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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
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貴族の嗜み

 壇上(だんじょう)に上がる1人の貴族がいた。

 身なりも整い、髭も服装にも気品という気品を詰め込んだような、まさに貴族という格好をしていた。

 落ち着き、慌てる事なく壇上を歩いていく。


 周りを囲む貴族達もそのギグメディス=カストレア卿の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)をつぶさに観察して羨望(せんぼう)嫉妬(しっと)の眼差しで見守っていた。


「これよりぃぃぃ、お言葉を頂戴いたしたいと存じますぅぅぅ。ギグメティス卿ぉぉ、おねがいしますぅぅぅ」


 司会から魔術具を用意され小型の棒のようなモノを受け取るギグメティス。

 そして――ゆっくりと静かに言葉を発した。


「この場を用意してくれた方々にお礼を述べたい。では僭越(せんえつ)ながら挨拶をさせてもらおう。私は前回の覇者と言う事でこの場にたっているがいつもの事だと思っている。今回も最後に勝つのは私だと確信している。少しでも楽しめるように是非とも他の方々も頑張ってくれたまえ」


 堂々と言葉を並べた。傲慢に上から目線の言葉をその姿勢と服装に合わせるべくギグメティスは言い放った。


「おおぉぉぉ、これは、優勝宣言ととってよろしいですかぁぁぁぁ?」

 司会の者がさらに(あお)るように言葉を続けた。


「まぁ、そのようなものだ。せっかくの武練会だ。せいぜい強い挑戦者が現れる事を期待する」


「な、なんとぉぉぉ、強気な発言ですがぁぁぁ、これも5回連続で優勝をしている自信でしょうかぁぁぁ……」


 そうして司会の進行で周囲の貴族を煽りながらギグメティスの言葉は続いていく。


 後ろから、その様子をジョー達は見ていた。


「なによ、あの物言い。本当に貴族って傲慢(ごうまん)よね。ジョーもそう思うでしょ?」

 サイリアはギグメティスの発言を聞いてジョーに同意を求めるように訊いた。

 しかし――ジョーは直立不動のまま壇上を見上げていた。


「ジョー? 聞いてる?」


「……あぁ、……まぁ、貴族って…いろいろ、あるんだよ……」

(なんだって――! 表情とか変わり過ぎだろ……)


 色々言いたい事があるのだが、ジョーは我慢した。あの場所のあの時間の出来事がジョーの脳裏に再生されている。


 歯切れの悪い発言にサイリアは不思議に思う。普段のジョーなら文句の1つでも言うのだろうと思えたからだ。

 目の前でなにやら浮かない表情をしているジョーの事など予想外の出来事であった。


 そして――ジョーは……。


 途中で聴こえてくる――「な~に、その時はガツンと言わないと駄目だね。家内(嫁)にも私はいうよぉ、やはり貴族というのは、いや、男性というのはね、自分の家内に強く言えてこそなんだよ。武練会という男性の(たしな)みに余計な口を挟むなってね。ハッハッハッハッ……」


「さすがぁぁぁ、ギグメティス卿ですねぇぇぇ。まさに亭主関白というヤツでしょうかぁぁぁぁ」

 と――他の貴族から称賛と拍手が送られる現場を目撃しつつ――ジョーはその場を去っていった。


 (ジョー)は走った。虚勢を張る同志(ギグメティス)の為に、(ジョー)は走った。会場の外に……涙が溢れそうになるが上を向いて零れないように。

 途中何度止まりかけたが、なんとか手を目元にあてって涙が落ちる事を食いとめた。


 つらい、あまりに辛い貴族の(たしな)み。


(ぁぁ、虚勢の世界に生きるとは……貴族ってのは、辛いんだなぁ……)


 こうして――ドレイク討伐の前夜祭は終了した。


※※※

 

 翌日、大歓声の中をドレイク討伐に参加する面々は進んでいく。

 始めに貴族連中が進み、次に招待された者達、最後にギルドで仕事として請け負う者達の順番で王都に用意された道を進んでいた。

 

 その大声援の中でジョーとサイリアは自分達の馬車でオジュール達の馬車の後を追従(ついじゅう)しながら辺りを見渡していた。


「サイリア。見てみろよ。凄い人だかりだな」

 ジョーは操縦席から後ろに目線を向けて話しかけた。

 後ろでうずくまり、人目を避けるように荷物の陰に隠れているサイリアに向かって。


「……うん、すご~~い声ぇぇ~」

 サイリアの震えた声が聞こえる。


「あと半時(30分)で城門の外に出るから……そうすれば人混みも無いから出て来いよ」

 ジョーは溜息をついてサイリアにアドバイスを送る。


「うん……ワカッた~~」

 元気の無い返事が返ってくる。

 

 その事でジョーは片手で頬杖をつきながら。もう片方で手綱を操り。前の馬車でオジュールがドレイク運搬用に借りた大型の運搬車の上で剣を振り回し、周囲の観客を楽しませている光景を目撃しながら――「あ~あ、しまらねぇ~」と声をだしていた。


※※※


 ほとんど丸1日かけて王都から北にあるドレイクの生息域の山々に入っていった。

 山脈のように連なる大小に分かれた無数の山々。

 高い木々が生い茂る場所と、草木の生い茂る高原の半々に分かれた場所をジョー達は進んでいる。


 ドレイク討伐武練会の参加者は約90組、1組50名ほどが一般的だが冒険者の組はその半分位が通例だった。

 勝負の方式は約1ヶ月間でどれほど多くのドレイクを狩る事が出来るか、その数で決まる。

 狩ったドレイクは生息域から半日程いった村にギルドの臨時の買い取り所を設けてあるのでソコで査定と換金が出来るようになっている。

 毎年、ドレイク討伐武練会の死者数は全体の1割程となっていて大怪我をして引退や生活に支障をきたす者も1割程出る、非常に危険な競技だった。


***


 快晴の空の下でオジュール達一行は馬車を歩かせ辺りの地形を確認していた。

 狩りをする場所を的確に選ぶのも一流の冒険者の仕事だ。


「よし、ここにするか!!」

 オジュールがいる馬車から元気よく声が掛かる。


 そこは草原と木々が生い茂る林の境目、段差になっていて緩い坂になっている場所だった。


「いいんじゃないか? 近くに沢もあったからちょうど良いかも」

 オジュールの横に居るヒュールもそう言って賛成する。

「よし、決まりだ!」

 嬉しそうに笑い――周りを見渡していくと――「お―――い!! 場所が決まった!! 止まれ!!」と、大声で叫んだ。


 そうして馬車を止め。辺りに知らせていく。


「どうやら場所が決まったみたいだな……」

 ジョーは気だるそうに言う。

「わぁ、いい場所かも。それにさっき水場もあったから水浴び出来る。嬉しい!!」

 サイリアが元気よく感想を言った。



 そうして――林の中に馬車と荷物を隠し、寝床と罠の準備を開始した。





途中の詩のような文体ですが……【走れメロス】のようにしてみました。

気がついた方もおられたかと……。

司会の進行はすこし崩しました。王族の前であの言葉使いはないでしょうが、せっかく前の回で振りを行ったので脚色だと思ってください。

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