表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第4章; 王国狂騒編
65/443

忘れたころに思い出すアイツ

 ヒュールの「会っている」という言葉を記憶から反芻(はんすう)させてみても何も出てこなかった。いくら(ひね)って絞りだそうとしても、ジョーにはどうも『ザボル』という言葉の単語は脳内検索機能に引っ掛からなかったようだ。


「駄目だ。サイリア記憶にあるか?」


「ごめん……何も思い付かない」


 2人は顔を見合わせた、サイリアも同様の様子だった。


「ほら、あれだ、王様小鬼(ゴブリンキング)の時に騎士を指揮していたヤツがいただろ、あいつだ」

 ヒュールもヤレヤレと言った感じでジョー達に答えを言う。


 ――2人の脳内におぼろげながら甲冑を装備し、小型兜(アーメット)を被った騎士が思い出されていく。


「あっ! あっ!! ……あぁぁ? あいつだっけ?」

 ジョーは声を上げたが、悲しい事に顔までは思いだせなかった。


「そうだと思うぜ。あの“誇り高い戦死をした間抜けな騎士”のことだ。ガッハッハッ!」

 オジュールは麦酒を飲んで、笑っていた。


「あぁ、思いだした、“栄光ある無駄死に”をした、誇りと忠義深い騎士だった奴だよな」

 ジョーも何となく、ゴブリンの群れに駆けこんでいった騎士の姿を思い出す。


「こら、ジョー、オジュールも、死んだ人を悪く言わない。呪われるわよ」

 サイリアが間抜けな死に方をした騎士を揶揄(やゆ)した2人に注意していた。


「まぁ、そのザボルって騎士が死んだ事が絡んでいるんだよ。つまり王国側は死んだ騎士達の分の穴埋め要員として俺達を招集したのさ……」

 ヒュールの言葉で理解する2人。


 ブリューシュ王国は、大国のように兵士の数か足りず、その為に冒険者に頼っている部分があった。

 そして、ゴブリンキングの騒ぎで多数の死者を出し、騎士としての面子も潰された形となった《※殆ど、ザボルの指揮のせい》

 そこで白羽の矢が立ったのが見事ゴブリンキングを撃退したオジュール達。


 ――つまり、ほとんど、やっかみと嫉妬とそれに期待も入っている仕事の依頼だった。


 アノ手紙を要約すると『数が足らないからドレイク討伐手伝ってよ。なーに、簡単だよ。君達なら出来るって。それに断る事もないよね? そんな事をしたら賢い君達ならどうなるか分かっているのよね?』

 と言う風に解釈も出来る内容であった。


 さすがに王国相手に喧嘩する事も出来ず。断る事も出来ない。

 結論は――受けるしか無い!


「なるほどねぇ~、それで、オジュール達は俺達に何をやらせるつもりだ?」

 ジョーは大体の状況を理解して、あえて訊いた。


「おい、わかっているだろ? ここまで言ったんだぜ。 ドレイク退治を手伝ってくれよ!」

 オジュールは一転(いってん)、真面目な表情でジョーとサイリアに話しかけた。


「ジョーどうするの? 私はいいけど?」

 サイリアも基本的には了承する。そしてジョーを見つめた。


 皆の視線がジョーに集まる。


「う~ん……わかった……いいよ。オジュール達には世話になった事もあるからな」


「おお!! そうかやってくれるのか!! エフレスカ、新しい麦酒買って来てくれ」

 嬉しそうにオジュールは叫んだ。


「その前に、色々と聞きたい事がある」


「なんだ、ジョー、急に……報酬の話か?」


「それもあるけど、そのまえに“ドレイク討伐”ってBランク依頼じゃなかったか? 俺達Cランクだけど……ギルド規定に引っ掛からないのか?」


 ジョーが指摘したのは仕事の選別についてだった。

 ギルドレベルに振り分けられた依頼はモンスターレベルとも比較される。それが依頼レベルに繋がっていた。

 基本的にギルドレベルより上位の依頼を受ける事は許されない。

 また、下位の依頼も2段階下までしか受ける事は出来ない。

《※カティアの指導は師弟関係で除外される》


 そのような厳しいギルド規定が冒険者の仕事では設定されていた。


「あ~、そいつか……どうだっけ、ヒュール?」

 オジュールはヒュールに話題を振った。


 ヒュールは――溜息をついて話し始める。


「大丈夫だ。今回の依頼は王国主催でもある。融通は効くし、なにより一時的に団に入った事にすれば問題ないそうだ。サイモンに聞いたから間違いない」


「そうか……じゃあ、今回の翼陽の団が出す人数は何名だ? ランクとか教えてくれよ、ヒュール」


「16名だな、それに罠の設置要員にEランクの団のヤツを4名出す。他はDランク5名、Cランク6名、Bランク3名、Aランク2名だ、他の団員は経験値低い奴もいて連れて行けない、Eランクの団員も戦闘はさせられないのでちょっと数が欲しい」


「わかった……俺達の他に参加する冒険者はいるのか?」


「ああ、“双璧”は了解済み、“三槍将(トライデント)”は交渉中。後はいないな……」


「そうか……で、報酬はいくらになる?」


「結構難しいな。ドレイクは高く買い取ってもらえるから1頭倒せば、金貨40はいくんじゃないか? それを1人頭で分けるって訳にはいかないから……団で5割、後はそっちの頭数で割るのは?」


「まぁ、妥当かな……でも結局は出来高報酬ってわけだ」


「まぁ、そうなるな。言っておくけど移動の食費と宿泊代は半分持つよ」


「そいつは太っ腹な事だ。いいのかオジュール?」


「構わないぜ、今回の依頼は王国側との顔つなぎだと思っているから」

 オジュールはツマミを食べながらそう言う。


「なるほどね、“つぶし”の依頼か……でっかい団だと大変だな」


「ああ、団長は大変よ!!――かー、美味い!!」

 そう言いながらオジュールは麦酒を飲み干す。


「………」――ジョーとサイリアは無言になってしまった。


 オジュールの様子は全く大変そうに見えない、その代りヒュールが深い溜息を吐いた。

 その上――「エフレスカ、冷もう1つ貰ってきてくれるか? どうだ、ジョーも飲むか?」――と気楽そうに聞いていた。


(実質、団長はヒュールなんだよな……)

 ジョーはそんな事を思いながら――。手でいらないと合図を送る。

 エフレスカは立ち上がり、そのままカウンターに歩いていった。


 ――暫く談話を挟む。


「それよりヒュール。いつ出発して、どの位の期間、その“ドレイク討伐武練会”ってのはかかるんだ?」


「んッと、そうだな10日後に出発して馬車で王都まで4日間、その後で25日ほどかかるかもしれない」


「結構かかるな……」

「え~、そんなに、お家賃どうしようか……1月分無駄になる……」

 ヒュールの話を聞いて、サイリアは余りに落胆の声を出した。


「しょうがないだろ、俺達もそこは“つぶし”だと考えろよ」

「でもジョー、全く使って無いのにほぼ銀貨1枚分よ、つらい……」


 ジョーもサイリアも余りに生活臭がする会話だが、切り詰める所は切り詰めている、実に冒険者らしい会話だった。


「そこを考慮して宿代は半分出すんだけどね……」とヒュールは言う。





忘れているかも知れませんが。ザボルは騎士団を指揮していた奴です。

ゴブリンキングに団の9割近くを壊滅させられた無能な貴族でした(設定)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ