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第8話 異世界離乳食

宜しくお願いしますm(_ _)m



名前  シン=カンザキ

レベル 1 

種族  ヒト属(混血)

年齢  3()()

職種  ー

身分  ー

称号  ー


状態  混乱 予測不能


魔力  構築中

筋力  10

耐久  10

知力  1203

精神  1376

速度  10

技量  10


固有スキル 【シンガン】→【審眼】

修得スキル 【苦痛〈強〉耐性】

装備  ー




(あれからもう、3年か………。)







シンは自身のステータスを眺め感慨深そうに目を細める。

そして思い出した。

ここ、異世界に転生してから体験した様々なことを………。







〈ここから先しばらくはシン=カンザキ氏の主観が過分に含まれており、嘘(本人に自覚無し)、大袈裟、紛らわしい、実際とは異なる、等の不適切な表現がございますが、作品のオリジリティを尊重し、そのままお伝えしますこと、ご容赦下さい。〉













……………………………………………

……………………………………

……………………………

……………………

……………

………

…母の胎内で覚醒し、

父の手により取り出され、

前世の記憶に無かった母乳だったが今世では舌鼓。味を知る。

父にシンと名付けられ、

母のDVに畏れをなし、

自分のステータスを初めて拝見し、卒倒。

気を失っている間、前世の記憶をいくらか取り戻すが

目覚めればもうすでに一週間も経過しており、

その間、飲まず食わずであったという。

『赤子であるはずの自分が?よく死ななかったものだね。』とスルー、出来るわけ無かったが、

死ななかったとはいえ、当然として発生した猛烈な空腹感を前に、シンは結局の所、スルーした。

そこで出されたのがあの、ゲテモノ離乳食。

……


ゲテモノ離乳食は



美味かった。



シンが


(えーい!ままよ!)


と母が差し出すスプーンを口に含んだ瞬間ー。



舌の表面、無数の味蕾(みらい)が、


ザワワ!!!


総毛立つ。


ゼリー状の、“スライムの核周”と呼ばれる部位が波打つようにして口内で蠢いたように感じた。


(え?これ生きてたんじゃね?うあ、スライム踊り食いしちゃったオレ!?)


と勘違いしたがそれは間違い。


『蠢いた』と感じるほどに瞬間的に食感が次々と変容していったのだ。


最初はヌルんとした、官能的でありながら冒涜を思わす食感。

まるでシンの口内をゴールと見定めスライムの触手が本能の赴くままに侵入してきたのかと錯覚した。


そしてシンが抵抗すべくと噛む前に、その意を汲んで自ら四散を選んだかのようにボロロと砕け、先程感じた奔放さとは打って変わった従順を示す。

かと思えば、その散華の余波が口内で暴れまわるといういい意味で予想を覆す野趣溢れる演出。


砕けたそれらゼリー状は暴れまわる過程でジュアアと心地良い音を立て泡立ち、連鎖して弾けながら粘性強くもサラリとした甘みという両極併せ持つ液状となって拡がり、舌の表面だけでなく、舌の裏や上下の歯茎、歯間で、口内全領域を縦横無尽にマッサージしていく。


口内を席巻し終えた泡の軍勢は極上の旨味という名の陣を広範囲に張りながらトロけていき、長い時間逗留して脳を刺激し続けた。その刺激は強制力を行使し、ゼリー食感がなくなってしまったあとも、シンは反射的に咀嚼を続けてしまったという。


(うふおおお。無くなっても噛むの止められない………。)


そして無くなった固形に切なさを感じる間もなく間髪入れずの第二波。桃果蛍の尻部がその咀嚼に『喜んで!』と巻き込まれ、薄い表皮はいとも簡単に破れ溶け、その中身、『至高たる栄養の凝縮』が、先兵として口内を占領していた旨味ゼリーの泡達とついに合流。

ボロロ、ジュアアが無くなりし後は、プププ!プちゅちゅ!なる面白食感という波状攻撃。


(コレおっっもしろいょぅーー〜〜〜!)


とウットリ目尻を下げ、食感を楽しみ油断しているが

ただ美味くて食感が面白いだけでは不足。

それではただの刺激。

本領は、ここから。


(フアオ!焼ける!)


と錯覚するほどの、高純度アルコールを思わす熱量孕む栄養素達と、限界まで引き出された旨味成分が狂おしいほどに奇跡的マリアージュ。


まさしく、


(ビッグバン……!)


と称賛してなんらおかしくないほどに昇華されたそれは……


(おおお、『誕生』した。俺は、今、立ち会った。これは、もはや、『存在』だ。)


シンくんいい加減にしなさい。大袈裟すぎ。


…とにかくシンにとってそれほどの感動であった。

そして巨大な意思もつ何者かであるように存在感を溢れさせたそれは芳醇過ぎる香りを時間差で爆発させ、強烈な余韻を残して胃袋へと納まっていく。


この時シンには見えていないがシンのほっぺがポンと妖しく桃色の光を透かしながら膨らむのを両親は見ていた。


飲み込んだのは自分の意思であるのに、シンは追いすがった。


(ああ!待って、行かないで………っ!)


だが飲み込んだ後も終わらなかった。奇跡的な余韻はなおもと長く続く。しかしそれは、口内ではなく、別の場所で起こった。

未知の『美味(うま)し!』を名残惜しく見送ったつもりが


(ああ……!)


食への過剰なる賞賛。それが勢い余って、肉体をも変異させてしまったのかと、シンは本気で疑った。

まるで、喉や食道までが鋭敏な味覚器官に変じてしまったと錯覚させるほどに味は尾を引き、(ぬく)みを伴って喉よりも奥へとステージを移していった。


シンには口→喉→食道→胃袋という経路を甘く優しく内側から愛撫されたように感じたという。


(ああ、………これが、そうか。……本物の、至福。)


脳髄直撃。

軽くトリップ。

宇宙と交信。

その深淵に畏怖を感じるほどの、美味。



恐るべし、異世界離乳食………





……それから3年。 

………今に至る……。





ええ?シン君、殆ど離乳食のことしか回想してないんだけど??えー〜……。。




……

…………

…………………

…………………………

…………………………………

…………………………………………


(…ああ、美味かったなぁ…。桃果蛍の尻、とウォームスライムの核周。)


あれは、鮮烈すぎた。


思い出せば口の中は唾液で一杯になってしまう。

それほどに美味かった。

まるで昨日のことのように思い出される。





(……………ってイヤイヤ、昨日のことですらないから。ついさっきの出来事だから。なのになんで3歳??3歳ナンデ!?)


シンは腑に落ちない。

腑に落ちない箇所を確認すべく、もう一度ステータスを見た。




名前  シン=カンザキ

レベル 1

種族  ヒト属(混血)

年齢  3()()

職種  ー

身分  ー

称号  ー

状態  混乱 予測不能


魔力  再構築中

筋力  10

耐久  10

知力  1203

精神  1376

速度  10

技量  10


固有スキル 【シンガン】→【審眼】

修得スキル 【苦痛〈強〉耐性】

装備  ー



……間違いない。年齢は3歳となっていた。



シンは思う。どう考えてもおかしい。


自分がこの異世界(?)に転生してまだ2年も経過していない。せいぜいが数週間であるはずだ。母の言葉を思い出す。


()()()()()()()()


『ぅ〜ょしょし。寒いの?そうよね()()()も飲まず食わずひたすら寝てたらそりゃあ身体も冷えるわよね〜。嗚呼、可哀想な子。その数万倍も…(以下略)』


やはりだ。母の言葉に嘘がないなら、自分が寝ていたのは一週間。

そして気を失ったのは生後10日目だったはずだ。

自分が『シン』と命名された日でもあった。

あの時、母は


『何トンチンカンなこと言ってんのよ!この子の名前よ!すぐには決められないからちょっと待ってくれ…って言ってからもう1()0()()()()のよ?名無しの我が子と二人っきりじゃ、いい加減間が保たないってのよー!』


こう言っていたのだ。間違いない。

まあ、母の言葉に間違いがないならば、だが。


とにかく自分が生まれてからまだ17日前後しか、経っていない。

これは事実であるはずだ。


そしてステータスの記載内容に動揺しすぎている自分に気付いて


(いや待てよ……。)


シンにとって『ステータス』という概念は、所詮はゲーム由来のものだ。ゲームをプレイする上でなら、確かに判断材料としては最上位に置いて良いものであったが…。



この世界で言うところの『ステータス』とは、どのくらい信用して良いものなのか。人一人の能力や状態をこのような数字や文字の羅列で表現できると思ってしまうのは如何なものか。



それに、誤植や解析ミスなどあるのかもしれない。母だって


『あ。そうだ。ステータス表記見てみなきゃ。ちゃんとシンて命名されてるかどうか。』


と言って確認していた。ステータスに間違いが記載されることもあるのかもしれな………と思考する途中で

シンはようやく気づいた。

今の自分の異常性を。




(……ちょっと待て俺!記憶力良すぎないか!?)









声色や抑揚、息継ぎのタイミングまで。

まるでレコーダーで録音した音声を再生したかのようにして

母の言葉を覚えていた自分の記憶力の異様さに気付き、驚愕する。


(そういや知力と精神の数値って、以前は両方とも500だったよな…?)


ステータス上、シンのレベルは上がっていない。

だが年齢が『3歳』になったことが原因であるのだろうか?

レベルが上がっていないのにもかかわらず、能力値は軒並み上がっていた。

年相応の数値に補正されたということなのだろうか?と考えて、



(イヤイヤ、だからなぜそう考える俺?安易に流されすぎだろ。そもそも、その“3歳”ってのが間違いなんだから…。)



シンはなんとか状況を正確に理解しようと思考の軌道修正を試みる。

ここは異世界だが、これから自分が生きていかねばならない世界であるのだからと。

どんな摩訶不思議な現象も、現実のものとして対処していかなければならないと。

だからと言って…いや、だからこそ、ゲームのシステムに似ているこの異世界で、そのまま前世のゲーム知識が適用されるなどと勘違いしてはならないと。

そう。ここは異世界だ。

ただでさえ得体が知れない世界なのだから。

安易に間違った考え方に飛びついてしまえば、いつか必ず思いもよらぬタイミングでしっぺ返しを食らう。そう思いながら


(とりあえず年齢んとこの“3歳·はスルーだな。)


シンはステータスを睨みつけ、もう一度思考を立て直す。


(能力値。………知力と…精神。…………う〜ん…。)


この数値は非道い。コレはきっとこの異世界の常識からも外れた、異常な数値だ。

シンは母を見た。そして母のステータスを思い出す。


あの超エリートの母でさえ…。


レベルが153もあって、

エルフ族で、

21歳で、

職業が『超魔道(超越者)』で、

身分が『冒険者(伝説級)』で、 

『魔星』とかいう二つ名付きで、


………どう控え目に見ても強者中の強者であることが窺え知れる……


あの母でさえ、


知力が733で

精神は853だったのだ。


(だからなんで全部覚えてんだよ…。)


きっと、初期能力値として、元々高すぎるものだったのだ。500という数値は。 

なのに、それが倍以上に跳ね上がり今や、あの母の能力値ですら追い越してしまっている。

まだ自分のレベルは“1”のままだというのに。

この異様な記憶力もこの能力値から来ているのだろう。

そう考えれば、ステータスに記載されているこの能力値は、完全に信頼できるかどうかは分からないが……自分自身の能力にかなり影響力を持つ数値であると考えてもいいのかもしれない。

シンは結論として、『鵜呑みにすることはしない』までも『実感出来る部分』に関してのみ、ステータスを判断の基準とすることに決めた。



ではこの、知力と精神、これら能力値の異常成長は一体、何が原因で起こったのか…。


(まあ、何が原因なのか…って考えれば、多分コレが原因なんだろうけど…。)


固有スキル、【シンガン】。


その横に矢印が伸びて【審眼(しんがん)】というスキルが増えている。

シンはそれを凝視した。


『審眼 : シンガンより派生。この世界を知るために。』という注釈文が視界に浮かぶ。


(だからわかんねーッてそれだけじゃ!)


【審眼】に向けて、シンが心の中で罵倒すると


理致(りち)

賢識(けんしき)


という、おそらくはスキルであろう文字が浮かぶ。

シンはもう一度、と根気を奮い立たせ、それらを凝視した。


『【理致】 : 審眼に内包される独自スキル。知力を大幅補正し、成長率補正も大幅アップするという強化系の上位スキル、【理知】。それをカスタムしたもの。その内容は知力と精神を同時に超補正、および、成長率も超補正するというもの。』


『【賢識 : 審眼に内包される独自スキル。見たもののステータスを極限られた情報であるが閲覧できるという解析系の下位スキル、【見識】をカスタムしたもの。その内容は()()()もののステータスをかなり詳細に閲覧できるというもの。』


(ああ、これだ。これが原因だわ。)


何がきっかけとなったのかは分からないが、固有スキル【シンガン】から【審眼】が派生した。

【審眼】とはその注釈文から察するに、『この異世界を知るためのスキルセットのようなもの』だと考えていいのではないか。

そのスキルセットの中に含まれていたのが【理致】であり、そのおかげで記憶力が強化された。

そして同じくセットの中に含まれていた【賢識】。

これのおかげで触れた人や物などの、自分以外のステータスが急に閲覧できるようになったのだろう。


あと余談だが【苦痛〈中〉耐性】が地味に【苦痛〈強〉耐性】に変化していた。





だが結局、年齢の欄に2歳と記載されている理由は謎のままだったが、その謎はこの後すぐに解消され…


そしてさらにその後勃発する事態でそんなことはどうでもよくな

ってしまうのだが……この時点でのシンには知る由もない。





ステータスを閲覧するために自分の手をジっと覗き込んでいたシンの上に大きく影がかぶさる。


雄字。


……いやとりあえず今はユウジ。父だ。


シンを撫でようとしたのであろう。

対するシンは自分の頭に向け伸ばしてきた父の手をハシりと真剣白羽取り。

触れたついでにステータスを覗き見た。




名前  ユウジ=カンザキ

レベル 254

種族  ヒト属

年齢  24歳

職種  大魔刃(超越者)

身分  冒険者(伝説級)

称号  『異世界英雄』『世界最強の一角』

    『世界最強の座布団』

    『魔王退けし者』

状態  良好(疲労回復促進+)


魔力  1654

筋力  2167

耐久  1780(1830)

知力  234

精神  897

速度  1202

技量  1162


固有スキル 【絶つ剣】

レアスキル 【適応】【全状態異常〈中〉耐性】

      【神裂流、八の型】

修得スキル 【武芸百般lv12MAX】

      【金剛】【火魔法Lv6】【風魔法Lv7】

      【光魔法Lv5】【無詠唱】【詠唱短縮】

      【魔法剣】【神速】【中級道具作成】

      【識別】【探知】【直感】

      【魔力視認】【苦痛〈極〉耐性】

装備  冒険者の服+1

    換装の指輪

    魔導倉庫(伝説級)

    命共の指輪





(うわコワイ。レベル254?能力値も凄いけど、なんか職名とか称号とかスキル名とか…どれもチート臭がキツ過ぎる…!)


それぞれに気になるワードばかりで詳細をいちいち覗くのが馬鹿らしく思えるほどに、立派過ぎるステータスだった。

そんな気になるスキル群の中でも特に気になるスキルがあった。


(……?シンレツ…流?雄字の祖父さんがやってた剣術道場が確か“神崎流(かんざきりゅう)”………神裂と神崎…字面が似てるけど……いや、もしかしたらシンレツじゃなくて神を裂く”でカンザキって読むのかコレ?……ちと苦しいか。)



『異世界剣術。取り扱い注意。』



【神裂流】の説明であるのだろう。

シンプルかつ不親切な内容の注釈文が目の前に浮かぶ。

少ない情報量だがそれでも十分な気がした。

この世界は異世界。しかし逆に言えば、地球だってこの世界から見れば同じように異世界だ。

つまりこの【神裂流】とは地球の剣術である可能性がある。


この世界の“何”がステータスを設定して自分達に見せているのか分からないが、地球の文字に不慣れなその“何か”は神崎流を神裂流と間違って記載してしまったのかもしれない。

まだ生後三週間にも満たない自分を指して3歳だと記載してしまったことからもこの“神裂流”が誤植であるという可能性は十分にある。


(やっぱコイツ…雄字なのかな…。)


シンはユウジのステータスを見た事で、前世の親友(目下色々な意味で疑惑の中心人物ではあるのだが。)の記憶がまた新たに思い出されていくのを感じた。


思い出す。雄字を。


彼、神崎雄字のリアルチートぶりを。

彼は幼い頃から祖父に古流剣術を仕込まれていて、異常に腕っぷしが強く、同年代のワルガキだけでなく、本職な人達にまで『リアルジェダイ』だとか、『不良少子化問題の元凶』だとか好き勝手に呼ばれ、畏れられていた。


思い出して腹が立つ。

そんなチート腕力で殴ってんじゃねー!と。


(いやまだこのユウジが雄字だって決まったわけじゃねーけども。)


そう思い直しながらも腹立たしさが、おさまらず、両手につかんで目の前にあった大きな手から焦点をずらし、父の顔を睨みつけようとした。


自分を覗きこむようにして前かがみになっているため、魔法の明かりを背負って影を落とした父の顔が今、どんな表情をしているのかよく分からない。よく見えない父の口元が動き、呟く。


「やっぱ、コイツ、俺のこと…嫌いなのかな。まぁ、無理もねーか………血の臭い、消えねーしな…。」


表情はよく見えなかったが、分かった。父の声が沈んでいることは。

考えてみればユウジに対して自分は確かに冷たくしすぎたのかもしれない。

母のことは怖いと思うことはあったが、彼女が経験した産みの苦しみを知って生まれたためか、自然と懐いて接していた。

ユウジに対してはどうだったかというと

 …………恨めしげに藪睨みした記憶しかない。


ユウジにしてみれば初の息子であるのだから、それは寂しいことであったのかもしれない。

それに今手にとって至近距離にあるユウジの手からは血の臭いなど少しもしなかった。にもかかわらず呟かれた先程の台詞…。



この異世界がどのような世界なのか、その詳細は未だ分からないが…剣、魔法、魔力、そして、魔物…ユウジの全身を濡らしていた、あの、返り血。

これらキーワードから連想すれば、


 『この世界で生きるということが甘いものではない』


ということは容易に想像がつく。


ユウジはその甘くない世界で今日まで命のやりとりを日常として生きて来たのかもしれない。

馬鹿なように見えて、実はそれはカモフラージュ。

ユウジはユウジで戦い、戦い抜いて、自身に粘くこびりついていく幻の血臭に日々、苦しんでいたのかもしれない。


浮かんでは消える沢山の「かもしれない。」を想ううち、シンは少し、反省した。

つかんでいたユウジの手の平を自らの頬に誘導して、当てる。

シンは言葉で返事をしない代わりに体温で伝え、励まそうとしたのだ。


『血の臭いなんかしないよ』と。


 だが、


「おい。」


ユウジの影が更に大きくシンにかぶさる。

超至近距離、鼻と鼻が触れ合う寸前までユウジは顔を近付け、ユウジは言った。


「なあ息子よ…。お前やっぱ言葉分かってんだろ?」


ボソリ。ドスを効かせて呟かれる言葉がシンの耳朶を震わす。


(っな………ッ!コイツ嵌めやがったなぁっ!)


さっきの悲しげな様子はユウジの芝居であったのか?。

簡単に騙され同情してしまった自分の迂闊さにまた腹が立つ。

元気に復活した腹立ちにまかせて、ついつい反射でシンも


『くおそやぢ(クソ親父)。』



と悪態で返してしまった。言って気付く。自分の言葉…その発音が随分と流暢になっていることに。


ただ放った言葉が不味かった。


「今『クソ親父』っつったかこの馬鹿息子…!!……って待てオイ!お前なんで日本語………ッ」


(ありゃ…しまった…!)


言ったあとでシンも気付いた。が、もう遅い。


一章完結までは毎日19時更新します


明日も宜しくお願い申し上げますm(_ _)m


スライムと虫の和え物w 私なら絶対断固拒否。せめて火を通さなきゃ……元もやし設定のシンくん。何気にたくましい。



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