ドレイク討伐2
――2日目。
昼過ぎなり、1匹のドレイクが地上に降りてきた。
[ドオォォォン]という地面から音がして、周囲を警戒しながら長い首を左右に動かして岩場にある肉の塊を見ている。
ドレイクは全長10メートルほどの大きさだった。
全身に黒い鱗、恐ろしい竜の面構え、強靭な翼と皮膜を広げればもっと大きくなりそうな身体があった。
凶悪で鋭い爪が装備されている前肢と後肢。
長く太い尻尾と黒々している先っぽの棘のような部分が光る。
息遣いも[フッシュ――――……]と鼻を鳴らしその音すら恐ろしく。口元から覗く牙も鋭く、それがびっしりと生えそろっていた。
眼つきも鋭く、瞳から見る眼光が細く無機質に見え、それが恐怖する一因を倍増させていた。
構えと動き、そして色と名前から凶悪で凶暴な竜『ドレイク』に間違いは無かった。
辺りを見渡し周囲を警戒し続けている。
直ぐには近づかず、危険を察知したらすぐさま飛び去ろうとするように翼を動かしていた。
その少し離れた場所で――。
「よし、ようやくきやがった……」
小声で持った土の陰に隠れながらオジュールは言う。
息をひそめ、その後ろにジョー達を始め多くのメンバーが身を潜めていた。
全員の表情は真剣であった。
特にヒュールは慎重で、そのまま低い姿勢のままオジュールに近づく。
「オジュール、あんまり顔を出すな、また気がつかれるぞ……」
忠告して手で合図を送った。
何しろ、朝から2回ほどドレイクから逃げられていたので皆も神経質になっている。
「わかったから……。おッ……警戒しながら餌に近づくぞ……」
オジュールは偽造用の木々の隙間から様子をのぞきみて後方に伝えていた――。
ジョーとサイリアはオジュール達のいる場所の後方にいた。
「ジョー…、ジョー…、来たの……」
サイリアは杖を持ちながら、すごく小声でジョーに話しかける。
「あぁ……、餌に喰らいつくかもな……」
ジョーもサイリアに聴こえる位に小声で返した。
「そう、始まるのね……」
「そうだな、ヘマはするなよ……」
「………」
急に無言になったサイリアを気にかけると彼女の顔は少し強張っていた。それは単純な理由であり集団戦において最も重要な事。彼女の魔術の操作性の問題だった。
動く相手に上手く当てられないサイリアだが、それは逆に考えると連携している仲間に当ててしまうという可能性があるという事になる。
ジョーはその事を察し……。
「サイリア、訓練した通りにやれば大丈夫だから……。ゆっくりと標的と仲間の動きを見ろよ。自分が出来る時と感じたら魔術を放て、それ以外は止める事も大事だぞ……」
ゆっくりと静かに言い聞かせるようにジョーはサイリアに話した。
優しい言葉かけられ、サイリアは落ち着きを取り戻すように小さく笑った。
「わかった……」
サイリアが小声で言うとジョーはサイリアの肩に手を置いて気持ちを落ちつけろとポンポンと叩いた。
「おい、そろそろ喰いつくぞ。準備してくれ」
ヒュールが通信人形を片手に指示を出す。
【平常心でいけよ。2人共……】
ジョーの背中に背負う相棒から小さな声がする。
「わかっている……」、「任せて……」
サイリアもいつもの表情に戻りギュッと杖を掴んだ。
ドレイクは岩場の上に置かれた肉に喰らいつく。1口2口食べたら、また辺りを警戒する事を繰り返している。
少しずつ身体を移動しながら岩場にある肉に齧りつき、顔を上げて食道に肉を流し込んで腹を満たしていった。
次に身体を揺らし、後ろ脚を動かした直後――落とし穴に落ちた。
すぐさま、鋼縄がドレイクの脚を絡め取る。縄が引っ張られ、地面から波のように葉っぱが舞い上がった。
「よし、掛かった。いくぞぉぉぉ―――!!!!」
オジュールの裂帛の気合を入れた戦闘開始の合図と共に数名が姿を見せた。
「よし、ヤレ。直ぐに“土縄鎖”の準備をしろ」
ヒュールが命令すると3方向から[バシュッ、バシュッ、バシュッ……]と聞き慣れない事が飛び交う。
“空気圧縮型64式小銃”により麻痺属性の毒薬を詰め込んだ“呪術弾”が発射されていた。
そして――「土よ、地の精よ、その力を貸し、かの者を引きずり込め。……“土縄鎖”」という魔韻が聞こえるとドレイクのいる地面に魔術陣が出来あがる。
暴れているドレイクに地面から何十本も細い縄のような鎖が飛び出て翼の皮膜がつき破られ。翼に巻きついていく。他にもいくつかの魔術がドレイクに突き刺さっているようだ。
轟く咆哮を上げ、ドレイクは更に暴れ出した。
鋼縄を繋げている複数の木々がギシギシと軋んだ音を立てているが飛び立とうとはしない、地面で暴れているだけだ。土縄鎖もそのまま巻きつき動きを封じている。
ドレイクはもう逃げられないという事だった。――
「準備は出来た、突撃ぃぃぃ!!」
オジュールの合図と主に前衛に属する、オジュール、ヒュール、ジョー、ガイン、ガルン、ミック、ラリー、グレー、ジュローの9名が土塁から飛び出した。
「作戦通りにいけぇぇぇ!!」
オジュールの指示に従いすぐさま分かれる面々。
ガイン、ガルン、グレー、ジュローの重装甲の部類の者はドレイクの正面に回る。ラリー、ミック、ジョーは側面に移動していた。
「よっしゃぁぁぁ、一番槍もらい―――!!」
ラリーは得意のランス突撃の速度のまま一直線にドレイクの後肢の脚元に槍を突き刺した。
痛そうに咆哮を上げるドレイク。それが戦いの始まりを告げた。
「守りを固めろ、ドレイクを引きつけて置いてくれ」
オジュールの命令によってガルンを始めとするメンバーが列を造りドレイクの目の前に立ち並び大盾を構え始めた。
「崩されるんじゃねぇぞ――!」ガルンの掛け声に周りが野太い声で返事を返した。
その間に林の奥から援護射撃のように弓矢と魔術の矢が飛来して飛べなくなったドレイクに容赦なく襲い掛かった。
ドレイクは煩わしそうに首と身体を身震いさせると弓矢と魔術の矢をモノともしない様に振り落とす。 そして側面をそのまま攻撃しているラリーを邪魔だと思い、尻尾で振り払おうとして身体をくねらせた。
ラリーは尻尾の攻撃を飛びのけ回避する。――その為、距離が開く。
すると――今度はドレイクが正面を睨み、口元を「ガチ、ガチッ!」と鳴らした。
「炎の息吹が来るぞぉぉ!!」
オジュールの命令にガルン達が反応して盾に魔力を送り込み盾に仕込んだ魔術陣が発動して光を放つ。
しっかりと身体を固定させると、すぐにドレイクは口から火焔放射のような巨大な渦を放った。
――激しい火焔の波がガルン達を襲う。
【よし、隙が開いた。イケッ!】
「あぁ、いくよ!!」
ジョーは脇から飛び出し、蛇腹刀を構え、そのまま首を突き出したドレイクに突っ込んでいった。
考察。
ドレイク討伐時に罠にかかった鋼鉄縄に雷魔術を流して動きを止めようとも考えたのですが、実際問題で鉄は熱を帯びると脆くなるんです。雷自体はエネルギーですから熱を持つ事は間違いではないかと。
なので強靭であるはずのドレイクにはちぎられる恐れが出てきます。
通電処理を施している設定にもしようと思いましたがカットしました。
その為、現在の形に落ち着きました。




