声をかけてきた。ヴァニアもその隣で、ペタンと耳を下げながら見つめている。
これは、彼女たちに隠すのは不義理――そう言えるかもしれなかった。
「前にね、俺とルドルフはパーティーを組んでたんだ。ただ、その中で少し――いいや。彼の冒険者としての生命を断つような、事件があって……」
だから、俺は少しずつ言葉を選んで話し始める。
避けては通れない。忘れてはいけない、過去の失敗についてを。
「ルドルフ、右目に眼帯を付けてただろ? アレは――」
一つ、深呼吸をして。
言葉を切って。
俺は二人の仲間に、変えようのない事実を告げるのだった。
「俺のことを庇って出来た傷なんだ……」
ルドルフの傷。
それは俺が、凄腕と呼ばれた彼から、その称号を奪った証明だった。




