冷徹なイケメン王子
「アリアが消えた?」
この爺は寝言でも言っているのか?
「その通りでございます。大変申し訳ないのですが、代役をお立てください。」
ようやく彼女を俺のものにできたはずなのに、なぜ彼女は消えた?気づいたら俺は剣を抜いて公爵に切りかかっていた。
「王家を謀るとは、死んで詫びろ。」
しかし、俺の剣は公爵の側近に阻まれて、叩き落とされた。
「貴様、国家転覆罪で処刑してやるぞ。」
「悪いが、貴様のような小僧では俺には勝てんぞ。」
生意気な口をききやがって。悔しいが、その通りだ。王家の力は年々、弱体化している。事実、奴と戦って勝てる保証はない。それよりも婚約者だ。
「まあいい。それよりも婚約者の件、どうするつもりだ。公爵家の女と結婚すると各国には通達してある。さすがに各国の要人の前で私に恥をかかせたら貴様の爵位と領地の没収は免れんぞ。」
「ご安心ください。王子に好きな女性を見繕っていただければ、公爵家の養子にしますので、何ら問題ございません。なんだったら婚約者のいる令嬢でも、平民でも良いです。今日の午後三時までなら受け付けます。もし、見つからなければこちらで適当な女性を見繕います。」
「今回は我慢してやるが、俺をコケにしたことは絶対に後悔させてやる。覚えておけよ。それと、どんな女性を用意するつもりなんだ?あまりに俺と釣り合わない女性ならお前の一族に戦を仕掛ける。」
「ご安心してください。秘密兵器ですので、なかなかの上玉です。しかし、王子には自分の伴侶をまずは自分で決めていただくことをオススメします。」
確かに、俺には取り巻きの女がいる。生憎、体以外は彼女らのことを知らないし、興味ない。あれらは王妃にする器ではない。ならば、公爵が用意してきた女性の品定めをすることも一興か。用意された女性が気に入らなければ殺してやればよいし、愛人を囲えばよいことだ。一夫多妻制なので、それくらいは容易である。それはもういいとして、俺の婚約者がどうなろうとアリアは絶対に捕まえてやる。国際的に指名手配にし、奴を捕まえ、俺の奴隷にして一生飼育してやる。
「俺は楽しみにしているからな。期待を裏切るなよ。」
いくら公爵が強いといっても、この国を敵にして生き残れるわけがない。
「ええ、お任せください。保険としてこちらの切り札を使わせていただきます。」
この時の俺は甘かった。もし、あの時の俺に戻れるなら必ず、自分で婚約者を見繕う。俺は公爵が薄ら笑いを浮かべていることにその時は気づくことができなかった。
俺は午後三時まで何もすることはなく、読書をして過ごした。俺は取り巻きの奴らとずっと一緒に暮らしたいと思えるほど好きになれない。読書をしていたのだが、案の定、学校に行ったら何人かは自分を婚約者にしてもらえるように頼んできたが、私は公爵が用意した女性と結婚すると宣言した。彼女たちは目に見えて落ち込んでいた。
「待ってください、カーネリウス様。私と約束したではないですか。」
やはり来たか。こいつは第一王子を追い落とすのに利用したサリー男爵令嬢。こいつの体はたっぷり楽しめた。だが、王妃にするつもりはない。こいつは野心家で常に学内で3位の成績を納めていた女だ。その理由も奨学金を獲得して、学園に留まり、玉の輿を狙うためである。こいつは伯爵以上の爵位の嫡男に色目を使い、近づいていた屑だ。もしこいつを伴侶にしたら、後でどんな風評被害が流れるか、考えたくもない。
「サリー、貴様は何を寝言を言っている。貴様のような身分の低い女が私の伴侶になれるはずがないだろう。失せろ。」
すると、彼女は怒り出した。顔を真っ赤にして本気で怒っている。笑えるね。
「私の初めてを無理やり奪っておいて今更捨てるというの?私が付き合っていたオデオン様と別れさせたのはあなたじゃないの。私はあなたのせいで幾度もあの女に恥をかかされました。私の学生生活を返してください。」
まあ、怒るのも当然か。彼女以外の私の取り巻きは皆、婚約者がいて、彼女とは事情が違う。取り巻きも当然、私のお手付きであるが、彼らは政略結婚であるので、結婚相手のことはそもそも好きではない。そして、彼女たちを略奪したわけではない。彼女たちの方から話しかけてきたので、関係を持っただけである。それに男の方も適当に女を作って遊んでいるので、特に禍根があるわけではない。
サリーは少し事情が違う。彼女は玉の輿のために学校に来ていた。彼女は複数の貴族の嫡男をキープしていたが、実は体の関係は私以外には許していなかった。なかなか私は彼女のことを評価していた。彼女は人心掌握術に加え、平民とのパイプもあった。私ほどではないが優秀であったことから、豚を追い落とすのに使えると思った。だからこちらから近づき、関係を築いた。あっさりとオデオンから私に鞍替えしたのだが、彼女の中では都合よく事実がねじ曲がっているようだ。
「オデオンのナニでもしゃぶって誘惑でもしてきたらどうだ。人のせいにするな。複数の男と付き合っている尻軽のくせに、私が貴様の初めてを無理やり奪ったなんてことを噂で流したところで、誰も信じないだろうな。そんなことしたら不敬罪で死刑にするけどな。そもそも、私は無理矢理行為に及んだ記憶はない。勝手に貴様が股を開いて誘惑しただけではないか。いっそのこと、男を喜ばすテクニックでも磨いて貴族の愛人でも狙ったらどうだ?」
彼女の家は下に兄弟が4人おり、父親が屑なので女と酒をやめられず、借金をしており、何もしなければ彼女を含めて身売りに出されるらしい。だからこそ、彼女は金持ちの貴族から資金援助を受けなければならないと聞いている。彼女は当初は王族である私にはリスキーであることを鑑みて近づかず、それよりも下の身分の貴族の男子たちに媚びへつらい、偶然を装って胸を押し付けたりして関心を引こうともがいていた。美しい兄弟愛だよ、反吐がでる。兄弟のために長女である自分が頑張ると言っていた時には、愚かだと感じた。自己犠牲の精神など王族には不要だ。彼女はよく使える道具であったが、今となってはもういらない。
彼女が反逆してきたところで、痛手にならない。いままでは私が彼女が捕まらないように学校に圧力をかけて援護していたが、後ろ盾のない彼女は孤立無援となる。最悪、いままで嘘の告発をしてたこと学校に報告して、彼女に退学処分を言い渡すこともできる。
だが、私の取り巻きになり下がった挙句に捨てられた彼女のことを好きになる男などいるのだろうか。いや、いないな。新品と中古なら新品を選ぶ。私に仕込まれたテクニックで頑張ってみてくれ。
「あばよ、今日の夜に晩餐会があるから、もう帰る。お前たちの何人かは晩餐会に呼ばれているだろうから、婚約者についてはその時見るといい。まあ、伯爵よりも下の身分だと厳しいかな。じゃあね。」
後ろで地団駄を踏む女を置き去りにし、俺はその場を離れていった。バカな女だ。