表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
茶師のポーション~探求編~  作者: 神無 乃愛
富士樹海迷宮編
17/25

マキネッタ

いつもありがとうございます


 あの二人、以前なら「ミルク以外は認めない!」と断固として宣言していたが、変わったようである。

 朝食の用意が出来、早いものから食べていく。


 こういう時は「盛り渡し分」というものがあり、前衛など体力勝負の探求者に多めに渡す。


 食べ終わった探求者にマスターが茶を、ウーゴがエスプレッソを渡していく。

 珈琲は好きでも、エスプレッソが苦手な探求者にはお湯かミルクを。お湯で薄めて飲むのもいいらしい。今回は念のため大きめのマキネッタをウーゴに渡してある。大抵、ウーゴが使うマキネッタは二杯ほどしか作らないもの。しかし、今回は人数が多いため、大容量のマキネッタを使う。

「エスプレッソじゃなくて、モカなんだよね」

 ぼそりとウーゴが呟く。気にするのはやはり、イタリア出身だからなのだろう。マスターもお茶の種類にはうるさくなるため、気持ちは分かる。

「マスターに頼めば、こういう機械を取り寄せてくれるからありがたいよ」

「私は珈琲に詳しくありませんから。ウーゴさんの言われるものを揃えれば、間違いないと確信しておりますので」

 お茶を淹れる道具にもこだわるマスターらしい一言だが、阿形の不服そうな顔は「茶器関係多すぎ! 何がどれか分からない」と言わんばかりだ。


 二人だけで魔植物の豆を倒すのは一苦労だったようで、昼近くに戻ってきた。

 何故かサブマスターと向こうに残していたはずの探求者も一緒になって。

「何をやっているのですか」

「予定変更。証拠集めたうえで、国際探求者ギルドに全部送付した」

「……」

 開いた口が塞がらないとはこのことである。証拠集めが早すぎたのは、サブマスターがそれまで集めていたからなのか、何なのか。

「いや、一般人(、、、)から上級ポーションの問い合わせがあってね。俺の使い魔ちゃんが聞いちゃったのよ」

 こっそりとギルドマスターに使い魔をつけていた探求者があっけらかんとして言う。

「確かあなたの使い魔は……」

「そそ。この携帯もどきだよーん。一部を飛ばせば、建物内ならあっという間に音を拾ってくれるし」

 付喪神だったはずである。その付喪神を携帯として使うのは如何なものか、と思わなくもないが、この男に言わせると「狛犬をマジックバックとかインベントリ代わりに使うあんたに言われたくない」そうだ。


 人はこれを五十歩百歩という。


「いやね、日本支部にしようか、日本探求者ギルドにしようか迷ってたんだけどさ、質のいいポーションで暴利を貪っているのが酷すぎてさ。いちお、日本支部と日本探求者ギルドにもつたえておいたよん」

「では安心して、迷宮探索に行けますね」

「そーいうこと。マスター、あんたのパーティにおれとサブマス入れて」

「私は弟子のパーティに……」

「知ってる。一緒にいればいいじゃんか。あそこのメンバーにも許可取ったし」

 いつの間に。そう言いたいところだが、どうやら地上でそういう話になったようである。それに、ほとんどの探求者が一緒に動くか、近くを回ることにしているため、同じことなのかもしれないが。

「……仕方ありませんね。弟子」

「なにー?」

「その間抜けた返事を止めなさいといつも言っているでしょう。……申し訳ないのですが」

「うん、マイニとクリフに聞いた。いいんじゃない? サブマスの護衛にもなって」

 あっさりと弟子が言う。

「そうですか。あとは、サブマスターの剣技を見ておきなさいと言いたかったのですよ。サブマスターは日本刀を愛用する数少ない探求者ですので」

「マジで!? 参考にする!!」

 弟子も一応日本刀を使う。使い方は道場で習ったやり方に我流が入っている。もっと効率よく倒したいと願う弟子にとって、ちょうどいいかもしれない。


「んじゃ、明日に向けて俺は豆乳作るね。こんだけ人数増えたら、絶対足りないし」

 水属性の精霊や妖精もちに頼んで水を出してもらいつつ、弟子は豆乳づくりを始めた。


 明後日から本格的に迷宮を探索するということにして、その日は再度どのパーティとどのパーティが隣り合わせで戦うか、ということを話しあった。


マキネッタ……イタリアの家庭で親しまれている、直火式のエスプレッソメーカーのこと。実際は子のマキネッタで淹れた珈琲を「モカ・コーヒー」というらしく、別物らしい……。なのでエスプレッソと比べると味が違う。1カップ用から9カップ用までと大きさも様々。一番使う大きさで買うのが望ましい(2カップ用で1カップ分だけという淹れ方は無理)最近では内部がセパレートされ、牛乳を淹れれるものや、フィルターを付け、半分の量を淹れれるものもある。ただし、一番美味しい淹れ方は、やはり分量通り作ること。今回ウーゴが使ったのは、9カップ用。珈琲豆はエスプレッソ用の深煎り、細挽きの豆を使用。もちろん、ウーゴがミルで好きなように挽いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ