危機感
いつもありがとうございます。
即興のパーティ編成をギルドマスターは甘く見ているところがある、そう言ったのはサブマスターだ。
「ベテランになればなるほど、他パーティとの連携の重要さだって知ってるっつうの」
そうぼやいたのは、どこかのパーティに所属する人物だった。
「俺もそれは重々承知しているよ。まぁ、俺の場合ほとんどがソロで潜っていたけどさ」
「ソロだからこそ、即興のパーティにおいてリーダーの重要性というものをご存じでしょう」
一フロア下に降りたところで魔獣を狩りつつ、サブマスターとマスターはそんな話をしていた。
「まぁねぇ。俺の場合、大抵どっかの指揮下に入ってたけど、指揮下に入りたがらない初々しいパーティもあるんだよなぁ」
本当に初々しいパーティは喜んで指揮下に入ると思う、そうサブマスターの台詞に突っ込みを入れたのは弟子だ。
「まぁ、サブマスターや私から見れば初々しい限りですよ。『自分もしくは、自分たちの力だけで何とかなる』と思うのは若い証拠です。現にお前のパーティは、リーダーがお前でしょう?」
「なんで俺に振るのさ」
「いえね、これが私たちの言う『初々しいリーダー』の場合、探求者として動いている年数が多い方がリーダーをやったり、自称『土地勘がある』方がやっている場合が多いのですよ」
「俺、マイニに押し付けられたんだけど」
「そこです。マイニさんはこれまで日本の迷宮に何度か潜っているはずです。それをひけらかさない。そして、お前も自分以上に采配が振るえる人物がいるとなればこうやってリーダー権限をあっさりと譲渡、そしてメンバーはそれに従う。通常はそれが出来るようになるまで時間がかかります」
「……俺の場合、師匠にぼっきぼきに自信へし折られたんだけど」
弟子のぼやきを無視して、ゆっくりと足を進める。
余談だが、マスターは探求者として「子弟制度」を利用するつもりはなかった。誰かに己のノウハウを伝えようと思っていなかった。
それを変えたのは、今は亡きマスターの妻であり、妻の知人たちだ。
マスターも弟子のおかげで成長できた部分もあったりする。そういう意味では持ちつ持たれつなのだ。
「さて、ここまでの戦果として……おかしいですね」
「マスターも思ったか。大暴走を起こしたにしてはおかしい」
鎮圧しない限り、ずっと湧き出るはずの魔獣。それがあまりにも少なすぎた。
それが、ベテランと言われる探求者たちに緊張をもたらすには十分すぎた。
なおのこと、進む速度が遅くなるのは仕方のないことだった。
こ……こちらは半月ぶりの更新でした(´・ω・`)