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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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ジョーとの出会い

視点:1人称、サイリア視点なのでご注意を。

 当時、私は『魔女の森』に住んでいて、ソコで生活していた時の話しだ。

 

 魔女の森といっても森林の中にそのままあるわけでは無い。森の周囲を切り開き、家が立ち並び、畑があり、川もあり、家畜を飼って、薬草畑で栽培した物で魔女薬を作り、外部と交易して暮らしていた。

 森での暮らしはそれなりに厳しく掟もあったが苦労らしい苦労も無かった。戦争もなく穏やかな日々だと思えた。

 当時はだか……。

 外に出てみたら町の発展に驚き、外の厳しさに驚き、生活の違いに驚き、戦争の野蛮さに驚き、見る者すべてに驚いて自分はなんて矮小な存在で田舎者だと思ったが“森での生活”ではそこまで何も感じないが一番の発見は甘いモノの豊かさだった。


 語れば語るほど恥ずかしく、のたうち回るほどの失敗を重ねて現在の私があるが――その何も知らない小娘の時にジョーと出会った。

 

 私が初めて彼に出会ったのは世話になっている叔母さんの家の手伝いをしていた時だ。あの日はちょうど夕方近くで夜ごはんの準備に外に買い物にいっていた。


「サイリアァァァ――、変な人があんたを探しているよ。男、おとこよ」

 クロエって言う名の私の魔女の森での友達が飛んできて知らせてくれると、その後を少し長い黒髪を後ろで束ねた見た事もない顔で騎士のような出で立ち、そして背中に身の丈近い大剣を背負った男性が現れてノシノシとこっちに歩いてくるのを見ていた。


 初めて見た人だった。それ以上に黒い髪の毛なんて初めて見た。怖いかも――そんな気持ちもあったけど、それ以上に村に“外部の人”が入り込むこと、これこそが異常事態な事だ。なぜなら魔女の森は周囲に幾つもの結界が張り巡らされ、普通の人には近寄る事さえ出来ない強力なモノだと教わっていたからだ。

 その為に馴染みの商人ですら奥地に来る事も出来ない事など住民にとって周知の事実。つまりここに部外者がいる事自体おかしな事になる。


 そんな訳で私は震えていた。


 なに、何用なの? えっ! 男、大人かしら? 何、誰? あった事も無い……。


 など――と、いま思えばかなり狼狽していていたと思う。


 その男の人は暫く無言で私を見た。綺麗な黒い瞳で。

 そして――「あんたが『サイリア』か? “ミリア”の娘の?」


 そう訊いてきた。芯の入ったいい声で私の中に響いてきた。

 そしてその男の人が言った単語の中に私の母親の名前である『ミリア』という言葉を言った事で私は我にかえって頷いた。


「そうか、“コレ”を渡す用に頼まれた……」

 と、言って男の人は腰鞄から小さい布袋を取り出して私に差し出した。


「エッ、エッ、なに? お母さんから……」

 自分の持っている荷物を置き、その男の人は差し出したなめし皮の布袋を恐る恐る受け取る。

 そこで色々と疑問が出てきた。この男の人、誰だ?――と、素朴な疑問がやっと気持ちに追いついて来て……。ソコで――「あの、名前はなんて言うんですか? お母さんの友達ですか?」とそんな質問をしたと思う。


 すると――男の人は一瞬目を見開いて驚き、頭を()くと、暫くしてから答えた。


「あ~~~、そうだ。オレの名は『ジョー=カバライ』。あんたの母親とは、……“知り合い”みたいなモンだ」


 その時が私のジョーの初めての紹介だった。

 当時、まだ年下の私は「ジョーさん」って呼んでいた。いま思えば忘れたい過去だが当時は目上の人だったから仕方が無い。


「そうですか、感謝します。それでジョーさん、用件はそれだけですか?」


「あぁ、中身を見れば分かると思う……」


 ジョーにそう言われ私は皮袋の中を開けた。

 中身は『手紙』と『見覚えのあるネックレス』、そしてジャラジャラと音がした『小さめの布袋』が入っていた。


 私は再度顔を上げると――そこでジョーの悲しそうな表情を見た。

 そう見えた。確証は無かったけど、夕日が沈む逆光で殆ど顔も見れなかったけど――どことなく沈んでいて、それでいて深く、深く、深淵のような黒いモノが(にじ)み出ているように感じた。


 それは――1つの凶兆を告げていると思った。


 いい報告で無いと思った。

 だって、4年ぶりに手紙が届いたのだから……。

 そして、こんな風に急に知らない彼が現れたのだから。


「これは、なんで……手紙を……」

 私は自分で見たく無かったから事情を知っていそうなジョーに訊いた。

 それは卑怯な事だと思ったけど――答えを知るのが怖かったんだと思う。

 訊かなきゃいいのに、本当に当時の私はどうかしていた。

 (ジョー)は本当に一瞬、()を開けて答えてくれた。


「…………あんたの母親が亡くなった。それは……その前に届けて欲しいと頼まれたんだ」

 

 彼は言う。私の聴きたく無い真実を。


「なんで…………」


 ひと言、言葉を発したら急に胸が熱くなって、顔が熱くなって、一気に視界がぼやけた。

「なぁんでぇぇぇぇぇぇ……」

 そういいながらボロボロと泣いてしまった。

 涙が止まらない。

 感情そのモノが決壊したのだと思う。


 貰った布袋すら落とすと私は泣き続けた。


[ワァ――、ワァ――!!]と大きな声だったと思う。それ位、何も考えず泣いた。

 そんな私にクロエが飛んで入ってきて、村の友達も来てくれた。

 私を心配する声など耳に入らず、何かクロエ達がジョーに話しかけていたけれどそれすら耳に入って来なかった。


 ――そうしてクロエに手を引かれ叔母さんがいる自宅に戻っていた。


 心配してくれる『キティーナ叔母さん』。母の遠縁で私の世話を見てくれた人だ。優しい人で自分の娘のように私を育ててくれた。昔から感謝しかない。

 叔母さんは私の頭を撫でて泣きやむまで待ってくれた。


 そうして時間が経つと外は真っ暗になっていた。


 段々と落ち着いてきて。やっと周りの景色が見えてきた頃、近くにジョーがくれた皮袋が置いてあるのを見つけた。


 私は叔母さんにお礼を言ってそこで中身を確認しようとして袋を開ける。

 もしかして、嘘だったかもしれないと思ったけど、入っていた中身は変わって無かった。

 手紙に手をつけずに初めにネックレスを持った。

 

「お母さんのだ……」

 それは何度も小さい頃に見た品物だった。間違いない。欲しくておねだりした物だ。


 次に確認したのは小さな皮袋だった。中身は何の事は無い“銀貨”が入っていただけだ。


 そして手紙だ――私は手に取ると中身を開いた。

 それはまぎれも無く母の字だった。


 お別れの言葉と手紙を託す内容、自分が死ぬ運命にある事、そうして優しい内容で私を(いさ)める事も書かれ、そして最後に『愛しています』と書かれていた。


 手紙を読んでまた泣いてしまった。


 母は他人の運命を見る事の出来る力の強い魔女だった。自分の運命が死ぬ事も分かっていたのだろうと手紙の内容から判断出来た。

『私は帝国に殺されるでしょうが誰も怨んではいけません。そういうモノなのです』と、ひどく達観した文書も書いてあった事から自分自身で死を受け入れていたのだと思う。


 母の行動は昔から謎だったと叔母さんも言っていたけど本当に謎だ。私を叔母さんに預ける時にすら突然だった。

 理由は言わない。そうして自ら全てを話さなくて、そのまま消えてしまった。


 その手紙を見て――お母さんが本当に亡くなった事を始めて実感した。


 それからの事は覚えていない。

 人生で一番悩んで、悩んで、考え、迷って、苦悶して。そして――ある1つの答えに至った。当時では精一杯でも大人になって考えれば浅はかで思慮も何も無い結論だったと思う。

 

 ――翌朝、朝早く出るとジョーがいた。こっちを見ると柵から立ち上がってこっちに歩み寄ってくる。改めて見ると私より2倍くらい大きいと錯覚するほどの戦士だと思った。


 私は直ぐに行動に出た。殆ど何も考えず。直感だった。


「お願いします。私を外の世界に連れてって下さい。お母さんが亡くなった真実を知りたいんです。お願いします。あなたはお母さんの知り合いですよね? どうか手伝ってください。おカネならここにあります。お願いします。会ってみたいんです、なんでお母さんが死んだのか知りたいんです。手伝って下さい」

 そんな突然のお願いだったと思う。何度も頭を下げて銀貨の入った小袋を差し出した。

 言ってから見上げるとジョーはどうしていいか分からない非常に悩ましい表情をしていた。

 あつかましいお願いだと分かっていた。

 どれ位、おカネがかかる事など当時は知らなかった。


「おい、このカネはあんたの母親のモンだ。ソレを渡すって事は“カタミ”を渡すってことだぞ。いいのか?」

 そう彼は訊いてきた。


「うん……いいんです。なんでお母さんが死んだのか知りたいんです」


「……そうか……仇討に出たいのか?」


「……違います。“真実”を知りたいだけ。本当にそれだけなんです。その人にあって話してみたいだけ……」

 私は必死に訴えた。それが考えた末の結論だったから。


「……聞いて……納得しなかったらどうする……?」

 ジョーはそう言ってきたけど、私はそこまで考えてもいない。


「…………わかりません」


「……外に出れば魔物だらけの世界で危険だ。危ないんだぞ」


「覚悟しています。強くなって……迷惑にはなりませんから……」

 そう言ったと思う。当時の私は“強い”“強く無い”で言えば“弱い”だ。戦闘経験もない只の小娘に過ぎない。どこからそんな自信があったのか不思議だが、それでも感情は抑えられなかった。


 そうしたら――震える手で差し出した皮袋が軽くなっていった。

「わかった……あんたの依頼を受けよう。契約騎士ってヤツだな……」

 と、笑って銀貨を受け取ってくれたのは――彼だけだと思った。


【おい、ジョー、何考えている!!】――と、急にどこかから声が聞こえ。まだ魔剣の存在を知らなかった私は凄く驚いたのを覚えている。

 

 それからは大忙しだった。叔母さんの説得。友達に別れを告げ、急いで旅支度を整えると直ぐに魔女の森を出て旅に出た。


 それが――4年ほど前の出来事だ。

 それから私はジョーと冒険者をやりながら旅にでる。それは、それは、酷く厳しい旅だった。

 厳しい訓練と修行をしながら色々と世界を見て回ったのだ。

 


書き方を変えてみました。

たまにはいいだろうと思います。

通常は訳もあり3人称で書く事が多いです。

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