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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第1章;とある魔剣士&とある魔術士の冒険
7/441

特別依頼『モモガ村の調査』

2016 8/21 改訂

翌朝、ジョー達は目を覚ます、ここベルンの町の郊外にある3等地(※土地のランク)の平屋に住んでいた。

貧乏貸し平屋と言っても過言でない、月に銅貨98枚で住める(※値切り済み)夢の豪邸なのだった、部屋2つと居間、料理場、にトイレと倉庫件小屋が付いてこのお値段(2LK)

そこにサイリアと二人で住んでいた、もちろん部屋は別々だが。


※この世界は月12月、日数は月30日で週は6日、年360日掛かる計算で。(現実と同程度)


「あ~~、頭痛い、二日酔いだな、完全に」

眠たそうな顔で装備を整えるジョーがそこにいた、皮の靴をはいて、足に鉄当てを装備している真っ最中だった。

「ジョ~、準備出来た、置いてくよ」

サイリアの声が居間から聞こえてくる。

「おお、今行く、先に朝食の準備してくれ」

「もう出来ているから」


そう、熟年夫婦の会話でやり取りする二人、ここに住んでもう2年が経過していた。

準備も途中にジョーは居間に移動する、そこは簡単な木の机に椅子、周りには食器棚に調理場があった、机の上には朝食が、堅そうなパンに野菜のスープと肉が焼いてあった、そこに卵料理が添えられている。


「遅い、もういくよ」サイリアは机に座りながら怒鳴る。

「おいおい、サイリア二日酔いみたいだから、止めてくれ、朝から怒鳴るのは」

「昨日飲み過ぎよ、早くご飯を食べる」

はい、はい、__とそう言ってジョーは席に座る。

「朝から、キツイなコレは」そう文句を言うジョーだったが…… 

「アッ!」と脅しにも似た声を出すサイリア、――ジョーは静かに食べ始める。


「サイリア、今日からモモガ村まで行くけど、何か必要な物はあるか?」

「無い、強いて言うならジョーのやる気位かも」

「そう言うな、……あッ、行く前に大家の所行かなきゃ 」

「もう言ってきたから大丈夫、それより早く食べてよ、片付けは今日私なんだから 」

はい、はい、――とジョーは言って、そのまま朝食を食べ始める二人。――


そのまま家を出て、小屋にある(ほろ)馬車(ばしゃ)に向かう、馬はブラバール種という長距離で馬力がある品種だった(銀貨20枚)それを一頭ジョー達は所持していた、冒険者の必需品と言える物だった。

馬車、拠点、武器、防具これをケチるな__そう先人達の教えが冒険者の中で言われていた。

ジョー達は拠点だけ?は守られているか怪しい所だが……。


町の門に馬車で向かっている、遠くに知り合いが見えてきた、カイエンが朝から仕事をしている。

「おお、カイエン、朝から真面目だな」

そうジョーは声を掛ける。

「なんじゃ、ジョーか、門番として当たり前だ、それより“仕事”か?」

「ああ、そうだな7,8日位の間、留守にするよ、心配するなよ」

「お前の心配はせん、サイリア、気をつけろよ」

サイリアの方を向いて、笑いながら話し掛ける。

「ありがとう、カイエン、行ってくるね、そっちも気をつけてね」

そう言うとカイエンは笑っていた、まるで親子のような雰囲気だった。


「俺の心配もしてくれよ、カイエン」そう愚痴を垂れるが、カイエンは厳つい顔になり、

「サイリアは何があっても守れよ、ジョーが死んでも、な」

そう、辛辣(しんらつ)な言葉を頂戴(ちょうだい)する、ガックリ項垂れながら、ジョー達はベルンの町を後にした。


今回モモガ村の依頼は『特別依頼』に属していた、通常の依頼は、冒険者組合では依頼主(個人や商会等)が依頼内容を話し、職員が査定した後、ギルドランクに応じた報酬料を支払う事で依頼が出来た(ランクが上の方が高い)、しかし、特別依頼とは依頼が国や領主、または冒険者組合が発行する依頼の事。

内容は多岐に渡るが、職員が査定出来ないか、必要だと判断した時に特定の冒険者達に依頼される事が多い、その分通常依頼より、固定報酬料と追加報酬料が高いおいしい依頼と言われているが……。


リング=ディレイがギルマスになってから様子が様変わりして、危険だと噂されていた……。


ベ ルンの町を出て4時間が立とうとしていた、馬車はそのまま、舗装がされていない道が幾人の旅人や業者が通っていて、道がならされている所を走っていた。

ジョーが手綱を握りながら二人は走行しながら軽い昼食をとっている。


「なあ、サイリア、この依頼どう思う?」横に居るサイリアに聞いてみる。

「正直、…怪しいと思う、あのギルマスが特別に許可したって言うじゃない」

「そうだよな、ギルド査定では一応Dランク依頼になっていたけど、それが只の村周辺の調査だせ、少し異常だな」

「私もそう思う、だって内容もしっかりしてないし、職員もギルマスが決めたとしか聞いて無かったらしいじゃない」


【2人とも、考えすぎは駄目だぞ、いざという時に身体が動かなくなるからな】


ジョーの後ろの荷台に立て掛けていたスネークがアドバイスを送る。

「スネーク起きていたか、アドバイスありがとう」――どうでもいい挨拶を返す。

【ジョー、私は武器だから寝ない、“休んでいた”だけだ】

「はいはい、スネークの言う通りだな、考えすぎは駄目だ、まったくもってその通り」

ジョーは首を縦に振っている。

「そうね、行ってみない事にはしょうがないものね、じゃあ行きましょうか」


サイリアは元気に合図を送り、ジョー達はそのまま馬車を走らせる、途中、小さな村に寄り一晩小屋で宿を借りながら、モモガ村付近まで馬車は移動していた。

 

※※


「あ~、身体が痛い、正直幌馬車で二日は長いかも、サイリアいつも思うけど、良い方法しらないか?」

「知らないわよ、私が聞きたい位だもの、あ~、お尻が痛い」

「そうだ、“浮遊(フロート)する(・)(ボート)”が在るじゃないか、その巨大版を作って、ひとっ飛び出来ないか」

「ジョー、……馬鹿なの、“浮遊する板”は普通の魔術士だって長くは移動できずに魔力切れを起こす羽目になるだけ、大体もって40分位しか飛ばないし、大きくし過ぎるとその分魔力が必要になるから、お勧めできないわよ」

可哀想な子を見る眼でサイリアはジョーを見る。

「……そうなのか、じゃあ、“魔力回復薬(マナポーション)”飲みながら行くとかはどうだ」

「“魔力回復薬”は1本銀貨1枚よ、何本必要になるのよ、行くだけで赤字になるわよ」

サイリアは溜息をつく。

「………」愚かな質問をして無言になるジョー。


突然!


「た、助けてくれ~~~!」遠くの方から声が聞こえてくる。

良く見ると、草原の200m先から馬車に乗った1人の男が武装ゴブリンの群れ(7匹位)に追いかけまわされていた。


それを見るとジョーは言う。

「よし、サイリア、馬車を反転させて逃げるぞ」

[パコォォン!]――ジョーの頭にサイリアの杖が落ちる。

「馬鹿、助けるに決まっているでしょ!」そう怒鳴るサイリア。

「わかっているから、…冗談だよ、たく」

ジョーは荷台に在る蛇腹刀を手にして、馬車を止め、降りた。

「どうせ、あれだろ、あの男性もモモガ村の出身で連れて行ってもらうオチだな。」

「余計な事は言わず準備して、来るよ」


「助けて~~~~!」そう(わめ)く男がこっちに来る。


「助けるから、落ち着け!」

そうジョーは大声を出して警告する、もう20m前まで来ていた。

横でサイリアは魔術を行使していく。


「風よ、私に力をお貸し下さい、その偉大なる力を…風刃弾(エアーシェル)


サイリアが杖をかざした周りに、小型の風の刃が無数(10個)に形成されていく。

「いけ!」――サイリアがそう言うと風の刃が飛んでいく。


結果だけ言おう、ゴブリンに3匹当たり、2弾は外れた、そして馬車に5弾当たった。

(被弾率3割かよ。ていうか、馬車に当たった方が多いじゃん、あッ、1匹生きてるし。――ジョーは手で頭を押さえながら思っていた。


「へたくそ!」そうジョーはサイリアに辛辣な言葉を掛ける、彼女もそう思ったのか顔を見る見る紅くさせた。

馬車に乗っていた男は「ひゃい!」と恐怖の声を上げながら、身を低くして回避していた。

もう少しで助けようとした男を殺すという、いたましい事故(殺人)が発生する所だ…。


ジョーはそのまま駆けだす。

「スネーク頼むぞ」

【ああ、任せろ】

そう言って剣に魔力を流し込む、そうすると剣を振り下ろした。

ゴブリンまではまだ10m以上は離れていたが・・・剣が“伸びる”そうまるで生き物みたいに伸びたのだった。

蛇腹刀はその名の通り、剣の刃が無数の刃節に分かれていて、鋼の様な糸で繋がっていた、そこに魔力を流すと自在に伸びる武器だった(現在、最大20mまで)

地面を“蛇”のようにうねうねと高速で動きながら、ゴブリン達を纏めて突き殺した。

[ジュブブブブブ。]――という音と共に、5匹のゴブリンが絶命した、最後に「ギャウゥゥ」と断末魔をあげていたが、彼ら魔物の言葉など解かるはずもなく、そのまま突いた剣を元に戻す。


〈シュ――――シャン。〉という音と共に、蛇腹刀は何時もの長さに戻っていた、たっぷりと青いゴブリンの血と共に。

【おい、ジョー、ゴブリン血を拭いてくれ、錆びる】

「スネーク、“喰え”よ、その位、それにお前は錆びないだろ」

【私は“グルメ”なんだ、小汚い下等生物の血なぞ食えるか】

はい、はい__と言いながらジョーは持っている布で拭いてやる。


「だ、大丈夫ですか!? 」サイリアは追われていた男に駆けだした、心配そうにしていた。

この場合の『大丈夫』はゴブリンに襲われて、ではなくサイリアの“魔術攻撃”に襲われて『大丈夫』ですか、と言う意味の方が強いだろう。

幸い、サイリアの魔術に驚いた馬はその場で止まって居た為、二次被害は出ていない


「あ、ああ、大丈夫助かったよ、すまないね」

そう、お礼の言葉を男は返す、どうやら、サイリアの事は恨んでない様に見える。

「私の名前は、リューベル=ガガルだ、助けてくれてありがとう」

そう言って2人に頭を下げるリューベル。


「いえ、当然の事をした、までです、私の名はサイリア=ヨキと言います、呼ぶ時はサイリアでいいですよ、それに私達、冒険者をしています」

そう言ってリューベルに頭を下げた


「丁寧にありがとう、そちらの剣士の方は」

ジョーの方を向くリューベル、サイリアも__早く、挨拶なさい__という顔をしている。

「ああ、ジョー=カバライと言う、ジョーでいいよ、それより災難だったな(いろんな意味で)」


「ありがとう、助かりました」リューベルはジョーにも頭を下げた。

「それより、リューベルさんはどうしてゴブリンに襲われたんですか」

サイリアは質問する。

「いやー、お恥ずかしい、モモガ村を出た直後に襲われてね、急いで逃げたんだけどね、最近モモガ村の魔物が良く出ると聞いていたけど、まさかこんな事になってるとは……」

そう、リューベルは言い淀んだ。


「ん? リューベルさんはモモガ村出身じゃないのか?」ジョーは疑問に思っていた事を口にする。

あれほどに状況通りなら、普通はここで村の人が襲われていたと思うからだ。

「ああ、違う、伝え忘れていたが、私…わしはガガル村の村長の息子です、モモガ村には“用事”があってお邪魔しただけの事……」

そう、リューベルは状況を説明してくれた、その後二人はゴブリンの死骸を焼き、その辺に埋めていく。

※こうしないと、ゴブリンゾンビやスケルトンゴブリンになってしまうので冒険者は出来るだけ魔物の処理を行う事が礼儀とされていた。__


リューベルは馬車の点検をしている、先程の攻撃、(サイリア)で動けるか、確認していた。

「ああ、どうしたものか!?」

ワザとらしい、声を上げるリューベル、二人をチラチラ見ていた。

「どうしました?」サイリアが駆け寄る。


「いやね、車輪の連結部に損傷が出来て、直さないとガガル村まで持たないかもしれん、もう一度、ゴブリンの群れに襲われたら、わしは死んでしまう」

そう此方をチラチラ見ながら言ってくる。


「………」サエリアは無言だった、これは彼女のせいなのだから。

(下手な芝居過ぎる、…なんで“助けてくれ”と言わないんだ、待っているのか?)


「リューベルさん、俺達、モモガ村まで仕事があるんだが、一緒に行くかい?」

ジョーはそう切り出した、このままでは埒が明かないからだ。

「おお、いいのかい、ではわしが道案内をしよう、それと、馬車を連結させてくれんか、もちろん、無料で!」いやけに最後の言葉を強調してくるリューベル

「いいぞ、そのくらい、馬は俺達の馬車に繋いでくれ、連結器は後ろについているから」

「ああ、すまんな、いや~助かったよ、冒険者を雇うとカネが掛かると聞いていてな」

「そいつは、デマだよ、人助けもするのが冒険者、いや人間だよ」

「そうか、そうか、済まなかったな、下手な芝居をしてしまった。ははは」


そう、快活に笑うリューベルだった、その後馬車を連結させて、モモガ村に進んでいく。

なんとか、馬車の修理代の話は誤魔化しつつ、モモガ村付近まで辿りついた一行、辺りは林と草原に覆われた田舎道を走っていた。


「リューベルさん、なんで他の村に貴方が来てたんですが?荷物運び?」サイリアが後ろの荷台に居る、リューベルに質問する、彼は、軽く笑うと答える。

「いや、わしは村長の息子だ、いわゆる代理みたいなもの、モモガ村に来た理由はこの村で何やら催しものが在るみたいでその相談だったかの」

「催しもの?何でしょうか?依頼と関係あるとか?」

「まあ、わしも村長に言われて断りに行っただけだが、詳しい事は聞いて無い、ほら、最近魔物が来るので危険と噂されていたからな、……そうじゃ、村長にこの後、合うはずだろから、聞いてみるとよい」

「ええ、そうします」

「サイリア、見えてきたぞ」――ジョーはサイリアに言う。

サイリアが前を向くと目の前にモモガ村が見えてきた。

周りが木に囲まれ、小高い丘に出来た村がある。

人口約500人程度の小さな村で周りに木で出来た柵で村全体を覆っていたが急ごしらえで造ったであろう、柵全体が綻んでいるように見える、周りに空堀も掘っていたが、途中までだった。……

町の造りも木と藁葺き屋根の基本的な田舎の村という造りになっていた。


町の入り口に門番のような男性が立っていた。

「止まれ! 何用だ?」門番の男から声が掛かる。

「ギルドから派遣された、冒険者だ、今カードと証明書を渡す」

そう言うとジョーは馬車を止め、男に冒険者証明板(ギルドカード)と依頼書の羊毛紙を渡した。

「うむ、失礼した、…どうぞお通り下さい」

確認を済ますと、門番の男はジョーに返す。

「ありがとう、ついでに教えてくれないか、この村の鍛冶屋の場所を」

「いいが、何用で?」門番は聞き返す。

「わしの馬車が“ゴブリンに襲われて”壊れてしまっての」――後ろからリューベルが顔を出す。

「おお、リューベル殿さようですか、……それなら、村奥にサジュという若く腕のいい鍛冶屋が居るので訪ねてみて下さい」

門番は丁寧に道を教えてくれた、そのまま村に中に入っていく。

横眼で先程からバツが悪そうにしているサイリアをジョーは軽く叩いておく、__リューベルのゴブリンに襲われては正解だが、“助けてくれた魔術士が壊した”が抜けていた、それでずっと黙ったままなのだろう__とジョーは思っている。


鍛冶屋の場所は直ぐに村人に聞いてわかった、その家の前でリューベルを降ろし、馬車の連結を解除していく。

別れ際にリューベルが言いだした。

「おお、助かりました、感謝しかありませんぞ、……しかし、いいにくいのですが『馬車の修理代』は……」

それを聞くと、サイリアは明後日の方向を向いてしまう。


(おい、サイリア、お前のせいだぞ、馬車の修理代銀貨1,2枚掛かるかもしれないんだ)

リューベルが悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「ははははははっ! 安心なさい別に請求しませんよ、命の恩人に請求は出来ません、“人間”としてね」

リューベルは快活に笑い、そう言った、その言葉にジョー達も笑みをこぼす。

「ありがとう、リューベルさん、また会いましょうね。」サイリアがリューベルにお礼を言った。

「お礼はこちらが言うべき言葉です、わしの村に今度遊びに来て下さい、ガガル村で歓迎させてもらいます」


そう、和やかな雰囲気でリューベルと別れた2人、そのまま、村長の家へと馬車を走らせた。__


次回「モモガ村調査依頼の真実」をお送りします。

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