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第6話 疑惑の(1)

本日3回目の投稿!


宜しくお願いしますm(_ _)m



よく、寝た。起きてまず目にしたのは




 ………見知った天井。



岩と土で出来た茶色と灰色の濃淡で彩られた洞窟然とした天井。

最近知った天井。


 その天井を呆として見つめ、思い出す。

不自然なくらいに覚えていた。見た夢の内容を。

それは前世の、夢だ。その夢の中で見た映像をきっかけに、だいぶ、記憶を取り戻せた。


取り戻して……良かったのか、悪かったのか。







 前世の自分は、天智進太郎、という名前だったらしい。


 イケメンではなかった。ブサメンでもないが。

とにかく、あまりいい顔でもなかった……というか……。


あの、『虚無の目』。


思い出したく無かった。心底。

他にも色々と追体験したが、あまりいい記憶ではなかった。

嫌な記憶だから印象に残っていたのか。それは皮肉にも沢山の記憶を取り戻すいいきっかけにはなった。


 前世の両親。

不仲ではないが、何故かの空虚感で自分は接していた。今思えばなんと親不孝であったか。……ああ、当時の自分を引っぱたいてやりたい。


 学校ではイジメられていたらしい。

奇妙なイジメだった。クレージーと言っていいくらい苛烈なイジメに発展していたが、結局誰が首謀者か判らず仕舞いで……。

あれは何だったのか。随分な悪意を感じた。



 思いをはせていると不意に、誰かに抱き抱えられた。


 父だ。今世の。


 転生後の自分と正当なる血の繋がりをもつ、


 新しい 父。


ガサツの権化。化身。

ユウジだ。


フルネームは カンザキ ユウジ。

漢字で書くと 神崎 雄字なのだろうか、やはり。

獅子を思わす迫力。

ワイルド系美丈夫。

髪色は青。濃く真っ青。




 シンが目覚めた場所は、



相変わらず異世界。



やはりこちらが、



  現実。



シンは目の前の男の顔面を睨みつける。


 カンザキユウジはおそらくだが、()()神崎雄字と同一人物ではないだろうかと。夢で見たあの神崎雄字に比べたら多少、年をとって精悍さが増し、少年から青年へと成長を遂げている。あと、髪が青いが。


 もし同一人物なら、この父は…


前世で、友人だったはずだ。しかも古い友人で、親友だった。無二に等しく。


 小学3年生ぐらいからか…あの街に越してきた自分とすぐに仲良くなったのだった。


 シンは思い出す。丁寧に記憶を紐解いていく。もう一人を思い出す。


 リサ。 香志麻 リサ。


リサも自分と同じ時期に越してきていて、

リサと、自分と、雄字。

一緒に遊ぶようになるのに時間はかからなかった。

いつも一緒だった。遊ぶにも。勉強するにも。


 高校も同じ学校を選んで…ここまでの記憶は思い出した。

まだツギハギだらけで不鮮明なところがいくつもあるが、大体は間違ってないだろう。


 気になっているのはその後だ。その後の記憶は、ゴチャゴチャしていてまだ整理できていない。


 高校の何年生…か分からないが…とにかく、いつの頃からか、雄字との関係がおかしくなったのだ。

 多分夏だったのだろう。なぜなら彼が着ていた服が夏服だったから、あれはきっと夏のこと。



 雄字に殴られた。

殴られた後、見上げたら彼のシルエットが随分小さくなっていて…

…その映像から察するに、自分は漫画のように吹っ飛んだのであろう。呆れた馬鹿力だ。


 その頃から周囲がおかしくなった。


元々両親とはぎこちなく暮らしていた自分だが。仲良くしていたはずなのだ。クラスメイト達とは。楽しい記憶だっていくつも思い出せた。


 だがある日にクラスで起こったある事件で、自分が犯人とされた。濡れ衣であったが主張しようにもその証拠がなく…。


 瞬く間にイジメの標的になった。イジメの首謀者は誰なのか分からないまま、イジメはエスカレートしていった。


 そして自分は雄字に向けてナイフを突きつけて…

やはり、雄字がイジメの首謀者で間違い、ないのだろうか?

でなければ、自分が誰かに刃物を向けるなど、ありえない。


まだ曖昧な部分が多い記憶を元に自分を評するのもなんだが、どう考えても武装して人にあたるという属性は前世の自分には無かったように思う。 




…ナイフを雄字に向けて……その後の記憶は全く無し。

夢の中でもそれらしき映像は無かったはずだ。



 雑多過ぎてまだよく飲み込めていない記憶。時系列を何とかそこまで整理しながらその間、シンは雄字をずっと藪睨みしていた。


(お前は何者なんだ?)「おあえぁまいおもまんあ。」


(へ?)「えぁ?」


(ちょちょちょちょっとタンマ!え?喋れてないか?)

「お、も、お、おっもぉあんま!え?あえぇえまいあ?」


 混乱深まるシン。喋れつつある?対する雄字も


「おう?!!う、う、うううううううう」


と、どもりまくったあと、


「うぅうおい!レマティア!シンが、をき、もき、起きたぞ!?」


「ええ?!シン起きた?!無事なの!嗚呼!私のシン!」


母、レマティアの声も聞こえる。駆けつけ、雄字から引ったくるようにしてシンは抱かれた。

父から母へお引越し。

抱かれ心地は雲泥の差。


「つかコレどうなってんだ!!」と父。

「オオオレどうすりゃりゃいんだゃオイコレマジヤぶ、やべえお!!ウワめっちゃ噛んば!、…、また噛んだ!」と父。

「つかコイツなんか喋れてないけど喋りたそうな…!言葉分かんのか?!」と父。

「〜〜うちの子やばいぞ!?色々とやばいぞ!?理解不能だこのセガレ!」


……と母の肩越し、後ろから顔を覗かせ矢継ぎ早に動揺と失礼を噛み噛みの言葉に乗せてツバ散らす父、雄字。


シンは眉間にシワ寄せ藪睨み。


「うわコワイ!目つき悪いなこの赤子!どこのヒットマンの転生者なんだ?!白状しろマイサン!」


雄字は我が子に睨まれてさらに動揺を深めた様子。

泡を吹いて意味不明を喋りながら『転生』とか口にして何気に核心を突いてしまうところなどは、漫画等に付き物な『馬鹿なのに意外と、というか無駄な所で鋭いキャラ』を彷彿とさせ、シンは


(うん。そんな感じだな。)


と我が父の人物像をぞんざいな感じでシックリとさせた。


両者共に等しく失礼。


 だが、とシンは思う、今、確かに今喋れそうな兆候があった。

雄字の動揺も無理からぬことなのかもしれない。シンはさっきのように思考と声が連動しないようにと気を付ける。


 自分の前世が『天智進太郎』だと気付かれたらどうなるのか、予測不能だったからだ。


 前世、雄字と何があったのか全部は分かっていない。ハッキリした記憶の中では、雄字は一番付き合いが長く、かつ親密な友人…親友であり、進太郎は信頼していた。


 だが、記憶が曖昧な部分、ツギハギの映像でしかない部分がまだあって、その時系列を無視してフラッシュバックする映像の中では、全くの反対。

 一体いつからなのか、一体何があったのか、分からないが、どうやら雄字は敵に回ってしまったらしいのだ。


 自分を殴り飛ばす雄字、自分を徹底して無視する雄字、自分にナイフを突きつけられる雄字。親友との思い出というにはあまりに悲しすぎる映像。


 もっと悲しいと思ってしまうのは、それを何かの間違いだと完全には否定出来ない自分がいることだ。


 何故否定出来ないのか。雄字が自分を疎ましく思う理由に心当たりがあったからだ。


 雄字は、リサが、好きだったはずだ。自分と同じく。


そんなことで崩れ去るとは思えないくらいには絆を結んでいたはずだった。しかしシンにはその疑惑をどうにも払拭することが出来ないでいた。記憶が曖昧であるということが、これ程に不安を助長するものだったとは…。


 雄字を疑うより自分の心の弱さが恨めしいシンなのであった。


 それぞれに動揺を深める夫と子を置き去りにして、母は焦りではなく、喜びを身体全体で表現していた。我が子が目覚めたことがなぜそれほどに嬉しいのか。慈愛の微笑みを浮かべ、さらに涙まで浮かべながら我が子を接視しつつ、レマティアは手首をツイと軽く、夫にかざした。


そして


「五月蝿い。」


バリバリバリバ「うべはばばばば!よべもやべへえええええええええええ!!!」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「……ををヲイ!!」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「ま……!」リバリバリバリバリバリバリバリバ「ぢょ…!」リバリバリバリバリバリバリバリバリ「ちょま……!!」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「ななななななげえええ……!」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「どばらぬえべへええええ!」リバリバリバリバ「………うっ……………。」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリババリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「……………………………………………………………………。」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!バリバリバリバリバリ!バリ!

バリ!

バ!

パリッ……

……………………………

……………………

……………

………

……

「うう…ッ。」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!


 ……雄字に電撃を食らわせた。


無慈悲に。とっても永く。追い討ちまで。

シンへと顔を向けたまま。

視線をそのままシンに固定させたまま。

その瞳は涙で潤んだまま。

潤んだままだが女神のように微笑んだままに。


母の背後でバリバリと雄字を灼き、稲光る電撃。雷光を背にすることによってその神々しい美顔に濃い影が差す。凄絶なる美しさ。


 『神々しい』は『悪魔的な』に属性をフルチェンジさせた。


すごく怖かった。

電撃をなっっかなか止めないとことか特に。

自分から全然視線を外さないとことか特に。

背後にある惨劇を全く意に介さず、瞳を潤ませながらも微笑みを絶やさないとこととか特に。

そして雄字が沈黙してもそのまま電撃の手を休めないとことか、

復活しそうな雄字を追い討つとことかもう、特に。


 ………結局全部。全部コワイ。 


 ガタガタと震えるシンを心配そうに抱きしめ


「ぅ〜ょしょし。寒いの?そうよね一週間も飲まず食わずひたすら寝てたらそりゃあ身体も冷えるわよね〜。嗚呼、可哀想な子。その数万倍も可愛い子!その上、本当に、強い子…。あなたはきっと奇跡の子なのよ!私が守るわ。何があっても、何からだって守ってあげる。大事な、大事な、私の赤ちゃん。」


レマティアは愛情一杯の抱擁でシンの震えを止めようとしたが。


(フああこええ!うちのママンまじ半端なく怖ええ!)


母の抱擁によりシンの震えがさらに激しさを増したのは言うまでも無い。


(怖え!怖え!怖え!こ……っ……え?……今…え?…今何つった?我がトンデモ母上は。)


恐怖の最中、遅れて気付く。


(一週間??そんなに寝てたの俺?しかも飲まず食わず?赤ん坊が?んな馬鹿な!!)


シンが否定するその思考に向け、証左提唱するようにして音が鳴る。



 キュ、キュルルルル〜〜〜。


 その音は、己の腹から。


 音の発生源が自分だと気付いた瞬間、猛烈な空腹感がシンを襲ったのだった。


感想お待ちしてまぁすm(_ _)m

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