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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢廻り

作者: 緑な道化師

 また死ぬ夢を見た。

 今回で6度目だから汗も出ないし動悸も起きない。最初の方は驚きすぎて5分程固まっていたが、今では傷の有無をする程度だ。

 その確認が終われば学生服に袖を通して、朝飯のカレーパンを手に取り通って玄関をくぐる。

 学校に着き賑やかな教室の扉を開けて、窓辺にある自分の席に向かう。

 席に座りカバンから4個目のカレーパンを取り出すと声をかけられた。

「おっはー、パン屋」

「俺の名前は、幹刃かんばだ。いい加減名前を覚えろ、竜次」

「いやーわりわり。でもお前いつもパン食ってるじゃねーか」

 そう言って俺のカレーパンに手を出すこいつは、仙崎せんざき 竜次りゅうじといういつも陽気な奴だ。

「そういえば、幹刃は今日の3時限目がテストての知ってるか?」

「お前みたいに不真面目じゃないからな。言っておくがノートは貸さないからな」

「おっお前、俺に今回も赤点を取れってか?!」

「普通に勉強してたら赤点なんて取ること無いがな…。まぁ勉強してない自分を恨むんだな」

「そんな、殺生な…幹刃大先生…」

「そう言っても見せないからな。自分でしないと身につかないしな」

 そう言っていると担任が教室に来たらしく教室が少し静かになっていた。

「そうだぞ竜次。諦めて補習を受けるだぞ」

「っげ、伊月先生。まだ赤点って決まってないだからそう言わないで下さいよ」

「まぁ、それもそうだな。じゃあホームルーム始めるから、みんな席に座れよ」

 そう言って今日のホームルームが始まった。


 午前の授業が終わり、昼休みになり屋上で弁当を食べてると竜次がやって来た。

「お、パン屋。今日は弁当なんだな」

「だからパン屋じゃねぇよ」

「へいへい、そう思っておくよ。そういえば、幹刃は今学校で流行ってる噂話知ってるか?」

「一応知らないが、どうせおまじないごとだろ?」

「まぁそうだが、今回のはちょっと変わっているんだよ」

「なんだ?なんでも願いが叶うのか?」

「限定だがそうなんだよ!」

「なんか言っていることが矛盾してるが、頭大丈夫か?」

「まぁ確かに矛盾してるようなこと言ってるけど、でもこれちゃんと叶うんだよ!夢の中で!!」

「なんだ夢の中か…」

「なんだよ!疑ってるのかよ」

「ぶっちゃけ、信じれないな…」

「じゃあ、幹刃もやってみろよ。絶対かなうから!」

「まぁやるやらない関係なく手順教えてくれよ」

「なんだよ、やる気満々じゃねーかよ。

 それじゃあ手順を教えるぞ。

 旧校舎の2階の視聴覚室の教卓に、願いを書いた紙を折り鶴にして、引き出しに入れるんだ。それで後は、その教卓に入れた日付に寝るだけだ。」

「随分と簡単なおまじないだなぁ」

「意外とそうじゃないんだなぁ…。噂が流行りだして1週間くらいで先生達が旧校舎付近で見廻りし始めたんだよ…」

「なるほどな。で、今日は見廻りが始まってから何週間だ?」

「今日で2週間目だが?もしかしてお前行くのか?」

「あぁ、そのくらいなら警戒が薄いとこが出てくるからな」

「そうか、まぁうまくやれよ」

「あぁ、わかったよ。そういえば竜次、俺にこんだけ進めるんだから、お前やってきたんだよな?」

「あぁ、やってきたぜ。金持ちになって豪遊生活を満喫してきたぜ」

「そ、そうか…それじゃあ俺は先に戻ってるぜ」

 そう言って騒がしくなった竜次をおいて腰を上げ屋上を後にする。


 ホームルームが終わり、無事に放課後までに折り終えた折り鶴を持って教室を出る。

 幸運なことに今日は職員会議らしく隠れなくてもスムーズに旧校舎までこれた。

 木造建ての旧校舎に入れば、肌寒く感じる中軋む階段を登りながら、目的である3階の視聴覚室に向かう。

 視聴覚室に入ると、古びた机と埃を被った椅子が規則良く並んでいた。

 一際大きな机の教卓の中を覗くと、疎らに折り鶴が置いてあった。その中に作った折り鶴を置いて、教室を出ようと扉に手を掛けるがビクともしない。

「まぁ、そう慌てなくてもいいじゃないか」

「だ、誰だ!」

 そう言って振り返ると、教室の後ろの窓が開いており、その隣にうちの学校章を付いた女生徒が立っていた。

「私の名前は、夜見よみ 史織しおりだ。よろしく幹刃君」

「俺は名乗った覚えも無ければ、ついさっきまで貴女に名乗られるまで貴女を知らなかったが?」

「それは君が思っている以上に君のことは噂になっているからなのと、会うのは初対面だからだよ。さてこれで質問に納得したかな?幹刃君」

「一応納得したが、夜見さんは俺になんか用でもあるのか?」

「あぁ。夜見さんなんてよそよそしいのは悲しいなぁ。史織ちゃんって呼んでいいんだよ、幹刃君」

「…史織さんは何か俺に用があるのかよ」

「まぁ、それだけ譲歩してくれたなら私は嬉しいよ」

「一体、誰目線で何言っているんだ…」

「まぁ、冗談はこれくらいにして。幹刃君、今流行ってる呪いしたでしょ」

「えぇ、今さっき折り鶴をそこの教卓に入れましたよ」

「それだけなら、いいんだけど。じゃあ忠告ね、居心地良すぎて向こうに居着かないようにね」

「待ってくれ!それってどういう…」

「じゃあ、よき夢を」

 そう言って彼女は視聴覚室から出て行き、俺も扉を開けて廊下に出てみるが誰もいない廊下を夕陽が照らしてるだけだった。

 旧校舎を出ると、下校時間まであと4分と迫っていた。調べたいことがあったが、校舎前の門が閉まる前に家路についた。


 家に着き、買ってきた冷えた弁当を食べ、熱湯のようなシャワーを浴びて、静かな場所で勉強をする日課が終わると、今日したことに期待を持ちながら意識を落としていく。


 目が醒めると、そこは見渡す限り白い空間だった。

「こんな願いは久しぶりだよ。屋木やぎ幹刃君」

 そう言って何もないとこから出てきたのは、緑の眼をした夜見史織だった。

「ここは、どこになるんだ?知らない誰かさん」

「なんだ、驚かないのか。ここはどこで目の前にいるのはナニカ?と」

「大方ここは夢の中で、目の前にいるのはこの現象を起こした神みたいな存在ってとこだろ?」

「おぉ、そこまでわかりながら来たのは君で五人目だね。しかし惜しかったね。僕は神みたい、じゃなくて、神なんだよね」

「それは、また大物が来たなぁ」

「そんなに、位の高い神じゃあないんだよ。付喪神とか妖怪と言った方がわかりやすいかな?」

「で、その妖怪?がなんでこんなことをしてるんだ?」

「まぁ言って仕舞えば信仰を集めるためかな」

「存在でも、消えかかったのか?」

「君は察しが良すぎるんじゃないのか…。まぁ、そうなんだよ。位が低いと知ってるか知らないかだけで存在の有無がはっきりしてくるからね」

「じゃあ今は、結構出てくるのが厳しい状態ってことか」

「そうだね、力無き今こうやって何も書かれてない夢にくるのは辛いから、今度はきちんと書いたのと交換して欲しいね。ではそろそろ時間のようだ」

 そう言うと空間全体が輝き始めた。

「じゃあ、今度からは書くようにするかもな」

「僕的には、そうしてくれると会わせたい人達とも合わせやすいから助かるんだけどね。じゃあ、また夢の中で世界を見よう」

 そう言うとこの白い・・・から意識がなくなっていった。


 目がさめると、そこはちゃんと自室だった。

 しかし、机の上には寝る前にあるはずのない折り鶴が置いてあった。

 気になって解体してみると、白紙・・に戻った。

 そして、いつものように身支度をして朝飯のメロンパンを手に取り家を出る。


 ホームルーム6分前に、学校に着くといつものように竜次が俺に話しかけて来た。

「おはよう、パン…幹刃」

「お前、今言いかけただろ」

「ま、まぁ言い切ってないだけいいだろ!」

「まぁ、努力は認めるがパンに手を伸ばすな」

「こらこら、そこホームルーム始めるからさっさと席に戻る」

 そういうと、いつも通り先生からの連絡があったが少し気になることがあった。

「あー、このクラスは大丈夫かと思うが、最近学校休むやつが増えてるから気を付けろー」


 特に目立ったこともなく、今日の授業が終わり放課後となった。

「幹刃ー、ゲーセン行こうぜ」

「今日は、ちょっと調べ物があるからまだ学校出ないぞ」

「ちぇ、付き合い悪いな。それじゃあ、俺は大人しく家に帰って寝るわ」

「授業で結構寝てたのにまだ寝るのかよ…」

「寝る子は育つって言うだろ。ま、じゃーな!」

「それは違うぞー」

 そう言って風のように去って行った…


 調べ物をする為に、図書室に来てみたが放課後ということもあってか、人がほとんどいない。

「妖怪…オカルト… やっぱり本で探すのは無理があるかな…」

「そんなことはないよ、幹刃君」

「今度はいつからいたんだよ、史織さん」

「勿論、図書室に入るのが見えた時からだよ」

「殆ど最初からじゃねーか!」

「こらこら、図書室なんだからそんなに声を出すと他に迷惑になるよ」

「あっ…」

「まぁ、迷惑に思うほど人はいないけどね」

「…で、なんか用でもあるのか?」

「君の探し物にちょっと聞き覚えのある単語があったからね」

「それで、手伝ってくれるのか?」

「まぁ、ヒントになりそうな場所に案内してあげるよ」

 そう言って、俺の手首を掴んで図書室から出て行く。


 そして連れてこられたのは、校舎端の資料室だった。

「なんで、こんなところに?」

「だってここ、私の部室だからね」

「史織さん、部活入ってたんだな」

「一応ここ、オカルト研究部の部長なんだけどなぁ…」

「オカルト…ってことはもしかしたらここにそういう本があるのか?」

「もしかしなくても、結構あるよ、ささ入って入ってくれたまえ」

 そう言われて教室に入ると、左右に天井まである本棚と、長机に7人分のパイプ椅子があった。

「で、幹刃君が探してたのは妖怪関係の本だね。ちょっと探すからそこにかけて待っててくれないかい?」

 座って待ってる時に、チラリと本棚に目をやると悪魔やら、黒魔術やらと、少し物騒な単語が見えた…

「たぶんこの本の中に知りたいことが書いてあるはずだよ」

 そう言って持って来たのは少し古びた雰囲気のする本だった。

「持ってくる前に聞けばよかったかもだが、これに夢を操る妖怪って載ってるか?」

「あー載ってるよ。この枕返しっていう妖怪だね」

 そう言って開いたページには、枕を持とうとする子供みたい絵が描いてあった。

「この妖怪は枕をひっくり返したり、体の向きを変えたりする妖怪だね、そんなに害はなさそうな妖怪なんだけどね。言い伝えの中には、人が死んじゃった話もあるんだよね」

「そうなのか… それで他には夢を操る妖怪はいないのか?」

「他にも夢に関係する妖怪はいるけど、操るに関しては私が知ってる中では枕返しだけだねぇ」

「そっか、教えてくれてありがとな」

「そんな大したことはしてないけど、そう言ってくれると嬉しいよ。でも、まださん付けなのは史織ちゃん悲しいなぁ」

「あー、わかったよ 史織。俺からの譲歩はここまでな」

「わかったよ、幹刃君。あ、もうこんな時間だから私は先に帰るとしよう」

「あぁ、気を付けてな」

「幹刃君も色々と気を付けるんだよ」

 そう言って教室から出て行くが、少しあの夢が気になり旧校舎に目を移すが、今日はもう行く気になれず学校を後にした。

 家に入った途端急激に睡魔に襲われ、ベットに倒れこんだ。


 目が醒めると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「もー、幹刃!もう八時よー、早く起きなさい」

「まぁ、母さん。幹刃も眠いんだから」

「お父さんはいつも甘いんだから。もう」

「なんで、父さん…母さん…」

「もう何寝ぼけてるの、さっさと朝ごはん食べて学校行って来なさい」

「まぁまぁ、母さん。そんな声出さなくてもいいよ」

「だって九年前に強盗で…」

「何、馬鹿なこと言ってるの」

「そうだぞ、幹刃」

「「ソレトモイッショニキタカッタノ?」」

 そういって俺の首を絞め始めた。

「サミシカッタノネ、ゴメンネ」

「デモ、コレカラハミンナイッショダナ」

「「サァ、モウダイジョウブダヨ」」

 ゴキリと音がして意識が途絶えていった。


 目がさめると、窓から朝日が差し込み、下の階から声はちゃんと聞こえない。

 首を鏡で確認すると、少し手の形をしたあざが見えたが、シャツの襟で誤魔化しながら身支度を済ませ家を出る。


 学校に行くと、なんとなく眠そうな顔が多く見える。

 先生が教室に入って来てホームルームが始まったが教室の机は数席座られていなかった。

「あー見ての通りだが、体調不良が増えて来てるので皆にも気を付けてほしい」

 そうしてホームルームが終わり教室を出て行く先生を呼び止め話しかける。

「伊月先生、少しいいですか?」

「あー幹刃か、珍しいな。何か聞きたいことでもあるのか?」

「はい、この学校に夜見史織って言う生徒はいますか?」

「夜見ねぇ。あーいるけど、あいつは8日前に事故してまだ入院中だぞ」

「そうですか、ありがとうございます」

「あぁ、幹刃も体調には気を付けろよ。それと、そろそろ旧校舎の解体が決まったから、また行って面倒ごとなんて起こすなよ」

「先生、なんで見てたんですか?」

「あー、用事で少し外に居たからな。まぁ他の先生言ってないから安心しろよ」

 そう言って伊月先生は職員室に歩いて行った。

 教室に戻る際に、ふと壁に目をやると数点の掲示物があり、その中にはあのが書いている新聞部の新聞があったがチャイムがなり教室へ急いだ。


 なんとか遅刻の扱いを逃れ、無事に午前の授業が終わり、すぐに放送委員が使っている放送準備室へと向かった。

 準備室に入ってみると、原稿が乱雑に置いており、その奥の席でパソコンに向き合っている、放送委員長で新聞部部長の伝福でんふく 言人げんとがいた。

「おや、屋木幹刃が、こんなところになんの用かな」

「俺はそんなに認知度が高いのか…」

「あぁ、そうだな。入学当初から毎回首位をとっていれば、知らないやつはあまりいないだろうな。さらに、それを掲載している新聞を発行しているのは我々、新聞部だからな」

「まぁ、それはいいとして頼みがあって来た」

「それはいいが、ちゃんと対価はあるんだろうな」

「旧校舎の取り壊しスクープ なんてどうだ?」

「おぉ、それでいいだろう。で、その頼みってのはなんだ?」

「今掲示してあるおまじないのコーナーを差し替えてほしい」

「なるほど、旧校舎が壊されるのにあの記事があるのは少し都合が悪いんだな」

「まぁ、そう言うことだ。それと、出来れば今日中に今掲示している物を回収か、スクープの号外を頼みたい」

「まぁ、速い方がいいしな。よし、今から取り掛かろう」

 そう言って言人は、隣の防音室に行き放送スイッチを押した。

『生徒に連絡です。新聞部、文化委員長は、至急放送準備室に来てください』

 スイッチを切り部屋から出て来た。

「さぁ、忙しくなるからもう要件が無ければ退出願いたいね」

「それじゃあ頼むよ、言人」

 そう言って準備室から出て行き、走ってくる生徒達とすれ違って行く。


 午後の授業が終わり、帰り支度をしようとした時に放送が流れた。

『全校生徒に連絡です、新聞部はスクープを掴み、各掲示板に号外を貼りました。是非、ご覧ください』

 放送が終わり、教室に居る人数が少なくなると、紙に願いを書き折り鶴にして旧校舎の視聴覚室に向かう。

 今回は少し注意したかいがあったのか、人影は見えず視聴覚室までこれた。

 教卓の中を覗くと、前回より何羽か増えてる気がしたが、そこに折り鶴を置き帰ろうと扉に手をかけるが、扉は動かなかった。

「気づいたんだね、幹刃君」

「あぁ、ここは夢の世界なんだろ。史織」

「そうだよ、だけど枕返しは私のために…」

「まぁ、そうだろうな。自分の存在を掘り起こしてくれた人物の為にやってるんだと思うが、あいつはやり過ぎたんだから、それを償わせないといけないんだ」

「それって退治するかい?」

「普通の高校生にそんなことはできないから、そんな心配せずに自分の身体に戻って寝とけ」

「わかったよ、その代わりに明日私の病室に来るんだよ」

 そう言って小さい紙を渡して消えていった。

 そして、旧校舎を出て号外と新聞の回収を確認した後学校を出て行く。

 家に帰り、日課を済ませれば寝室に向かい、最後の小細工をしてベットで目を閉じる。


「随分と面倒なことをしてくれたね」

 目を開ければそこは旧校舎の視聴覚室に小学生くらいの子供がいた。

「でも、もういいよ。あの噂のお陰で僕の力は戻ってきたんだから」

「それは無いな、お前のあの噂は俺が潰したからな。それにあの噂にお前の名前入ってなかっただろ」

「名前がなくともアレをした人間が増えていればいいんだよ!」

「それでも、この俺の夢は杜撰ずさんじゃないのか?」

 周りをみると、視聴覚室の外が白くなり風景が消えて行く。

「な、なぜ!力はあったはずなのに!!」

「確かに力はあったが、お前はその力を使い過ぎてたんだよ。昨日、広範囲かつ強制的に夢の世界に連れてっただろ、それで思ったように信仰が得られなかったんだろう」

「でも、昨日まではこんなことなかったぞ!」

「だから、今日でつけが回ってきたんだよ。一人の夢を一人の信仰で賄ってただろうが、その期間が長過ぎたのと昨日の無茶が響いたんだよ」

「こうなったら、お前だけでもこの夢に一生見続けろ」

 そう言うと廊下の扉から両親が出てきた。

「昨日のことを見せもらったぞ!お前に親を手にかけることが出来るかな」

「だから、お前はもうこの夢は操れないんだよ。奪うことも出来なければ、与えることもな」

 そう言うと、両親だった者が消えて行く。

「な、なぜだぁ!!ここは僕の世界だぞ!」

「ここはお前の世界じゃなくて夢見せ夢を叶える世界だろ、枕返し」

「違う、ちがう、チガウウゥ!!」

「だから、もう諦めて謝るんだ。枕返し」

 そう言うと、枕返しは喚くのをやめてポカンとしてた。

「お前は、僕を退治しないのか?」

「いつ誰が、お前を退治するんだよ。と言うか俺に退治出来ると思っているのか?」

 その瞬間、視聴覚室が崩れ落ち最初に会った白い空間になった。

「そうか、そうだったのか。アレとは違うのか」

「アレってなんだよ」

「聞いてもたぶん、君には関係から言わないよ。そして謝るよ、君の行動とその想いに敬意を評して。

 すまなかった、そして気付かせてくれてありがとう」

「それで許すけど、まだ俺の要求はある」

「僕に出来ることならなんでもするよ、僕はそれだけのことをしたんだから」

「今お前の夢を見てる人の解放と、活動の制限だ」

「最初のは、わかっていたけど後者のはちょっと場所によっては飲めない要求だけど」

「なんでもやるって言ったんだから有無は言わせないぞ。場所は、病院で子供達に夢を見せて生きる希望になれ」

「これは、これは。大変なことを約束してしまったなぁ」

「なんだ?嫌か?」

「いや、嬉しいよ。復活してからも最初にしてたことだからね。じゃあそろそろ君も元の世界へ送ろうか」

「いや、俺は自力で戻るわ。それに残ってる力は病院の新生活で使いな」

 そう言って、胸ポケットの中に入れていたカッターナイフを出す。

「そうか、じゃあ何かあれば折り鶴を折ってくれれば力にはなろう。弱い妖怪だが頼ってくれよ。幹刃君」

「あぁ、頼りにしてるぜ。枕返し、いや折り神。だって折り願えば見せてくれるんだろう?神様・・

「折り神…いいね。僕は折り神、願いを見せ夢を与える。それじゃ屋木幹刃、君にもよき夢と廻り巡る平穏があることを祈ろう」

「ありがとなっと」

 そう言ってカッターナイフを胸に突き刺す。


 目が醒めると、傷はなく見慣れた自室だった。

 机の上を見ると置いていた折り鶴が無くなっていて、代わりに紙飛行機が置いてあり、広げて見ると、折り神が来た。

「ほら、もう7時だぞ、さっさと出かける支度をしろよ。史織が待ってるぞ」

「あぁ、わかったよ」

 これからは俺の寝起きは騒がしくなるのかもしれない。


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