相談事
ジョーとサイリアは2人だけの仕事を終え普段通りにギルドで依頼の確認を済ませていた。
「では、冒険者“双蛇”の確認取れました。今回の依頼でギルドレベルが“47”に上がりました、おめでとうございます」
ギルドの看板娘の1人狐型の獣人、メル=レイイはジョーに頭さげ、ニッコリとほほ笑んだ。
「そうか……、で、その前に――」
ジョーが何かを言う前に――。
「ジョーさん、ギルド基金の方に報酬は積み立てでよろしいですか?」
メルはそう訊いてきた。
「あぁ、そうしてくれ。それで…さッ・・メルはこの後、暇かな?」
――ジョーはニッコリほほ笑んで訊いた。多少髪を気にしながら……。
「あっ、無理です。こちらギルドカードのお返しになります。それと紙にサインをどうぞ――」
メルにニッコリ笑いながら返されてしまい。その強固な防御陣は崩せそうにないとジョーは悟る。
――仕方なく、いつもの通り紙にサインしてその場を去った。
ギルド会館の椅子にサイリアが座っている。
それを確認したジョーは早足で駆け寄ると――。
「サイリア、行くぞ……」
そう、無表情のまま話しかける。
「あっ、ジョー。さっきヒュールに会ったの……何か用事みたいよ。隣のギルド酒場に居るから寄っていけって。オジュールも一緒みたい」
「なんだ? 声かければいいのに? ギルド酒場まで呼び出すなんて……」
ジョーは不思議な顔をして考える――が答えは行けば分かるので考えるのを止めた。
「まぁいいじゃない、行きましょうか」
サイリアも立ちあがり、ギルド酒場まで歩きだす。
ジョーは頭を掻きながらその後についていった。
酒場に着くと入ってすぐの所に翼陽の団の団長オジュール=カッパーノと副団長のヒュール=ネルン、それと肌が薄らと黒い細身の女性の姿があった。
「お~お、ジョーこっちだ!!」
オジュールは大声を上げてジョーとサイリアを呼んだ。
「声がおっきいよ。用ってなんだ?」
ジョーは近づきながら答える。
近づくとヒュールが手で挨拶をして、その隣の女性も会釈をした。
女性の名は『エフレスカ=エフセス=ビレ』。ハーフダークエルフであり、翼陽の団の一員である。
耳が尖り、肌も黒い、ラビスとよく似ている、眉目秀麗な容姿であるがエフレスカの方が、品があるように感じる。
癖のない白い髪をポニーテールのように束ね、なにやら紅茶のようなモノを飲んでいた。
「まぁ、座れよ、ほら、サイリアも一緒に」
陽気に笑い、そう言って席を進めるオジュール。
その言葉に従い、ジョーは蛇腹刀を降ろし、籠手とマントを外していき、サイリアも帽子を脱いで隣の席に座った。
「それで話ってなんだ?」
ジョーは早速用件を聞こうとする。
「まぁ、その前に“冷”でもどうだ?」
オジュールは麦酒をジョーの机の前に置いた。
「サイリアは何か飲みたい物あるか?」
オジュールはそう言ってジョーの向かいの席に座るサイリアに訊いた。
「えっと……アルナ実とヒリードの混合かな……」
サイリアがそう言うと、机の上にあるコップをヒュールが取り出し「ちょうど頼んでいた……」と言って隣の席のサイリアの前に置いた。
――余りの用意の良さに、ジョーとサイリアは警戒する。
「おい、オジュール、なんだ、この手は……」
ジョーは流石に怪しいと怪訝な顔でオジュールに訊いた。
「何って、接待だろ? それくらい冒険者なら理解しろよ」
えッこいつ何言ってんの!?と言う顔でオジュールはジョーを見る。
「いや、接待は相手の好きな飲み物を予測する事ではないだろ!! とっ、いうか…当たり過ぎて気持ちが悪い……」
ジョーの発言にサイリアは頷いた。
「おいおい、そりゃないだろ。せっかくヒュールが予想してくれたのに!?」
オジュールは納得いかない声でジョーに反論した。
すると――ヒュールは「やっぱり駄目だろ……」と言いながら溜息を吐いている。
「オジュール、素直に話をすればいいじゃないか……」
そうヒュールは提案した。
となりのエフレスカも――「そうです、副団長の言う通りです」と言う。
「そうか。じゃあ言うけど。ちょっとコレを見て話を聞いてくれ」
オジュールは相棒ヒュールの言葉に納得しながら、懐にしまってあった手紙を取り出す。
ジョーは差し出された手紙を受け取ると、封が空いている封筒の中身を取り出して机の上に広げた。
「お~~なんだ、王国からの招待状じゃないか!!」
手紙の質の良さと印璽からブリューシュ王国からの招待状だとジョーは判断した。
「エッ、エッ、何でわかるの?」とサイリアの声を遮って――オジュールは話し始める。
「そうなんだ、それがなぁ~ 王国内のギルド本部からこっちに寄せられた招待状なんだ……内容は……読んでみてくれ」
オジュールは困り顔でそう言う。
ヒュールも読むようにこっちを見ていた。
ジョーは怪訝な顔をしながら手紙を読み始めた。
「えっと何々……親愛なるオジュール殿、貴殿の翼陽の団の――」
「あっそれ読まないで良いから、2枚目読んでくれ。長ったらしい挨拶とおべっかの言葉が延々(えんえん)と続いているだけだから……」
ジョーが読み始めた後、すぐにオジュールはそう指示する。
(それもそうだな……)と思いつつジョーは2枚目の手紙を読み始める。
「えっと……貴殿達の噂を耳にした。今度王国内で“ドレイク討伐”武練会が開かれるので……翼陽の団、団長オジュール=カッパーノ殿も是非参加して頂きたく……」
そこまで読んでジョーは手紙を読むことを止めた。
「つまり、そう言う事だ……」
ヒュールは何気なしにそう言う。
ドレイク討伐とはブリューシュ王国の王都の近くにある山に住む火竜種のドラゴンであった。
“ドレイク”と言う種類の黒い竜で獰猛で危険でありモンスターレベルも1匹“B”から“B+”位の強さで、巨大化すると当然“A”ランクの魔物になる危険な依頼であった。
火竜種と呼ばれるように火炎のブレスと固い鱗、それに前肢による鋭い爪を持ち、強靭な翼で空中を飛びまわる、相当に厄介な魔物でもあった。
「なるほどね……でも、なんでオジュールの所に来たんだ? 何かやったのか?」
ジョーは手紙の内容を把握してそう訊いた。
「ああ、“ザボル=バイル・フェン・リュ―スタス”って知ってるか?」
ヒュールは真剣な表情でジョー達を見るとそう言う。
「ザボル? ……そんな知り合いは知らないな……サイリアはわかるか?」
ジョーは考え込むと目の前にいるサイリアに訊いてみた。
「いいえ……知らない、会った事も無いかも……」
「いや、お前達は前にあっているぜ……」
ヒュールはそう言って笑った。
新しい章に突入します。




