第31話 電撃的奇跡
宜しくお願いしますm(_ _)m
シンとレマティアには雄字の心、その詳細な動きまでは解らなかったが、角を毟り取るという暴挙から見て取れる限り、雄字はきっと二人の声掛けに応えようとしていると、認識していた。
事実、捉えどころのない、ただの無になり、別のナニカに乗っ取られそうになっていた雄字本来の『自我』は、無意識にも懸命さを振り絞っていた。
二人が応援する声に応えようと、手掛かりが手掛かりとして機能しない中で、それでも、それらを手掛かり足掛かりにして。
必死で自我の修復に努めた。そしてそれは雄字の中で密かに成功の兆しを見せていたのだが……
(……!?なんだが急に、身体が楽に……)
その異変にまずはレマティアが気づいた。
「母さん、なんか、アレ………ねえ!あれ!父さんどうなっちゃうの!?」
そしてシンも気づいた。
見れば、
「ガブっ……ガァ……ッ、ガボ……ッ!」
何か、『黒い渦』に呑み込まれ、その渦の中で溺れるようにして藻掻く雄字の姿。
(あれは、魔詛?こんな濃密な、可視化できる程の………!雄字の身体に吸い込まれていく?……!………いけないこれはっ!)
先程身体が楽になったように感じたのはレマティアの周囲に在った魔詛……どころか、レマティア体内に沈殿していた余剰魔詛までも吸い込まれたからか。代わりに雄字の周囲に集まっている。
大量の、いや、膨大な、魔詛が。
おそらくは雄字の抵抗が思いの外強力であったのだろう。
それに焦ったのか、雄字の中で『力に狂い歪な進化を遂げようと暴走する魔炉』が、雄字の抵抗への対抗手段として、さらなる魔力暴走を引き起こすべく、魔力の原料となる魔詛を欲し、大量に吸い込んでいるのだろう。
きっとこの黒い渦はそのようにして起きている現象だ。
やはり甘かったか。
ウォームスライムの核周を摂取させることはある程度の効果を発揮したのは確かだが、それでも決定打にかけるのでは?と危惧はしていた。だから呼びかけることで、雄字の奮起に残り全てを賭けたレマティアなのであった。そして雄字はおそらく、その僅かな希望に、応えてくれたのだろう。奇跡は起こるはずだった。
いや、実際それは起こっていた。
『魔人化により消滅しかけた自我を取り戻す』
それをしようとして、しかも成功しつつあったこと、これを奇跡と言わずしてなんと言う?
だが最悪なことにレマティアの『悪い予感』までもが見事、的中してしまう結果となっただけ。
甘かった………。これほどに……これぼどに『魔人化』という現象は………
目の前で絶望に向け明確に針が傾き続ける状況。それを前にしても、レマティアにはもう、なんの手立ても残されていない。
──その時だった。
「「ギュジュアィエアアアアア!」」
雄字の周囲に集まりゆく超高濃度の魔詛に反応したからか、まだ生きていたらしいあの魔物が覚醒し、雄字に向かって牙を剥いた。目の前に居たのに、雄字の魔人化の前に霞みに霞んで、すっかりとその存在を忘れていた。
キマイラアグリゲートだ。
雄字の魔人化は超高濃度の魔詛を得たことで、その進行は再び早まることだろう。それも加速度的に。
勿論、その先には絶望しかない。
それだけでも十分に家族の窮地であるのに、今度はキマイラアグリゲートによる雄字襲撃が追加された。
今、雄字は無防備な状態だ。
キマイラという超強力と言っていい個体による不意の攻撃ならば、その攻撃は通ってしまうかもしれない。
そしてそれで万が一にも雄字が死ねば、魔人化した雄字の脅威は去るが、レマティアは夫を失い、シンは父親を失い、そしてその後キマイラアグリゲートを倒せたとしても、結局のところ、この迷宮にて、レマティアとシンは二人共、命を失うことだろう。
ではどうするか。キマイラアグリゲートだけでも滅ぼすか?
それも難しい。あのタフネスの権化とも言えるキマイラアグリゲートの息の根を止める程の大魔法となれば、雄字までも巻き込み、殺してしまいかねない。
ならば───
「大事なとこでしゃしゃり出てくんじゃ──」
この状況でレマティアが放てる魔法は、限られている。
「──ないわよおおおおおお!!!!」
魔人化雄字とキマイラの両者ともに殺さずかつ、沈黙させるべく放たれた魔法、それは──
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「「ギュジュジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャ──ッッ!!!」」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「ゴガギガギガギガギガギガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ─────ッッ!!!」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「「ジャジャジャジャジャジャジャジャ……!!」」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「ゴガギガガガガガガガガガガガガガ……!!」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「「ジャジャジャ……ッ」」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「ガガガ………ッ」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「「ジャジャ……」」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「ゴガ……」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「「………………………………」」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「………………………………」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「ちょ……っ母さ……」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「母さんコレ……」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「……いや母さんコレちょっと長くない!?」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「え?ちょ……母さん?」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ「いやこれマジヤバイって母さん!!」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「母さん!ねえ!」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「母さんてばうぉい!」リバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「母さああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ「…………ッハ!!私ってば…っユウジ大丈夫??」
レマティアの呼びかけに雄字は応えない。
───というか。
地面の所々は大きく抉られ、焦がされ、その上を這い伸ばしていたはずの超巨樹達の根は外側内側両方から焼かれ、爆ぜて、弾けて、ゴロゴロとしてコナゴナとなってひび割れた巨大な黒炭となって転がっていて、
キマイラアグリゲートと雄字の姿は『コナゴナ』の部分を除けば概ねそれら巨樹の根達と同じ運命を辿っていた。
……うん。レマティア。
力加減、間違えた。
残念なレマティアを弁護するとするなら。
雄字の魔炉が暴走し、レマティアの体内に溜まっていた余剰なる魔詛と彼女を範囲内におさめた周囲の魔詛を根こそぎ取り込んだことにより、彼女は魔詛の過剰状態から一時的だが、急激に解放された。つまり、レマティアは本来の実力を発揮出来る状態にあったのだ。だが本来の力を発揮出来る身体になっていたのにレマティアはそれに気づかず、『魔詛過剰』なる状態異常で魔力効率がとことんまで下がってしまった状態のままと勘違いしたまま、魔法を放ってしまったのだった。つまりは込めなくてもいいのにとことんまで力んで魔力を込めて魔法を放ってしまった。
そして放たれたは『魔力暴走一歩手前』まで高出力を極めし電撃魔法。
それは、本来ならばキマイラと雄字両方を殺さずとして、あわよくば無力化させるべく放たれるはずだった『麻痺』の追加効果を持つ便利な魔法。
だが魔力暴走一歩手前までいくほどに高出力で放たれた魔法であるので『その破壊力はお察し』という爆·轟雷魔法へと……知らずなってしまっていた。
しかも高出力過ぎる魔力に引きずられ意識を魔法に乗っ取られかけ、魔法を止められないでいたという、なんと言うか極めつけにやらかしたレマティアなのである。
もし、シンが止めることをせず、レマティアが魔力暴走に突入し、そしてそのまま暴走し続けていたとしたら……?
まさかの『レマティアお前もか』状態。
『雄字さんレマティアさん夫妻仲良く魔人化。』なんてことが起こりうる超危険な状況だったりしたのだ。
これは『シンくんファインプレー』と言っていい。
つーか、 レマティアェ……。
これは…あ〜…雄字、うん。まさかの、あの……
…………逝っちゃった…か?
と、そんな、色々な意味で直視し難い現実を拒否るようにして、シンは精一杯呻くのだった。
「と、父さん…………」
そしてソレは起こった。それが起こる時はいつだって唐突なものであるらしい。
──「……お?」
そう。奇跡は起こった
「よう!シン!」
…………のか?
そして自分の腕を丸々と呑み込んだままグッタリとして炭化した、なんだか悲惨な姿を晒すキマイラアグリゲートを見て雄字は叫ぶのであった。
「……ってオイいい!なんじゃぁこりゃあ!……一体全体コレ今どうなっ……説明を求むぞ我がセガレよ!」
今までの、だいぶシリアス寄りな怒涛の展開。
それを全く無視。
というか台無しにしてしまうズレたテンション。
真っ黒焦げた魔人化スタイルのままで返事をする雄字が、そこにいたのだった。
シンはすごく言いたかった。
(いやもうついてけねーのはコッチだから。)と。
電撃でピンときた方。
そうですね。私はラムちゃん好きですね。
アタル要素なさそうな雄字ですが。
彼のガサツはそこからキテる……?説の浮上(笑)
ではまた明日\(^o^)/




