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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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訓練を終え……現れる

 ジョー達は“舞流鈍(ブリュドン)”素振りを終えた。


「カティア、よく頑張ったなぁ~!!」

「ハイ、師匠!!」


[ガシツッッッ!!!]

 と――競技漫画のように苦難を超えた弟子を労い、抱き合う場面もあったが――今は全員が地面に座って休憩を取っていた。


 辺りの空は明るい黄色と朱色を空に垂らしたように変わっていた。


 つまり――夕方になり始め、これからもっと暗くなり夜の(とばり)が降り始める前という時刻。


「さて、町に帰るか……今日の訓練は終わりだな……」

 ジョーが言うと――。

「ハイ、師匠」とカティアは元気に返事をして。


「わかりました……帰りましょうかお嬢様」とメリーダは汗だくになって色ぽい雰囲気でいつものようにカティアを気づかい。


「…………」 

 サイリアは無言のまま頷いた。

 試合に負けた選手のような格好をしたまま――。


 ――そして、訓練後の片付けをし始めるジョー達。


 その一幕で――カティアとジョーは一緒に荷物を片付けていた。


「そうだ、カティア1つ言う事があった」

「なんですか?」


「素振りは毎日行う事、まずは基本の火の型からのうち降ろし、左右薙ぎ、そして突きの4方向の型を身につけろよ、しっかりと基礎を踏むんだぞ」

「はい、わかってます!!」


「よし、それとカティアの素振りは背中の軸がぶれるから気をつけろよ。振る時に前のめりになる事が多いから。素振りは正しい姿勢で振るのが一番いい事なんだぞ……」

「はい、気をつけます」


「じゃあ、荷物おいて、少し矯正しなくちゃ……」


 ジョーとカティアは馬車に荷物を置いて1本の木剣を取り出した。


「構えてみな、カティア」

 木剣を差し出すと、カティアは受け取る。


「はい、火の型でいいですか?」

「うん、まずはそれからだな」

 そう言ってカティアは上段に構える。

 すると――ジョーはカティアの真横に移動して――。

 ヘソの辺りに手を置いた。


「きゃあぁぁ!」

 そのままの姿勢で可愛い声を上げるカティア。――

「し、師匠、何をしているんですか……」


「なにって、振る時の“呼吸法”見る為だよ。“剣は(はら)”と言う格言があって。お腹のヘソを意識して振るんだ」


「師匠、でも、かよわい乙女のお腹を触るのは『性的犯罪(セクハン)』だと思うんですけど……」


「だれが、セクハンだ。訓練だよ、訓練! それよりココに氣を集中させて振ってみなさい。ゆっくりだぞ」


「はい、行きます」


 そうしてカティアはゆっくりと振り始めた。


「もっと、胆に力を入れろ。それに少し前のめりだぞ」

 ジョーはカティアのお腹に手を当てながら、もう片方の手で肩を引っ張り、カティアの姿勢を正していく。


「よし、もう1回だ。カティア。それにしっかり息を吸って、攻撃の時は吐くんだぞ」


「え~、それじゃあ、音がするって、無言のまま撃てって師匠も言ったじゃないですか?」


「いいんだよ、攻撃の時はもう……それに無用な声出しでもない、“呼吸法”は有効なんだ。強張りをとり、剣筋も安定しやすいの。力も増すし、いい事だらけの方法だ。

 初心者が基礎的な事をやらずに誰がやる!!」


「わかりました……。でもお腹を強く押すのは止めて下さい。師匠といえどもセクハンですから……」


 カティアは(ほほ)を赤くしながらジョーを見た、

 まだ幼いと言っても年頃の乙女なカティアだ。恥ずかしそうにジョーに言う。


 そんな時――ジョー達の横から。


「こら、ジョー、それってセクハンじゃない!」

 サイリアの声が言葉から聴こえてきた。


 後ろに心配そうにしているメリーダもいた。


「誰がセクハンだ!! 訓練だぞ、訓練!!」

 ジョーは()える。


「でも、乙女のお腹を触るのは良くないわよ!」

 サイリアはそう言ってジョー達に近づいていく、そして持っている荷物を荷台に置いた。


「本人がセクハンと言えばセクハンなのよ。それにスネークはどう思うの?」

 荷台に積まれている。魔剣“蛇腹刀”に意見を求める、サイリアだった。


【訓練と言えば訓練、セクハンと言えばセクハンだな。難しい問題だ。人々の独自の問題に首は突っ込まない、勝手にやってくれ……】

 スネークはそう言って見事に切り抜ける。


(おい、蛇ってほとんど首しか無いじゃないか、もっと突っ込めよ。それに都合のいい時に、いいように逃げるなよ)

 ジョーは怒りながら思った。


「じゃあ、カティアはどう思っているの?」

 サイリアは怒り顔で訊いた。

「エッッ!!……どうなのかなぁ~、訓練と言えば訓練の一環(いっかん)だし。セクハンと言えばセクハンなのかなぁ~」


「訓練だ! やましい気持ちも無い!」

 ジョーは弁明する。

「ちょっと立ちなさいよ、いつまでカティアのお腹を触っているの?」

 サイリアはそう言ってジョーを非難する。


 ジョーはスクッと立ちあがって――

「おいおい、サイリアなんだその嫌悪感丸出しの顔は……」

 と元気を無くした声で言い、ジョーは予想外の仲間の視線にショックを受ける。


 ――その後、メリーダの指導もしたが、腰や首元、手元を持っただけで「セクハン、セクハン」と非難されるジョーだった。


「もういい、帰えろっかぁ……」

 ジョーは指導を終えた。

 誤解ながら熱心に指導した結果、非難の嵐であったのが予想外にジョーを傷つけていた。


 その時――ジョー達の元に馬車が近づいてきた。

 

 小型でボロい、そして黒く塗装された馬車だ、ソレを引っ張る馬も普通のタイプでは無い。“牛鳥”と呼ばれる魔獣“バッフィー”を繋げていた。

 牛のように黒く大きい、鳥のような太い脚がついて、顔は鳥と牛のちょうど中間のような顔。

 王国のどこにでもいる魔獣であり、畜産用に飼われている。低価格で購入出来るが、餌代も掛かり、速度も馬よりは遅いためあまり冒険者の生活では使われないタイプの馬車引き魔獣であった。


「アニキいぃぃぃぃぃ! アニキきいぃぃぃぃ! アニキきいぃぃぃぃぃ!」

 大声でそのダサくボロい馬車から声が掛かった。


 ジョー達が確認すると、よく見た3人組が乗っている。

黒三連(ブラスラ)”のガイヴ、ラッシュ、オルイガの3人であった。


――そのままジョー達の馬車の近くに止まった。


(うえぇぇ~、凄い移動用だな……)

 ジョーはブラスラの馬車をみてそう思う。

 町中で声を掛けられたら、まず逃げ出そうとするほどダサい。


 黒く塗装した上に『ブラスラ参上! 夜露死苦(よろしく)!』と目立つ7色で書かれている。

 そして意味不明な記号も入っていた。


「わあぁァァ……、ダサい……」

 カティアも小さい声でそう評価した。

 サイリアもメリーダも固まってその場に立ち尽くす。


 そんな事とは知らずに、3人は馬車から下りてきた。


「ガイヴ達かどうした?」

 ジョーはそう訊いた。


「へッへッへッ、兄貴。俺らやりました」

「見て下さい、ゴブリン50匹討伐完了です」

「苦労しましたよ、何せ日の出る前から出かけましたから……」


 嬉しそうな顔のガイヴ、袋を持ちあげで誇らしげなマッシュ、空を見上げて感慨深そうなオルイガ。

 3名とも身体に無数の血が飛び散って、小さな怪我を負っていた。

 まさに激戦の後の勇者のようだった。


「おぉ、よかったな。早くギルドで換金して貰えよ」

 ジョーか簡単にそう言った。


「これで、おれらも参加できますね」

「クッ、やっとここまで来たぜ!これから皆で訓練だ」

「やべぇ、やべぇぞ、ち、力が(あふ)れてくる。さっきまで限界だったのに……」


 非常に嬉しそうにはしゃぐ3人組。


 しかし――そんな3名にジョーは非常宣告をする。


「ごめん、訓練終わったから……俺ら帰るよ。やりたきゃ、勝手にやっていいぞ」


 そう言ったジョーにブラスラ3人の表情が固まる。


 そして――同時に(ひざ)をついた。


「嘘、嘘ですよね。兄貴お得意のハッタリだぁ~」

「まって、まってください。俺らの気持ちはどうなるんですかぁ~」

「これから始まる……楽園時間(パラダイス)がぁぁぁぁ!」


 3人は綺麗な涙を流して呆けていた。


「すまない……。帰るぞ、サイリア、カティア、メリーダ……」

 そう言って、ジョー達は馬車に乗り込んでいった。


「「「ち、ちくしょおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」」」


 3人組みの悲痛な叫びが、夕方の物悲しい空に消えていった――。





黒三星達がなんでゴブリン狩りをしたのかは10話前の「思い出はいつも」をご確認ください。


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