王都到着でやる事といったら…
ジョーとサイリアは馬車を降り、宿屋を見上げる。
大きめの宿屋だった。敷地もかなりある。
建物は3棟あり、どちら5階建ての石組みの外壁に木造構造で枠組み、そして漆喰のようなもので外壁の隙間を埋めていた。
どこにでもある一般的な建物だった。
「着いたな、ギルド直属の宿屋」
ジョーは隣に居るサイリアと一緒に建物と庭先を見ていた。
ギルド直属の宿屋とは、言葉の通り冒険者組合が所有する土地と建物で経営している宿屋であった。
冒険者なら一般の者より格安で泊まれる嬉しい特典がついている。
王都で仕事をする冒険者や遠征組の冒険者は大抵このようなギルド直轄の施設に止まる事が多い。
「へぇ~、想像より大きいわね、それに綺麗そう。庭の手入れも行き届いているし、お風呂もあるのかな?」
サイリアは庭先を見渡し、嬉しそうな顔をしていた。
このように手入れのされた宿屋は綺麗で料理も上手く、お風呂の大きい事が多い。
それを経験上知っているのと、道中、格安の宿屋ばかり止まっていた為に王都での綺麗な宿屋に感覚がまだ慣れていないと言う事もある。
「あるんじゃないか? 後で中にいる従業員に聞いてみろよ」
「うん、そうする‼」
嬉しそうに返事を返すサイリアだった。
「そりゃよかったな……」
異様に高揚しているサイリアについていけないジョーはひと言だけそう言って荷台から荷物を降ろしに向かった。
近くでは翼陽の団の面々と、冒険者“双璧”と“三槍将”が各自の馬車から荷降ろしを開始していた。
――そのまま、馬車を馬小屋に預け、そのまま準備が完了すると宿屋に入りオジュール達と話をして部屋に案内される。
「着いたぜ、ジョー達はこの部屋を使ってくれ」
部屋に案内してくれたヒュールはそう言って部屋の鍵をジョーに渡した。
ヒュールが扉を開けると寝具が2つあり、木造の箪笥と机、椅子と棚が置いてある簡易な部屋があった。
「エッ! 私達、一緒の部屋なの?」
サイリアはヒュールにそう訊いた?
「そうだけど、何か問題あるのか?」
平然とした顔で応えるヒュール。
「だって、私は女子でしょ? 同性と相部屋じゃないの? それか1人部屋」
「サイリア、そいつは無理だ。この時期部屋は埋まって余って無い。2名部屋しか取れないんだよ、これでもギリギリなんだぞ、それに同じチームだろ? 冒険者をやってればこう言うことだってあるだろ」
ヒュールはさも当然だとばかりに応える。
「え~、だって、道中は女子部屋があったし、普段は野宿が多いし……」
「ほら、サイリア、我儘いうなよ、…部屋に入ろうぜ」
ジョーは皮鞄の荷物を持っているので早く部屋に入りたそうだった。
【まぁ、よくあることだ。普段も一緒に住んでいる事だしなれているだろ】
ジョーが背負っている蛇腹刀からもそう声が掛かる。
「そういうことだ。ジョーも部屋に入ったし、サイリアも早く入れよ。俺も忙しいんだよ、これでも……」
ヒュールは顎で入れと促す。
「わかった……」
サイリアは仕方なく部屋に入っていく。
「夜また打合せするからそれまで自由時間だ。夕食は暮れ6つから食べられるから、“双璧”と“三槍将”と一緒に食事を取るからその時までに宿屋に帰ってくれよ」
ヒュールはそう言って部屋の扉を閉めようとする。
そして――最後に笑顔で、言い放つ。
「避妊はしろよ、それに声は漏らすなよ、壁が薄いから……」
最後にからかう声で扉を閉めた。
サイリアは振り向き。――
「突然、何言うの! アホ・ヒュール!!」
と、――大声で怒鳴る。
顔を真っ赤にして目を吊り上げていた。
「おいおい、ヒュールの“お遊び”に反応するなよ」
ジョーは棚に革鞄を置いて、背負っていた蛇腹刀を肩から下げた革帯ごと外して壁に立て掛ける。
そのまま肩を回り、コリをほぐそうとしていた。
「あ~重かった。それよりサイリアはどっちのベッドを使う?」
ジョーは振り返りサイリアに訊いた。普段通りに――。
「……こっち」
サイリアは訝しげな表情で窓側の寝具を指でさした。
「オイ……サイリア、その顔はなんだ?」
ジョーは睨む様子のサイリアに向けてそう言う。
「襲うなよ。セクハンのジョー……」
「何言ってる。俺はお前に手を出した事があるか!? それにセクハンなんてした事無いからな!!」
まだ傷が癒えていない4日目のカサブタ状態の心の傷を再びエグられ、大声で反論するジョーだった。
必死な表情で目を吊り上げ、そしてサイリアに詰め寄る。
「ヘタれってだけよね、セ・ク・ハ・ンをして信用を落とした騎士さん」
「なんだと、お前抱く位なら娼婦館いってた方がいいんだよ!! それに4年間も一緒にいて手を出さなかっただろ? アホかいまさらそんな貧相な身体に手を出すか!!」
「誰が貧相な身体だ!! これでも結構胸もお尻の肉もあるし、体型も良い方よ、気を使っているから」
「そりゃ、食べ過ぎて。『わぁ~太った』って言って。毎回野菜ばっかりとって『私、気を使ってますぅ…』ってだけの、太りやすい体質なだけの魔女だからだろ。それは肥えて太いだけだって、あるのは無駄な油だよ」
「アッ、なんだと、このセクハン油モノ大好物騎士が!! 将来、中年騎士で腹が出るからな!!」
口悪くジョーを罵るサイリア。簡単にジョーの挑発に乗ってしまった。
「俺は前衛で動いているからいいんだよ!!」
「私だって魔力使って疲れるんだから、一緒でしょ!!」
「ξξξξξξξξ――――」
「▲▲▲▲▲▲▲▲――――」
そう言って、宿屋でも言い争いを続ける2人に、部屋に置かれた蛇腹刀は思う。「また、夫婦喧嘩か」――と。
そうして言い争う事もひと段落して、昼を回った段階でサイリアとジョーは王都に出る。
王都に来てやる事は1つ。自由時間と言う事は――観光だ。
そう考え、カティアとメリーダのお土産探しをかね、王都を2人で歩いていた。
人だかりがあちらこちらに出来ていて、馬車から見た景色より近くを歩く方がその熱量と混雑具合が段違いだと2人は考えていた。
「すっごい人だかり……酔いそう」
「おい、吐くなよ。まったく。裏路地を歩いた方がいいか?」
そう言ってジョーは町中の表通りを行かずに裏路地にサイリアを連れて歩いていった。
「じゃあ、どこに行く?」
ジョーは何気ない事をサイリアに質問していた。
それを訊いたサイリアの瞳が怪しく光る。
そして――腰鞄から1つの手帳を取り出した。
素早く開き――目を高速で動かし情報を探す。
「……商業地区の南通りにある。『極上のひと時をあなたに…』(リ・アラモード・プッチンプリン)亭に行こう。そこで出しているパンケーキが極上とギルド情報誌に載ってたから。お茶と最高に会うんですって!!」
かなり目を輝かせてジョーを純粋な眼で見た。
すいません。先に言っておきます。
お店の名前適当です。
フランス語ですらありません。作者はプッチンプリンが好きなだけなんです。




