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茶師のポーション~探求編~  作者: 神無 乃愛
富士樹海迷宮編
25/25

大暴走の原因

いつもありがとうございます


 その後は順調に上層を探索できた。

他にも抜け穴があるかもしれないと外部から連絡があった。

「困ったものですねぇ」

「まったくだ」

「穴を掘っていないといいのですが」

 確かに、そう周囲の探求者たちも同意していた。


 実際、地下に降りていくタイプの迷宮では、通気口がある場合もある。勿論、ギルドにあるマップにはそれも含めて表記されており、大きさによっては魔物が地上に溢れないようにする措置を施してある。富士樹海迷宮にも当然通気口はあるのだが、地上にある穴がマップと一致しない、その連絡が来たのだ。

 たかが通気口と侮るなかれ。迷宮が迷宮たる由縁なのだ。

「まさかと思うけど……」

「マイニさん、如何なさいました?」

ギルドマスター(あの馬鹿)が迷宮に穴掘ったから、ここまで酷くなったってこと?」

「え?」

「日本にまで伝わってないのかしら。宗教革命の間接的な理由がそれなのよ」

 マイニの言葉に、その場にいた全員が硬直した


 マイニの話を総括すると、こういうことらしい。

 当時キリスト教が管轄していた迷宮から、効率よく魔石やら魔獣の皮革やらを持ち出そうと、当時のローマ教皇や枢機卿が先導して迷宮に穴をあけた。当時神学教授だったルターが、探求者と一緒に潜る修道士が危険だという理由でそれに反対。論文を出してでも止めたが、それにより破門されることとなった。「だから何だ」と言わんばかりのルター。そして、「聖遺跡」と呼ばれ静かだった迷宮が、大暴走を起こした。「ほれ見たことか」と言い、論文の正当性を示した。

 それまでローマ教皇の「神の御言葉であり、間違いはない」とされていたものが、覆された瞬間でもあった。そして、迷宮に手を加えていけないことは聖書にも記されていた、と時の探求者たちは知ることになる。

 当時ラテン語は聖職者のための語源であり、一般市民には浸透していなかった。聖書はラテン語。つまり、一般市民は聖書の内容を聖職者から聞かねば分からなかったのである。それをドイツ語に翻訳したというルターの功績は大きい。

 大暴走を「偶然」と言うローマ教皇側、「ローマ教皇側により人為的に起こされたもの」とするルター側で意見が分かれ、カトリック派を作る原因になったという。


「……なるほど。もし、他にも見慣れぬ穴があったら、奇しくもルターの意見が正しいと今回も証明されるわけですね」

「エルフ族には他にも伝わっているけど、一番新しいのがこれだから」

 大暴走は人為的に起こせる。その一つの例だとマイニは付け足した。

 ギルドマスターめ、余計なことを。

「ギルドマスターに心行くまで責任を取ってもらうさ。ということは、見慣れない穴をさっさと塞げは、大暴走が落ち着くかもしれない。なおさら急ごう」

 サブマスターの一言で、全員が活路を見出した。


 もし仮に今回の大暴走が人為的に引き起こされたのだとしたら、それは他の迷宮にも影響を及ぼす場合がる。日本の場合、狭い場所に多くの迷宮があることでも有名だ。

「伊豆やら箱根に影響がないのが一番ですね」

「師匠、それフラグね」

 弟子を小突きつつ、次の階層へと足を進ませた。


ルター:言わずと知れた宗教革命家「マルティン・ルター」。聖アウグスチノ修道会に属するドイツ人神学教授であり、司祭でもある。「人の姿となられた神の言葉としてのイエス・キリストにのみ従う」というルター主義によって宗教改革をもたらした。贖宥状(しょくゆうじょう)をローマ・カトリック教会が発行し、その問題を見過ごすことが出来なかった(とある一派が献金欲しさに出したという理由も重なったため)。ローマ・カトリック教会からの破門状を焼いて捨てたり、当時ラテン語で書かれていた聖書をドイツ語(しかも当時の話し言葉)で翻訳した人物。


物語上では、贖宥状の代わりに迷宮に穴を作り、大暴走を起こした原因を糾弾したという設定です。

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