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2番

 俺が欲しい物は何でも手に入った。俺の母親は俺こそが次期国王になる人材であると言っていた。そして、俺も信じて疑わなかった。けれども、俺は「第二王子」であり、2番なのだ。母親が側室だからである。俺の一番欲しい地位は豚が持っているのだ。だからこそ豚を許せるわけがない。


 いままで城内で奴に出会う度に俺は喧嘩を吹っ掛けたし、剣術も学力も顔もあらゆる点で俺は豚よりもずっと優秀だった。奴のことは心底見下していた。


 俺は豚の誕生会で初めてあいつの婚約者に会った。一目惚れだった。彼女を見たときに私は電撃が走った。彼女が欲しいと思った。くりっとした目に赤い頬をした銀髪の少女。その藍色の目に引き込まれた。


 何よりも彼女が嬉しそうに豚にプレゼントをしたことが腹が立った。騎士団長の息子と魔術師団長の息子を連れて、豚に身の程を弁えさせた。人間の言葉を豚屑が話すということが許せない。ましてや花嫁を貰うなど論外である。


 泣かしてやって満足していたら銀髪の女が殴りかかってきた。護身術を学んでいたため、返り討ちにしようと思ったが、動きが非常に素早く、気づいたら身体中を殴打され、俺は泣かされていた。


 俺は父親に直談判してあの女を俺の奴隷にすることを提案した。しかし、父親が無理だと言ったので、奴隷にすることをできなかった。だから、直接あれを俺のものにすることにした。


 週に1、2回女が来ている時にわざわざ俺様は直接頼んだ。「いや。」と毎回言われ、時には無視されて腹が立ち、魔法で攻撃したが避けられた挙げ句に鼻で笑われた。ふざけるな。


 俺はあいつを超えようと努力を継続した。いままでの同年代の女は俺を見て羨望の眼差しを向ける奴しかいないが、あいつは違った。だからこそ、俺は意地になった。大人が望む以上の結果を俺は出した。けれども、その一歩先を常にあいつは行ったのだ。


 その後、あいつに勝てないまま15歳になって全寮制の学園に入学した。そこでの俺の成績は常に2番であった。王族に生まれたはずなのにずっと2番目なのだ。非常に悔しい。


 まあ、この数年でとても良いこともあった。俺の継承権に関しては実質的には1番となった。数年前に我が国はアルシュタット王国の大飢饉に乗じて他国と共に宣戦布告をしたのだ。同時に俺の両親が結託して王命と称して毒薬を服毒させて豚の母親を亡きものにした。これで第一王子の最大の後ろ楯を奪った。


 今や印象操作もあって第一王子は国中の嫌われものである。敵国の王族の血を引く豚が国王の座を継承する可能性は万が一にもあり得ない。寝ていれば勝手に王位が降ってくる。


 勿論、それだけでは物足りないので俺の正室の座を狙う女どもを焚き付けて学内で奴をいじめ抜き、心も体も完全に破壊するつもりであった。


「カーネリウス様、私はあの豚に水をかけましたわ。」

「カーネリウス様、私はあの豚が書いたレポートのページを抜き取りましたわ。」

「カーネリウス様、私はあの豚の制服を引き裂いてやりましたわ。」

「カーネリウス様、私は豚に肉体関係を迫られたと噂を流しましたわ。」


「何のことを言っているのかは分からないが、期待している。」


 醜い女どもであるが、なかなか役に立つ。


 俺は豚を完全に孤立させるために奴のことを無視するように生徒全員に徹底させ、万が一にも豚に話すような生徒にはそれ相応の罰を与えることを俺の部下達に徹底させた。


 あの豚には奴の母親と同じ運命を辿ってもらう。寮で奴の世話をしている女中を買収し、抗うつ薬を毒薬にすり替え、徐々に命を削り取って行くのだ。即効性のある猛毒はあえて使わない。仮にも国王の血を引く者を殺すのだから体を衰弱させて病死を装う必要がある。そうしないといらない争いを招くことになる。


 俺の父親と母親は俺の味方をしてくれている。もっと言えば城内も学園の貴族・平民問わずこの国の全員が俺を次期国王に望んでいる。あいつだけである、俺の国王になる道を邪魔する者は。


 あいつの父親は王族に匹敵するフェリア家の当主であり、この国の政治の大部分を掌握している。力押しは困難である。だからあいつは俺の王位継承の最大の障害であった。


 あいつは社交界においてどれだけ豚が素晴らしいかを力説し、豚のことを支えて欲しいと頼み回っていた。フェリア家のバックアップがあるとすれば話は変わる。最強の武闘派一族であるフェリア家と戦うか第一王子で妥協するか。当然、後者が選択される。


 俺はフェリア家の当主と手紙を通じて何度もやり取りをした。豚とあいつの婚約を破棄し、その代わりにあいつのことを正室にすることを約束し、同盟を結んだ。これで後は婚約破棄の口実を見つければ良い。


 まず実行したのはアリア公爵令嬢のことを蔑ろにし、平民女性を手当たり次第に手込めにしているという噂を流すことであった。王族といえども好き放題に強姦を繰り返えせば平民からの支持が大きく下がることは間違いないし、あんまりひどいと婚約どころか継承権が破棄されてもおかしくない。


 豚は俺と異なり、容姿と能力に恵まれておらず、この悪評を真に受ける平民も多かった。平民の分際で豚のことを火属性の魔法で攻撃したときはさすがに焦った。王族の暗殺は未遂であっても死刑である。拷問にかけて、洗いざらいすべてを吐かせた後に、独立した機関である執行人が背後にいる者を含めて全員処刑するのだ。


 俺が処刑されることは絶対にないが、万が一にも俺に被害が及んでも困るのでその生徒は隠密部隊を使って暗殺した。平民を調子に乗らせて王族の権威を下げるのは宜しくないので、対処方法を再び検討した。


 試行錯誤の結果、当事者に自主的に婚約を破棄させれば良いという結論に至った。シンプル過ぎて逆に盲点だった。豚本人に婚約を破棄させれば良いのだ。


「おい、豚野郎、話がある。」

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