討伐の合間
オジュール達翼陽の団とその他の連合は3日目を迎えた。
晴天の中、朝からドレイクが餌にありつく為に降りてくる気配も無くそのまま昼過ぎになり食事終えていた。
ジョーとサイリアは今日も翼陽の団で出されたご飯を食べてその後の休憩をとっている。
「いやー食べた。今回も美味かったなぁ~」
ジョーはそう言いながら“キゴの葉と枝”を口に挟んでモグモグとしていた。
キゴの葉には歯を守る成分が入っている為だ。冒険者の多くは食事の後で歯磨きの代わりする。匂いも良く苦く無い、その為に広く普及しているキゴの葉は食事後の定番と言っていい。
ジョー達も例外に漏れずに皆口に含んでいた。
やはり虫歯には成りたくないからだ。
ジョーはそのまま蛇腹刀を持ちあげて座りながら丹念に布で磨いていた。
そうしてドレイクの来ない合間をそれぞれの時間で過ごしている。
「そうね、でもいいのかな、こうやって匂いのつく食事をしていて」
サイリアは満足そうだが1つ懸念もあった。オジュール達が出す食事は焼き肉や鍋モノで周囲に匂いが充満していた。煙などが焚火と一緒に上がるのだ。
「いいんじゃないか? オジュール達も言ってたぞ、『美味い飯を喰わないとやる気が起きない』って。 それにやっぱ匂いを気にするより美味い飯は食いたいし同感だな」
「でもやっぱ魔物は警戒するでしょ? 逃げるじゃない!」
「正解だけど、それでいいんだってよ。まぁ、団としての方針じゃないのか? 携帯食料ばっかりだと味気ないんだろ?」
「それも、そうかもね。ウチらもそうする?」
「あぁ、いいかもな」
【できれば毎回肉を食べたいもんだ、竜の肉をな】
スネークがジョーに刀身を拭かれながらそうお願いをする。
「スネーク、言っておくが太るぞ。脂が身体につく」
【安心しろ、太る事は無い。剣だからな。飯はいくら食べても大丈夫だ】
スネークの発言にサイリアはそっと自分のお腹を見る。
そうして、無言で腹の肉をつまんでいた。
「大変そうだな……」
ジョーはそう声をかけた。
すると、サイリアはキッと睨む。
「おいおい、それは俺のせいでは無いぞ、自分のせいだからね」
優しく諭すように笑顔で話した。王都での甘いモノ巡り、そして毎日の美味い食事。それがサイリアの中で蓄えられつつあった。
そうしていると――ジョー達の元に女性が集まる翼陽の団のエフレスカを始め4名ほどの冒険者と“双璧”のミレーダやリーン。などの女性陣声をかけてきた。
「サイリア、私達これから『水浴び』に行こうと思うんですけど一緒にどうかしら?」
そうエフレスカはお誘いをしてくる。
流石に3日目となると身体も汚れてくる。沢はあるので水で拭いていたりしたのだが本格的に水浴びしないかという話だった。
「ええ、いきます」
さきほどまでの悲しい表情から一変サイリアは2つ返事で了承した。
人見知りの部分があるのだが、翼陽の団と双璧とは何度か仕事も共にしている仲だ。顔見知り程度の関係はある。
「じゃあ、あそこで待っているから。準備したら来てね」
そういって、エフレスカ達は去っていった。
早速、立ち上がって荷物を取りに行こうとする。
「じゃあ、ジョー、ちょっと水浴びに行ってくるから……」
「ああ、行ってこい」
「……覗くなよ」
「安心しろ、俺は紳士を目指している男だ」
そう言ってサイリアは立ち去ろうとする――がすぐに戻ってきた。
「ジョー、“スネーク”を貸して」
「なんだよ、見張り役か?」
するとサイリアは無言で頷く。さあ、差し出せと右手を出してきた。
「いいけど重いぞ、先に準備してろよ。もうすぐ手入れ終わるから」
「わかった、エフレスカ達に渡しておいてね……」
そう言ってサイリアは今度は本当に去っていった。
(あ~ぁ、本当な覗きたい本能はありますけど。占いの結果が俺をとめるんだよねぇ~)
残念そうな顔で1つ溜息を吐くと、布で磨くのを止める。そして横においた革帯とそれに付属する蛇腹刀専用の鞘を取り出した。
鞘は刀身全てを入れるタイプのモノではない。刃を隠すようになめし皮を固くして伸ばし刃先数センチが木の鞘のように入れられる、後は手元を引っかけ固定するタイプだ。
刀身が長い為に出来るだけ取り出し易くいようになっていた。
ジョーはスネークを鞘に納め立ち上がると仕方が無しにエフレスカ達に“相棒”を預けに行く。
そうして――女性陣は林の奥にある坂道を下っていく。
その時――今まで大人しくしていたラリーとオジュールが静かに立ち上がった。
「へへッ、来ちまったぜ、この時がよぉ~」
「ついに始まるのか。新しい戦いが! こいつは聖戦だ!」
何気にかっこいい事を言っているが目的は1つ『水浴びの覗き』をしたいと言っている。
しかし、眼から放たれるオーラはマジだった。
彼らはこの時を虎視眈々と狙っていた。
「どうだ、おめぇーら、この聖戦に参加するヤツはいねぇか?」
オジュールは悪役も軽くこなす役者のような台詞を吐いた。
辺りを睨んで盗賊の“お頭”が吐く台詞を続ける。
「おいおい、腰ぬけばかりか。オジュールのアニキがそう言ってんだぞ」
ラリーも“子分A”という配役の台詞を言った。
「わかったぜぇ。俺も行く」
そういってガルンが手を上げた。――この瞬間“子分B役”の配置がきまる。
「おい、兄ちゃん、ヤバいって。リーンやミレーダ姉さんもいるんだぜ。怒られるって」
「ガイン、言うな。こういうのは勢いが大事なんだ。俺ら冒険者は危険を潜らねぇといけねぇ時もあんだよ。せっかくの機会だやるっきゃねぇ」
「兄ちゃん、それってかっこいい事いってるけど覗きたいだけだよね」
ガインはあきれ顔で自分の血を分けた兄を見つけていた。
「お、おれも行く!」
ジュローが立ち上がる。
顔を真っ赤にして鼻が膨らんでいた。鼻息も荒く闘牛のようだ。
「おい、ジュローお前もか!?」
ガインはその後絶句してしまった。
「へへッ、みんないい覚悟だ。さすが選ばれた勇者ってヤツだな……どうだ、他にいねぇのか? 俺達と共に伝説の『秘宝郷』を目指すヤツは!」
オジュールはそう言って辺りを見渡す。
ヒュールは静かに鋼鉄縄の点検を数人の団員と行って無視していた。
ミック、グレーも自分の武器の手入れを無言でしている。
ジョーは木の根元に腰かけ寝る体勢をとり、他の翼陽の団の団員はチラチラと見ているだけだった。
「チッ、腰ぬけ共が、いきましょう、お頭。俺らだけで……」
ラリーは小悪党Aのような台詞をはいて蔑んだ目で辺りを見渡した。
「いくぞ、お前ら、勇敢な者に褒美は与えられるんだ。そいつを教えてやれ」
オジュールの合図と共に子分Aのラリー、子分Bのガルン、子分Cのジュローはやる気になっていた。
そうして――装備を外し勇者達は桃源郷を目指す。
はっきり言います。おバカ回です。
ベターOFベター回です。
お色気回ともいいます。「水浴び」と「のぞき」は太古の昔から切っても切れない仲です。
まぁ、そんなわけで続きもやります。




