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盗賊団討伐

「おい、まずいぜ。ギルドの方からS級冒険者が襲来するって知らせが来たぜ。」


 チンピラの三人組は盗賊団のスパイだった。ギルドに潜り込んで監視していたのだ。冒険者はよほどの重犯罪者でなければ誰でもなれる。なので、裏社会とも癒着している。


 勿論、すべてのギルドが悪の巣窟というわけではない。景気が良ければ悪党は当然、排除対象になる。要は、社会情勢によってギルドは善にも悪にもなるというわけだ。


「逃げるぞ。」


 盗賊団は逃げてなんぼだ。勝てない相手からは逃げる。俺は盗賊団のボスとして組織を確実に生き残らせる義務がある。


「逃がすわけねえだろ、ボンクラが。」


 声が聞こえる方に振り向くと、マスクで顔を覆った悪魔の化身が立っていた。溢れでる禍々しい魔力が盗賊団を戦慄させる。


「ひいいいいいい」


「燃え尽きろ、デスバーン」


 辺り一面が火の海となり、下っぱが次々と丸焦げになる。アリアに慈悲はない。彼女にとって犯罪者を殺すことは正当な裁きであり、一切殺意がない。歩いている最中に虫を踏み潰すのと同じことなのだ。気にもならない。


 それが、一流の戦士として公爵家の英才教育により誕生したアリアなのだ。令嬢モードの時とは違うのだ。


「ハハハハハハ」


「化け物め、貴様を殺すにはこちらも化け物を使わせてもらう。来い、剛力の牛殺丸!」


 アジトの奥の扉が開け放たれ、一人の男とミノタウロスが出てきた。


「俺の出番だな。」


「グオオオオオ」


 あの中肉中背の男は調教師だな。知能が決して高くはない魔物に適切な指示を与え、高い戦闘力を引き出す。魔物を操って戦力に加えるのは軍でも実装されている。


 もっとも、弱点がないわけでもない。魔物は調教師を殺せばコントロールを失う。セオリーでは調教師を殺してから魔物を倒すのが普通だ。そうすれば、敵味方の区別もなく、魔物は暴れだす。


 だが、今回に限っては、正面からの突破をさせてもらう。


「行け、牛殺丸。敵を八つ裂きにしろ!」


「グオオオオオ」


「奴を殺せ、報奨を後でたっぷりくれてやる。」


 調教師に檄を飛ばす。時間を稼いでくれ。その間にボスである俺は逃げる。S級に勝てるわけがない。早々に離脱させてもらおう。


「せいぜい私を楽しませてくれ。」


 私は剣を引き抜き、振り下ろされるミノタウロスの斧を片腕で受け止めた。軽いな。


「嘘だろ?ミノタウロスの一撃は城壁だって破壊するんだぞ!」


「弱いな。S級を殺すつもりならB級の魔物なら数百体は用意しな。」


 斧の柄を引っ張り、武器を奪い取る。所詮は魔力を自在に操れない獣だ。弱すぎて話にならない。


「返してやるよ。」


 斧をほうり投げて、ミノタウロスの脳天に叩きつけて殺害した。

 でかい図体が崩れ落ち、脳ミソと血をぶちまけて倒れた。


「ひいいいいいい。バケモノ〜!」


 調教師は蛇に睨まれた蛙のように動けない。


「じゃ、てめえはとっとと地獄に落ちな。」


 社会のゴミは掃除させてもらう。素手で首をへし折って殺害。


「次はボスキャラ戦だな。」


 逃がしはしない。絶対に殺す。アジトの奥を探ると地下に通路があり、そこから逃げたようだ。トラップも設置されているようだ。普通に通ろうとすれば時間がかなりかかるだろう。まあ、それでも絶対に逃がさない。


「焼き尽くせ、ファイアキャノン」


 炎の塊が通路に向けて発射され、完全に焼き尽くした。中にいれば確実に死んでいる。私でも無傷ではいられない熱量だ。既に通路を抜けていれば逃げられてしまうが、どの道土地勘がないので追いかけて捕まえることはできない。その時はその時だ。


 後日、死体がないか確認しようと思うが、面倒だからやめる。


 とりあえず、任務完了。


「首を集めるか。」


 依頼を達成したことにするには、首を持っていく必要がある。一つずつ首を刈っていく。中には顔の判別が難しい死体もあった。この時、やるかは別として盗賊の首に一般人の首を混ぜてもバレなそうだと思った。


 実際、暗殺ギルドではこういったことが常套手段で行われているそうだ。


「今日は社会貢献ができて良かった。」


 タイガー盗賊団は他国にも知れた盗賊団だ。その悪名は私も聞いたことがある。男は殺し、女は犯した後に売り飛ばす。同情の余地もない屑野郎だ。


 このアジトの中を探索すると薬漬けで放心した女がいた。しっかりと止めを刺しておいた。違法薬物の使用は死罪。すでに女性は壊れていたし、元には戻らない。このまま娼婦にされて死ぬまでこき使われるよりも、殺してやった方が良いだろう。


 周囲を見回すと、正気の子供や女が檻の中にいた。社会復帰もできそうだ。彼らはギルドに預けて家族の元に返してやろう。


「ついてきてください。私は貴方達の味方です。」


 令嬢モードの私は彼らに笑いかける。ヘルメットをつけているので私の顔が見えないのを忘れていた。


「殺さないでください。許してください。」


 すっかり怯えきっている。盗賊団に拐われたのだ。ダメージがでかい。可哀想に。


 彼らは私が容赦なく薬漬けの女性を殺すの見ており、盗賊を笑いながら殺すのを聞いていたのだ。私のことを恐れていたのだが、勘違いして盗賊を恐れていると私は思った。


 檻を素手で破壊し、彼らに促した。


「出ておいで、怖くないよ。」


 安心させるために猫撫で声をだした。中には失禁する人々もいたが無事に人質を解放し、彼らを自由にした。


「これあげる。」


 一人一人に首をプレゼントした。タイガー盗賊団のアジトにいる奴らは大体指名手配になっている賞金首だ。この首があればしばらくの生活費は大丈夫だろう。


「帰りましょう。」


 死にそうな顔をした彼らを引き連れて、私はギルドに帰った。



「帰ったぞ。」



 私たちが町に入ると、多くの人が大通りで道を譲り、まるで貴族様がやって来た時のように頭を下げ、恭順の意を示していた。勇者になる日も近いと思う。


「お土産だ。受けとれ。」


「有難うございます。是非、買い取らせていただきます。」


 うむ。ちゃんとギルドマスターが対応してくれている。これなら問題ないな。


「ところで、後ろにいる奴らの持っている首の買い取りも頼む。値もそこそこ弾んでくれ。」


「かしこまりました。」


「それと、彼らを故郷に返してやってくれ。中には身売りに出されて帰る場所がない者もいるかもしれない。その場合はしっかりと仕事先を斡旋してくれ。」


 私は社会を良くしていきたいのだ。今もそれは変わらない。


「ええ、ご家族の元に送り返させていただきまし、仕事もご用意します。」


「頼んだぞ。じゃあな。」


 その後、金を受け取り、私はギルドを後にした。国境近くの寂れたギルドであったが、良いこともあった。盗賊団を襲撃して人を救い出せたし、小遣いも稼げた。


 この町を出発して私は南に向かう。王妃様からおとぎ話で聞いた伝説のカイザードラゴンの末裔が潜むブランデス山に向かう。竜を討伐し、SS級にまずはなってみせる。

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