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1.キーンの過去を知る男性。







「さて、今日も一日頑張って冒険者しようか!」


 俺は二人の仲間に、意気揚々とそう宣言した。

 ミレイナとヴァニアは、はいはい、といった感じに頷く。それを確認してから、俺はギルドの中に足を踏み入れた。

 すると、ちょうど外へと出ようとした冒険者の男性と衝突。

 互いに尻餅をついて、声を上げた。


「あ、すみません。えっと……」

「テメェ、いてぇじゃねぇか! ちゃんと前を見やがれ――ん?」


 その男性は、何かに気付いたように俺のことを見る。

 その視線に反応する形でそちらを見て、こちらもその理由に気付いた。


「キーン……。お前、まだ冒険者やってたのかよ……!」


 そこにいたのは、筋骨隆々な一人の冒険者。

 顔に深い傷を負って、片目には眼帯。ボサボサの髪を後ろで一つに束ねていた。

 その名前を俺は知っている。彼の名前は――。


「ルドルフ……」


 ――ルドルフ・アーキハント。

 彼はかつて、俺とパーティーを組んでいた人物だった。





「アンタ、あのオッサンとどういう関係なの?」

「…………あぁ、うん。少しね」


 ギルドの談話室。

 打って変わって意気消沈している俺のことを見て、ミレイナが心配そうに声をかけてきた。ヴァニアもその隣で、ペタンと耳を下げながら見つめている。

 これは、彼女たちに隠すのは不義理――そう言えるかもしれなかった。


「前にね、俺とルドルフはパーティーを組んでたんだ。ただ、その中で少し――いいや。彼の冒険者としての生命を断つような、事件があって……」


 だから、俺は少しずつ言葉を選んで話し始める。

 避けては通れない。忘れてはいけない、過去の失敗についてを。


「ルドルフ、右目に眼帯を付けてただろ? アレは――」


 一つ、深呼吸をして。

 言葉を切って。


 俺は二人の仲間に、変えようのない事実を告げるのだった。



「俺のことを庇って出来た傷なんだ……」



 ルドルフの傷。

 それは俺が、凄腕と呼ばれた彼から、その称号を奪った証明だった。



 


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