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第30話 今度こそ(2)

宜しくお願いしますm(_ _)m









──激流の中で翻弄され続けていた、意識。

その意識が、『自分』のものであるのか、それすらも曖昧に感じるほど、希薄になってしまった『自我』。

その自我は消えゆく定めに抗いながら


遠くで誰かが、何かを、言っているのを感じていた。


その『自我』とは魔人化が完了してしまう一歩手前で無意識に踏みとどまっていた雄字本来の『自我』。

『本来の』と言ってもそれはもう既に

原型を留めてすらおらず──




ーーーー




  ………先程は、なにやら凄まじく美味なるものを口にねじ込まれた。


 それが原因であるのかどうか………解らないがこの身を引き裂かんとしていた周囲の激流が少し、少しだが緩いものになって思う。

 その凄まじく美味なるものを口にねじ込んでくれたのが、あの目の前で何やら言っている()であるのは、何とも不思議な話。


  旨そうな女だ。


 あの胸などは何とも柔そうで、タップリと血が詰め込まれてそうだ。歯を立てればタパと口内に溢れた血が鼻奥をくすぐり喉を濡らす様が容易に思い浮かぶ。にしてもなんだ。食べるならその前に、犯したくなるな。あの敵は。今、身に纏っている布切れが先程はフワリと浮いて、その中に尻が見えたのだが、アレは何とも劣情を誘う。あの柔い尻を握りしめると指間から肉がはみ出てきて……それがなんだか懐かしく思い出される、、、、


  懐かしい?


 何故懐かしむ。なんなのだ?一体……

……何か言っているな。それにどこを見て……おお?

この股関に生えるギンギラとしたモノは、、、


 ああ、そうか。そうだった。これを使わないと『犯す』なんてことは出来ない。……はずだ。うん。そうだったそうだった。そんな覚えがある。


  ……覚え?


 うむ。違和感だ。覚えがあるという虚ろな感覚に違和感を感じるというのもさらに違和感だ。『犯す』ことを考えておきながら股関のコレを失念していた自分。そもそも『犯す』という言葉自体に違和感を感じる。さらに更に違和感だ。


  ………身近に感じないことが

  やたらと目につく。

  先程までは、こうじゃなかった。

  ………一体、何が?


 ヘンだな。こんな思考は無駄だというのに。さっきまで夢中でいられたのに。そうだ。この、溢れかえる素晴らしい力に身を委ねることこそ…が…自分の、自分の、自分は……。


  いや、まて。

  気にするべきでは、ないのか?


 違和感に違和感でそれまでも違和感なら、それほどに違和感を感じるなら、解らないなら、辿ればいい。辿るべきだ。

違和感を感じるのは異なモノがあってのことなのだから。


  ソレは何か。……ああ、あの敵か。


 ううむ。誰なのか。この敵は?いや敵というなら多少は相手の中に敵性を認める、なんらかの……性質なり、情報を知っていて然るべき。でなくては敵とは、呼べないのでは?

 だか……このモノは美味いものを食わせてくれただけ。それを敵と呼ぶには………ああ、そういえば頬に棒を突きたててきたな。この、敵め。あれは痛かったぞ。いや敵?う〜む本当にそれで、いい、のか?敵、テキ…てき……敵、……のハズ、、なんだが……


  ──とにかくこのモノは、誰なのか。


 何やら言っているが、何を……ああ?…『抱きたい』かだと?…抱きたいに決まっている。ケダモノの様に激しく抱き倒してやってその後は………うん?『食べたい』では、………ないみたいだな。抱いたあと、何をしてやろうと自分は、想っていたのだったか。


  ………?想って『いた』?


 いやいや抱きたくなったのは今のことだ。

 それ以前のことは………。

 あれ?何故以前のことをなにも覚えてないのか。

 ?………それに………あのモノを抱くと考えてまた感じるこの『懐かしい』という感覚……。


  ヘンだな。何故だろう。

  ………?………

  自分は…元々…知って……いた?


あのモノを………




「あグっ……げアッ……いア。」




 ………………いま、自分は、呼ぼうとしたのか?


  あのモノの……『名前』を………。


 ……ってなにい?………今あのモノは『抱かれたい』と言ったのか?この自分にか?一体何を考えて………

 本当に何ナノかこのモノは?何者なのだ。それに

………食べられたがっているのだろうか?

よく分からないが何故か自分にとって『『犯す』と『食べる』は同義のことでなければならない』はずなのだが……うん?『よくわからないが何故か』?何故によく分かっていない?


  さっきから変だ。自分のことだぞ?


 それに『……でなければならないはず』とは?……うう……誰の意図を慮っている?何に則ろうとして……強者であるはずの、この自分が。

 とに、かく、だ。その自分に向かって『抱かれたい』とは、、このモノの意図がよく解らない。というか先程からこのようにして他者の意図を慮っているような自分、の意図も解らない。そんなものを気にするような弱い力ではないはずだ。この身に巡るこの強大な力はなんとも素晴らしいものだ。そうだ。このままこの力に身を任せ………


 ………その前に、


 聞いて、 みる、か。


  あのモノがこれから何を言うのかを。

 もう少し。


 興味が湧いてしまった。

 いや、気になる。



 気になってしょうがない。




  ………………




 ………はあ?『本当のあなた』?




 なにを言っているのか。この素晴らしい力をもつ自分に向けてこのモノは。この力が本当ではないとでも?この力は自分のものだ。誰にも渡さない………いや、それより。


  コイツは自分のことを知っているのか?


 ………知っているように話しているな。

……?……本当にあのモノが自分を知っていたとして、なぜその『知っている』を自分は信じる?

あのモノをまるで『知っている』かのようにして。


  ぐうう。もしかして、自分、おかしい、のか?


 とにかく不思議だ。思考があまりに不自由だ。アレはどうやら本当に無視できぬ存在だ。

 こうなると逆に自分という存在の方が、、

本当のものであるのか……疑わしく、なってくる……。


 くっ。何なのだ。


  不安になる。


 うう。股関のコレを握っていると何故か安心出来るのだが。

それも断念せねばなるまい。



  まずは、『自分』を確かめる方が先、、なのか?



  とりあえずは、自分を触ってみる。



 ──随分とゴツゴツとしていて、ザラザラと、しているな……

 そう、か……こん、な、こんな身体だった、のか?

 

 自分の身体……。


 なのに、………何という違和感か。

何故自分の身体なのに違和感を感じるのか?

………ああもうこの思考はやめなければ。危険だ。

深く追及してはいけない……と、思うのに……

 うん?これは、鱗か?

うう、こんなに……こんなにも、ひどいのか。

今の、自分の、身体は………………


 

  『ひどい』?……?

  『今の自分』?

  ……ああ、もう!………ん?  


 おお……頬には、キズは……フフ……ないな。

先程の攻撃はとても痛かったが。

この強い身体をキズつけるには足りなかったようだな。


  ……は、はははっ!ざまがないな!あのモノめ!


 いつもいつもビリビリとあの、モノ凄く痛い雷撃でこの身体をイビってはふんぞり返っていた

 ………ものだったが、、、うん?………電撃?

 いや、まて。棒だったぞ?

棒で突かれただけだ、まだ。

ビリビリは、まだだ。…………ったはず。


 ………自分は、何故、今電撃を夢想した?


 何かを忘れている


 大事な、何かを。


 クソっ何故だ。


 そんな気がしてならない……の……は……




  ──!!




 ………角!?



 角、だ。



 角が、ある、生えている!?




 頭に、3本も、角が。



 

 3本も…。




 何故 角が?

     角は ひどい。

  この角は ひど 過ぎる。

 なん のための角だ?

  角が3本も必 要な理由 はなん だ?

この 角をど う使えと?

 いつ生 えた角な のか?

  元々生え ていた角 なのか?

この角に は違和 感だら けだ。

  角があ ると

知った 

    途端

        頭が重く

  感じ出す

      程だ──


 角という衝撃の事実をきっかけに

   ボロボロと崩れていく。

     自分という存在に対する



   現実感が。



 それに対抗するように


 何かの、抗い難く『強制する力』も、感じる。


混乱して、散り散りになって、ああ、なのに止め処がないこの意識を、その何かが呑み込もうと──



 ぐあああ………っっ



  ───まるで考えるのも、感じるのも、『もう辞めろ』と言っているような、この強制的な、力───




 ───委ねる、か───






    いや






いやいや、待て。待て待てっ!


 辞めては、駄目だ。



  考えろ。感じろ。



 そもそも何故、こうも、自分のものであるはずのアレコレを、『それが自分である』と、納得することが出来ない?


 ………解らない。


 やはり混乱極まる。


 自分では解決出来ない。


 救いを求める。視線を向ける。


 あのモノへと。あのモノを見れば、


 あのモノの顔も言っていた。


 『どうしたらいいかなど解らない』 


 そうだな。解るわけなど、ないな…


……ん?


 そして気づく。


 あのモノのそばには、

 

  もう一つ居た。


 “小さな”モノがいた。


 ああ、あのモノ達を揃えて見ていると……



  何故こんなにも自分に違和感なのか、


   何故 自分で自分が


   納得、できないのか、


 少し、  だけれども、


  理解出来たぞ。


      それも 深くだ。



 かろうじてだがコノ意識が再び統べられていくのを、感じる。


 ──見られたく無かったのだ。

   自分は。

   こんな姿を。

   何故だか解らないが

   あのモノ達にだけは──。


  反射的に角を握る掌に力がこめられる。強く。

 よく分からない内に固まった決意に流され動く不可思議な自分。だがしかし、



 躊躇(ためらい)は 無かった。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いが痛い痛い痛い痛い痛いがまずは一本目痛い痛い痛いがしかし痛い痛い痛い痛い痛いのに痛い痛い痛いいや痛いからこそか痛い痛い痛い痛い痛い痛ければ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い分だけ痛い痛い痛い痛い痛いこの痛みが教えてくれる痛いぐおおニ本目!痛い痛い痛いこの『痛い』があればある分だけこの痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛みさえ奪い去ろうとする無情で腹ただしいコノ強制力に抗えるということを痛いなしかし痛いなあぁ痛い痛い痛い痛いううぐぐ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃよし!痛い痛いもうすぐ三本目も…痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛 『───の字いいぃぃぃぃぃ!』 い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛………え??




………聞き逃さ無かったぞ。


 しかと、聞こえたぞ?


 いま、言った()な?





 『雄の字』と





 わかるぞ。





  『雄の字』()()()()

   ()の事だ。


なんて懐かしいんだ。なんて親しみが溢れてきて、なんて切なくさせる?  この、呼び方。



もっと!



もっと呼んでくれ!




  俺を!




 

 『雄の字』と!





 そうだ。そうだった!



 忘れてない。忘れられなかった。



 この呼び方をする、()()()を。

そうだ。呼んでくれたから、こっちもこう呼んでやったものだ。



『■の字』と。



  ぐう!



邪魔、するなよ!

 思い出させて、くれよ!

ずっと探して、たんだ!

 きっと、生きてるって!

そう信じて、何年も………

 必ずまた、会えるって、そして今度こそ、ちゃんと……




 今度こそ……どうするんだっけか……。



 今度こそ、今度こそ……今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ今度!コソ!あああああああああああああああああああああああああ!もう!とにかく!



  今度こそ!失敗!できねえ!俺わ!





 





……でも結局、うん。どうすんだっけか……クソっ思い出せ()()()!!



 コレは、誰だった?誰に、誰を……誰のために!?





『頑張れええ!父さんん!』





 あ。また呼ばれ…た。?今度も同じ声……。




 今度は、『父さん』だと??




 ああ………ああっ




 そうかっ。


 


 いつの間にかの『父親』か。




 この俺もとうとう………。




 そうか……そうか……




 ……にしてもまた、泣いてるのか。アイツ。




 いや、ココは本来、『ゴメン』だな。

喧嘩つええだけで他に何も取り柄ねえからなあ俺は




……こんな父親……




………って待てえ俺!なに諦めてんの?それでいいわけないだろう!?セガレ泣いてるし!いや泣かしてんのは、俺か?俺のせいか?


うぬう。どうやら、俺の、せいだな。コレハ。


……って、いや、だから!なんとかしなきゃだろ今は!俺!


 今度こそ!そうなんだろ??

 しっかりしろ!俺!

このままでいいわけ……俺……俺は、俺──



今度こそ………………



……ってうわなんだこれ!

やめ……っ

クっソこれ……



がっ……やめ………っゴボお──────!



 


『魔人雄字の心の中』編でした。


色々と、拙くもなるべく自然に、細々と、伏線はりまくってます。(ドキドキ)

が、ご安心を。

全部回収する予定です。




ではまた明日\(^o^)/




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