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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第1章;とある魔剣士&とある魔術士の冒険
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特別依頼の真実

2016 8/21 改訂

ジョー達は現在、村長宅前まで来ていた。


【ジョー、私は黙って休んでいる、いちいち面倒だからな】

「ああ、解かった、何があっても声だけは出すなよ」――ジョーは忠告する。


スネークは初対面の人には自分の詳細は明かさないでいた、生命の宿る武器は珍しい存在だからだ。―― 説明など、めんどくさい等の弊害が出る為だ。


馬車を近くの木に止めて、2人は村長宅まで向かっていく、村長の家は他の家より少し広く庭先も大きく感じていた。


[ドンドン]――木製のドアを叩く、ジョーは暫く待つと中から声が聞こえてくる。

「はい、どちら様ですか?」

「依頼を受けた、冒険者ギルドの者ですが」

「はい、はい、どうぞ」そう言うとドアが開いた。


中から中年の女性がドアを開けて待っていた、どこにでもいる、村人の女性だった、顔には小皺が目立ち始め、女性の年齢を物語っていたが、独特の品があり、少しふっくらとした印象が残る人だった。


「これはどうも、依頼を受けて下さりありがとうございます」

そう言って頭を下げる女性、少し謙遜しながらジョー達は中へと入り、居間へ通された中は普通の邸宅と言った所だった、木の長机と椅子、木製の棚に花瓶に花が差してある、複数の壺らしきモノが置いてあった。


そこに一人の中年の男性が立っていた、背は160㎝位だろうか、先程の女性より少し老けて見えるが、丁寧そうでお人好しのいかにもな人物がそこにいた。


「これは、ようこそお越しくださいました、モモガ村の村長をしています、シバ=モモガといいます、…お名前を窺ってもよろしいですか?」

シバは頭を丁寧に下げて、ジョー達を見つめる。


「俺の名は、ジョー=カバライと言います、ジョーでいいですよ、シバ村長。」

そういってお辞儀をする。

「わ、わたしの名前は、…えっと、サイリアです、よろしくお願いします。」

そう、緊張しながら九十度のお辞儀をするサイリアだった。


(お前、さっきのリューベルの時は平気だったろ、なぜ急に緊張している、“村長”だからなのか、リューベルは“村長の息子”だから、地位によって緊張するのか、可哀想だろリューベルが、せっかく『わし』と一人称でいって、偉く見えるように涙ぐましくも努力しているヤツに)

ジョーはサイリアの人見知りスキルに突っ込みたくなるが、依頼人の前なので我慢した。


「ははは! 私を呼ぶ時はシバでいいですよ、そんなに緊張する偉い人物ではないです、小さな村の村長ですから」

少し自虐的な事を言いながら、笑ってくるシバだった。


そう言っていると、先程の女性が紅茶のセットを持ってくる、机にティーカップを置いて紅茶を注ぐ、準備をしていた。

「ご紹介が遅れました、家内のセレスです」

シバはニッコリ笑いながらセレスを紹介した、彼女もジョー達に会釈をしながら、紅茶の準備を進めている、その関係から、非常にン仲の良い夫婦である事がわかる雰囲気だった。

「ジョー=カバライと言います、先程は挨拶もせず失礼しました」

「サイリア=ヨキです、よろしくお願いします」

「はい、はい、セレスと言います、丁寧にありがとうございます」そう言って彼女は頭を下げる。

そして、「どうぞ」そう言って、お茶をジョー達に振る舞った。


準備が整った所で、シバ達はそのまま椅子に座り、向かい合いながら、依頼の内容を詳しく聞く事にした。

彼 は机に手を置いた、その手はタコや皺でとても使い込まれている事が誰にでもわかった。

(村長でも苦労している村か小さいから余裕が無いんだろう)――ジョーはそう思う。


「では、依頼書に書いてあったのですが、最近このモモガ村に魔物が多発して来まして、その原因を突き止めて欲しいのです。……始めは小鬼(ゴブリン)の集団が目立ち始めました、次は人食植物花(マンイーターフラワー)の群れは森の奥から、そして、獣鬼(トロール)上位小鬼(ボブゴブリン)の個体もちらほら出始めました。

それが頻繁するようになりまして、その原因の調査を依頼したいのです。」

シバは真剣な表情でジョー達を見つめた、彼は村の村長として必至なのだろう。


「お話は解かりました、こちらも情報が少なく、あやふやな点が多かったので確認したいのですが、国や領主に相談さえたのですか?」

ジョーはシバに確認をとる意味で、そう言った、本来、村の危機では、先ず領主所属の騎士団などが話を聞くのが常套だからだ。


「はい、領主様に陳情したんですが、良い返事を貰えなかったのです『済まんが、騎士団は他の地方の警備で居ないので暫く待ってほしい』と言われました、しかし、此方にも村の抱えている問題がありまして、早くこの問題を片付けたかったのです」

「そうですか、それで冒険者組合に依頼を、しかしそれが特別依頼と言うのも妙ですね、何か他にありました?」

ジョーはまだ心の底に引っかかっている問題を質問してみた、通常その話だと、普通の依頼になるからだ。


「はい、私自身がベルンの町に(おもむ)いて、ギルドに依頼しに行きました、そこで依頼内容の話をしたのですが、どうやらCランクの依頼になるようなのでかなり高額な依頼料でした、私達の村は小さいので大層な蓄えが在るわけでもなくてですね、困ってしまい「何とかならないか」、と言って食い下がりまして、そうしたらギルドマスターの方が出て来てくれたんですよ」


ん、んんん? __ジョー、とサイリアは二人同時に「?」顔になった。


そのまま、シバの話は続いていく。

「そのギルドマスターの方は女性でしたが、熱心にお聞きになって下さいました、依頼の内容の事、それと、その問題が片付か無いと村の“ある問題の為の企画”が中止になる恐れがあったのです」

「ちょっと、よろしいですか?その村の問題とは?」ジョーは気になる言葉が出てきたので質問してみる。

「はい、お恥ずかしい話なのですが、現在村は人口不足が目立っていまして、その為『お見合い企画』なる者を催して、村人との“結婚”して人口を増やそうと計画していまして……」


それだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ―― ジョー達は叫び出したかった。


くそギルマス(※リング=ディレイ)は始めからしていたのだ、だから内容を誤魔化していた、とその時2人は初めて気が付いた、それと同時に殺意も沸いている。

2人は現在青筋が額に立つ程顔を歪めていた。

「どうなさいました?」シバ夫妻は心配そうな顔で覗き込んだ。

「い、いえお気になさらないでください、ただ“思い出した”事がありまして。…どうぞ話を続けて下さい」


「それで、ですね私も諦めかけていたんですが、せめてお見合い企画の告知だけでも冒険者組合で表示出来ないかと相談した所、ギルドマスターの方が、ですね、特別にランクを下げて特別依頼と言う事で処理してくれる、と言ってくださいましてね、随分格安になりましたよ、いや~奇特な方が世の中にはおりますな、ははは」

シバは最後に何も知らず快活に笑った。

(あのクソ女、お前のお見合いの為に俺らを利用するなよ)――ジョーは腸が煮えくりかえっていた、隣にいる、サイリアを見ると同様の思いである表情をしてる。


「それで、その他に何かありましたか、ギルドで」ジョーは必至に笑顔を造りそう言った。


「そうですね、『お見合いの件の告知も任せて下さい。』と言っていました、それに『最高の冒険者を送ります。』とも言っていましたね、…でも、こんなに早く来てくれるとは思って無かったですよ」

シバ夫妻の嬉しそうな顔にジョー達は断る事も出来なかった、彼らもこの村の事情がある為、(わら)にもすがる思いで、冒険者組合を訪ねたのだろう。


冒険者には冒険者の「義」がある__歴代の冒険者も困難な依頼の時にこの言葉を使っていた、国の騎士団とは違うが、自由に生きる者の心粋として言われてきた言葉だった。


「大体の事情はわかりました、依頼の方は任せて下さい、後、失礼ですが、寝る所等はありますか?宿屋などは?」

ジョーは覚悟を決める、隣のサイリアを見ると彼女も覚悟を決めたようだった。


「申し訳ないのですが村には宿屋は無いので……そうですな、近くに空き家がありますのでそちらでどうですか? ちゃんと管理していますのでボロではないです、それに食事はこちらで準備します」

「そうですかでは、ご厚意に預かります」ジョーとサイリアは頭を下げる。

「いやいや、よして下さい、こちらが頼む立場ですので当然です、・・いま家内に案内させます、直ぐ近くですので」


シバ夫妻はニコニコしながら、言ってくれた、それがジョー達にとって救いだった、…たまに態度の悪い依頼者もいるのだから…。


その後、本格的な調査は明日からにします。――と返事をして、村長の家を後にした、セレスの案内で3軒先の空き家に馬車を連れて到着した。


「馬はその小屋がありますからそちらにどうぞ」セレスの指差す方向には良く使われているがちゃんと整備された木製の小屋があった。


ジョー達は馬車をそこに止めて、馬を解放してやる、中に干し草のおやつが置いてあったので、それを置いて、井戸から水をくみ上げ、飲み水用の桶に入れておいた、馬への労いも忘れないのが、冒険者の心得のひとつだった。


その後、空き家の前に行くとセレスはこう言いだす。

「寝具は1つでいいのかしら?」

唐突にセレスはそんな事を言い出す。

「セレスさん、どう言う事ですか?」――ジョーは疑問に思いながら訊いてみた。

「あら、貴方達夫婦じゃないの?」セレスはごく普通にそう思っているようだった。


「違いますぅぅぅぅ!」サイリアが大声で叫んだ。――腹から声をだすように。


「あら、そうなの、随分と仲良さそうだったから、勘違いしてしまったわね」

「そうです、只の相棒ですから、ジョーと私は、何にも無いですよ」

サイリアは必死に否定していた、顔を赤くさせて。


「ふっふふ、そう言う事にしておきます」セレスは(からかう)ように笑っていた。


「もういいでしょ、それより中にはいりましょう」サイリアはせっつきながら、そう言った。


家の中はよく管理されていた…が簡単な木の机と椅子、それに奥の部屋に2つのベッドしか無かった、ベッドも木の箱に藁を敷きつめて、上から布を敷いているだけの簡単な奴だ。__この世界ではこれが一般的な寝具だった。


「急いで、用意したんですが、これしか揃わなくて、なにかあったら言って下さい」

そう言ってセレスは家の鍵をジョーに渡して戻っていく。


ひと段落ついて、二人は同時に溜息をついた。

「なあ、サイリア、今回の仕事早く終わらそうな」

ジョーは近くにある机の椅子に座りながらそう言った。

「ええ、そうしましょうか」

「だな、早く帰ろう」


2人は決意していた、この村の依頼が嫌いなわけではない。


早く、帰ってあのギルマスをぶっ飛ばす。___そう決意していたからだった。


「ギルドマスター」回でこの話の伏線が見て取れますよ。

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