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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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蠢く影

「オジュールさん、こっちに顔をお願いします」

「ギグメディス卿、今回も強かったですね。こちらに顔をむけてください」

「みなさ~ん、笑って下さい! ハイ、1枚!」

「いいですね~♪ もう1枚お願いします」


 30名程度の記者が周りを囲み、写映器(=写真)の撮影用のフラッシュがたかれ。激しい光が入賞者達を包む。

 ギルド発行の情報誌やブリューシュ王国直属の情報機関の機関紙にのるので、いい写真を取ろうと、どこの記者も必死だ。

 オジュールを含む5人はみなトロフィーを持って笑顔のまま撮影に臨んでいた。


 その内に書官や官吏達から、立ち椅子と台を渡され質問を受ける場を造られた。

 入賞者5人全員にマイクが渡され公開討論のような場だ。


「それでは質問です。まず、ギグメディス卿にお聞きしたい。今回は非常にレベルの高い武練会でした、特に終盤戦は新星と言うべきオジュールさんに並ばれましたがやはり焦りが出ましたか?」

 記者の1人が質問した。


「ええ、そうですね。始まる前に新しい挑戦者が出てくればいいと言いましたがラバロ卿やディック卿、ウゴール卿などのおなじみの上位者達が出てくると思いましたが。オジュール殿が出てきたのはまったくの予想外でした。焦る、焦らないで言えば正直な所かなり焦りましたよ。ハッハッハッ。しかしね、やはりそこは意地ですよ。それに冷静さもドレイク討伐には必要ですから。まぁね、やはり最後は冷静な者が勝つと言う事です。これはドレイク討伐にとって鉄則ですよ。ハッハッハッハッ!!」

 ギグメディスはマイクを手に持ち余裕の表情で傲慢さと虚栄心を交えながら質問に答えた。

 記者からは感嘆の吐息が漏れ、一斉に取材用紙に殴り書きをし始める。


「それでは私からオジュールさんに質問です。今回は惜しくも3位という結果でしたが、一時期は優勝を狙える位置にいました、その事について王都では非常に賑わいを見せていましたよ。それについてどう思われますか?」――他の記者が質問する。


「えぇ、そうですね……私としては3位という数字は上出来です。この順位は一時の運と流れというか波に乗った事に対しての結果だと(とら)えています。その事で武練会を盛り上げたなら嬉しく思います。ですが優勝するほどの力はウチの団には無かったと言う事です。やはり上位者の方々の層は厚かったと感じました。ギグメディス卿を始め、やはり最後は“力の差”というモノを感じる武練会でしたよ」

 オジュールは謙虚に答える。

 

 練習した通りに、貴族を持ち上げていた。『僕達の順位は偶々(たまたま)ですよ、偶然っす。やっぱ貴族のみなさんは強いなぁ~』という感じの(へりくだ)り、卑下した言葉を並べて“ご機嫌”をとっていた。

 記者達は一斉にオジュールの発言を用紙に書き始める。

 その間にオジュールはチラチラと記者の団の後ろを壇上から眺めていた。そこにはヒュールが仁王立ちをして『余計な事は言うな、練習したとおりの発言をしろ』とわかる位の気配が後ろのオーラがにじみ出て、オジュールに睨みをきかせていた。


「では、連続になってしまうんですが。オジュールさんは序盤までは2頭のドレイクを討伐されてその後で急激な躍進を見せています。初出場者は0頭でも珍しくないのですが、何かコツでも掴まれたのでしょうか?」


 記者の1人の質問に――「それは気になりますな」、「ええ、珍しいことだ」、「何かあったのか知りたいです」とウゴールやディック、ラバロから声がかかり、鋭い視線から好奇心溢れる視線がオジュールに送られる。


「えぇ、まぁ、たいしたことではないんですが、その……餌を変えましてね」


「餌ですか? オジュールさん、どのような?」


「そうですね。餌となる肉に塩をまぶし、丁寧に焦げ目のついた半熟肉を焼いて、いい具合に香りつけするんですよ……」


 オジュールの発言の後、記者団を始め一瞬間を開けて――笑いが起こった。


「あッははははははッッ!」

「おもしろいですね」

「傑作だ、ハハハハッ!」


 オジュールの発言は冗談のようにとられてしまった。一気に笑いが場内に拡散する。


(本当なんだけどな……)――というオジュールの思いとは裏腹に派手に笑い転げる貴族たち。


「なるほど、今度からドレイク討伐には一流の料理人(シェフ)を帯同させないといけないな。ハッハッハッハッ!!」

 ギグメディのその発言に再度笑いが起こる。



「まったく見事ですね。冒険者の高ランクであるオジュール殿はジョークも高ランクのようだ」


「ハハハッ、久しぶりに笑わせてもらいました。いや~面白い方だ!」


「やはり、上に立つ者は冗談を言わないといけませんからね。まったく素晴らしい」


 それぞれの貴族達がオジュールを褒める。

 あくまでもオジュールは真面目に回答したまでだが『ドレイクの味覚』など解るはずも無く。すべて冗談にとられてしまった。


「すいませ~ん、いい絵ですので1枚お願いしま~~す」

 記者がそう言うとフラッシュがバシャッ、バシャッっとたかれていく。


 こうして入賞者の会見は進んでいった。


***


 貴賓館での宴が催されている近くの王宮で。――


 ある男性2人組が台車に料理を並べ王宮の中を移動していた。

 銀の蓋と食器類そしてお菓子とパンが置かれ、台車にも白い布がかかり食事ですら豪華に着飾っていた。そして、身なりを整えた男性達は更に奥に進んでいく。


「あら、あなた達何をやっているの?」

 給仕服のようなメイド服を着た女性が廊下を進んでいた2人に話しかける。


「えぇ、王妃様に言われて王女様に食事を運ぶように(おお)せつかりました」

 笑顔で答える男性達。2人共、なぜか笑顔だった。

「そう、それならいいわ……急いで戻ってね」

 メイド服の女性はそのまま見送る。たいした警戒もしていない。それほどの今日は忙しい沢山の貴族のお客をお出迎えしなくてはならず王宮に勤めている者は全員――てんてこまいの右往左往、忙しさのあまり幻覚を見る者までいる。

 その女性も(あれ? いまの人達だれだったかしら?)と一瞬だけ思ったが給仕長に急いで片付けをするように言われ2,3歩移動した頃には、たいしたことじゃないと忘れてしまった。


 ――こうして目の細い細身の男性2人組は城内を進んでいく。


***


 城の一室でブリューシュ王国の王女が部屋の中に独りでいた。『ルシア・ダーリーン=ブリューシュ』という名の正真正銘の王女だった。歳は14歳でこれから大人の女性に変身していく途中であり美貌も磨かれていないが素質は十分に王妃譲りで十分将来が楽しみな女子であった。

 綺麗に生えそろった髪をだらしなくまとめてベッドに横になり足をバタバタと暇そうに動かしている。寝具の傍には本とぬいぐるみが置かれ、少しふくれっ面でそれらを眺めていた。


 ルシアは怒っているのだ。母親も父親も兄もこの時期になるとかまってくれない事に。

 稚児(ちご)の駄々と同じ思考だが、それでも今は愛されたい気持ちがまさってしまう。

 仕方の無い事とはいえ、やはり家族と過ごしたいルシアにとってドレイク討伐武練会はただ単につまらないモノだった。


「なによ、お母様も、お父様も……」

 可愛らしい声でそう言って不貞腐れ、近くにあった人形を部屋の中央に投げた。



オジュールの発言を笑った貴族の思考回路は作者も不明です。

貴族ジョークととらえて下さい。

あまり深く考えないようにお願いします。


物語もやっと4章の核心部分に移行します。ドレイク討伐はただの序章にすぎません。

引っ張りすぎると思いましたが、作者の感性で進んでいきます。それとこれから話は変化していきますのでご注意ください。

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