ドレイク討伐1
「お~い、こっちに土壁創ってくれ」
「偽装用の木、置いておくね」
「寝床の準備もしろよ」
「鋼縄、木にくくり付けるから手伝ってくれ」
オジュール達の部下である翼陽の団の面々が声を掛け合いながらドレイク狩りの準備を進めていた。
「お~~~!!! やっぱり大きな団はキビキビ動くな、それに慣れているな」
ジョーは感嘆の声を漏らし、隣にいるサイリアに向けて言葉をかけた。
「そうね、やっぱり大きい所は違うわ……」
サイリアもその様子を見て驚いている。
「じゃあ、こっちに入るか?」
隅っこで見守っていた2人にヒュールが声をかけた。
「おっ、ヒュール、ココに居ていいのか? 副団長さんよ」
茶化すような表情でジョーは訊く。
「いいんだよ。それよりも……“コレ”を渡しておくから」
ヒュールは腰鞄を漁り、何かを取り出した。
「これって、昨日言ってた、通信人形と烽火筒?」
サイリアがヒュールの手に持っていた、桃色と緑色の小さな人形2つと20センチ程度の小型の筒2つを取り出した。
『通信人形』とは――短距離で言葉を通信する事のできる魔道具。距離にして約10キロが限界。機能としては“お知らせ振動機能”と“通話・遮断機能”の2つで実に簡単な物。
『烽火筒』とは――ゴブリンキングの時にヒュールが使用していた道具。導火線に火がつけば上に烽火が上がる。
「ああ、通信人形の方は昨日説明した通りだ。赤い目を押せば通話出来る、青の目で切れるそれだけだ。動力は魔力鉱石を設置してあるからそこに流し込むだけでいいよ」
そういって差し出し――「どっちにする?」と訊いてきた。
「あたし、こっち」――サイリアは迷わずに桃色の人形を取る。
「じゃあ、俺はコレしか無いな……」――ジョーは緑色の人形を取った。
「この“烽火筒”を一本ずつ受け取ってくれ。導火線に火をつけて上に向けろよ。方向は見れば分かるけど、赤紙を巻いてあるほうが上だぞ」
そういって、注意事項を読みあげるようにヒュールは説明する。
2人は“烽火筒”を1本貰いそのまま自分達の持っている鞄にしまった。
「わかった、コレで連絡ね」――サイリアは言う。
「そうだ、ジョーもサイリアも狩りが始まったら、まず通信人形で連絡出来る状態にしておいてくれ。他は訓練した通りに。それと……もし予想外の事が起きたらその筒で知らせてくれ」
ヒュールはいつもと変わらずに淡々としていた。
「わかった。まかせて、ヒュール」
「あぁ、わかったよ」
ジョー達も返事をして了解していた。
「じゃあ、これで。暇だったら寝床の準備手伝ってくれよ。オレは“双璧”の所にいって同じように説明しないといけないから……じゃあな」
ヒュールはそう言ってすぐに反対方向に駆けていった。
それを見送って、ジョー達はヒュールに言われた通りに寝床の設置の手伝いに向かっていった。
「翼陽の団ってこんな便利な魔道具持っていたのか……いいなぁ~~。どっかの魔女はこういうものを造れないものかなぁ~」
ジョーは横を歩くサイリアに物欲しそうな目を向けながらオネダリしていた。
「うっさい!! 造るの大変なのよ、魔道具って! 大掛かりだし、おカネもかかるし。魔道具造りたけりゃカネを出しなさいよ!」
サイリアはそう言って怒っていた。
プンスカと、プンプンスカスカとそのような勢いで怒りだす。
「おい、怒るなよ。それに守銭奴のような言い方だったぞ」
「……ジョーも同じでしょ、まったく……」
サイリアは呆れ気味に、ジョーは素知らぬ顔で林の中を歩いていった。
***
その後――準備も出来て3時間が過ぎた。
オジュール率いる“翼陽の団”、“双蛇”、“双璧(グレートウォ―ル)”、“三槍将”の面々は林の周りに造った土塁の陰に隠れドレイクが降りてくるのを待ち受けていた。
木々で偽装を整え。罠に使っている鋼縄もバッチリと匂い消しを使い。葉っぱと草木で縄を隠している。
そして、ドレイクが食べやすいように平らな岩の上にワザとらしく置かれた。解体して間もない“イノブタギュウ”の肉200キロ分を置いていた。
後は―――罠に掛かるのを待つのみ!!
そうしたらすぐさま飛び込んでドレイクを仕留める手筈になっていた。
しかし――。
「こねェぇぇぇぇ!! まったく降りてこないぞ。ドレイクの野郎がぁぁぁ!!」
オジュールはキレてそう言った。
まったくと言っていいほど周りに影も無くただ時間だけが過ぎていた。
「まぁまぁ、落ち着けよ。それよりオジュールの番だぞ」
ジョーは土塁の近くに座りガルン、ガイン、ラリー、ミック、オジュールのメンバーで“絵札”遊びをしていた。
『絵札』とは――1から13までの数字と記号に分かれ札を使い遊ぶ遊戯道具。♥(ハート)♦(ダイヤ)♠(スペード)♣(クラブ)の4つの絵柄に分かれ。さらに11から13までは独自の図柄に分けられている。基本の52枚の他に独自の絵柄の“切り札”と呼ばれる札が1枚入っている。全部で53枚入り。西の大国から発祥した遊びで賭博場でも使われている。
《※ぶっちゃけ、只のトランプです》
遊びの内容は5枚の札を交換して遊ぶ。“ポーカー”をやっていた。
もちろん――カネをかけて。
他の者達も各自で自由に行動しているようだ。
「落ち着けって。ドレイク討伐ってのは一筋縄じゃいかないって知ってるだろ。あいつ等繁殖期前のこの時期に餌を求めるけど……警戒心も強いし、めったに降りて来ないんだよ。丸1日張ってたって掛からない事もあるんだ、気長に待てよ」
ヒュールは平坦な表情でオジュールを諫めた。
そんなヒュールは地面に布を引いて魔術武器“空気圧縮型64式小銃”と呼ばれる『エア・ロックヨン』の整備をしていた。
『エア・ロックヨン』とは――全長990ミリ、銃身長450ミリ、重量4キロ程の銃型武器である。風の魔石を使い、魔獣の強靭な皮袋で銃内部で圧縮して“弾”を高速で発射する、射程は200mほど、備考としてはニ脚が空気シリンダー近くに付属している。
「そうです。ヒュールさんの言う通りです。落ち着いて下さい。それに大声をあげれば逃げますよ」
エフレスカも同様の銃の整備をしながらヒュールに賛同した。
オジュールはしょうがないという感じで溜息を吐いて――また座った。
「あ~~~~~~~。イライラしたら、運も逃げて行きやがった」
オジュールはそう言う。
負け込んでいたのもいきなり騒いだ原因の1つだった。
「運を持つのは、俺にように笑わないとな。ガハッハッハッ」
ガルンが大声で笑う。
すると――ガインが「兄ちゃん、大声で笑ったら駄目だって」と直ぐに注意した。
「いけねぇ……」――と札を持っていない方の手で口を抑えるガルン。
「いまさら遅いからいいよ、それよりも後、半刻(=1時間)ほどしたら日の入りだ。ドレイクってのは昼間行動型になる。だから、そろそろ撤収準備だけはしとけよ……」
ヒュールがそう言うと――。
「「「「「「 へ~~~~い…… 」」」」」」 と、気の無い返事が辺りから帰ってきた。
そうして何も無く1日目を終える一行だった。
間にカティアの話をはさむ予定です。
いきなりドレイク討伐は上手くいきません。
現役猟師の方も何日もかけ罠を仕掛けるかと……。




