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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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これも訓練?

「ジョー師匠、それってなんですか?」

 カティアは素直に質問をした。

「あぁ……今から見せるから。それを真似れば良いだけだから」

 ジョーがそう言うと――サイリアは手を上げた。


「ジョー、私は辞退していい、魔術士だし、後衛だから……」


 非常に嫌そうな顔でサイリアは言う。

 サイリアは過去にこの舞流鈍素振りを体験した事があるからの発言であった。しかし、それを知らないカティアとメリーダはますます首を捻っていた。


「駄目、絶対駄目! サイリア言っておくけど、後衛だからって肉体の訓練をサボっては駄目だろ、それに最近は剣の稽古もして無いじゃないか!」


「でも……、(いや)だもん……」


「何言ってんだよ、師匠として手本を見せろ! それにこれは基礎訓練だぞ」

 大声でジョーは一喝した。


「わかったわよぉ~~……」

 サイリアはうんざりした表情をしながら、渋々剣を構える。

 

「よし! では今から手本を見せる。カティアもメリーダも良く見ておけ……」


 そう言うとジョーは蛇腹刀を水の剣の構え《中段の構え》にした。そしてゆっくり、ゆっくりと腕を上げ。――火の剣の構え《上段の構え》になる。――そして「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―」と深く息を吐いていく、同時に脚を前に出し、グッと力を込め、今度は―――さらにゆっくり、ゆっくり、最遅で振りおろしていく。

 その間に腕、肩、腰を流れるように動かしていた。


 ―― 一連(いちれん)の動作を終えるまでに約13秒かかっていた。


 そしてジョーは姿勢を戻した。


「以上、……コレを今からやってもらう」

 ジョーの言葉に――カティアはすぐに手を上げた。

「師匠、それだけですか?」


「そうだけど、なんだ、その不満そうな顔は?」


「いえ、あまりにも単純で簡単な素振りだなって思って……」

 そのカティアの言葉にメリーダは「お嬢様、いけませんよ、そんな事を聞いては」とすぐに咎めた。


「ぷっ、クックックッ……。簡単か……そう思うならやってみるといい。回数はそうだな200回でいいよ」

 ジョーは面白そうに笑った。そして持っている蛇腹刀を地面に突き立てる。

 

 そして、[パンッッッ!!]と両手を叩いた。


 その音にビックリとするカティアとメリーダだったが――そのままジョーは「構え!」と言った。


 急いで水の剣の型に構える3人。


「それと言っておくけど強化魔術は使わないように、じゃあ、……始め!」

 ジョーがそう言うと3人は同じ様にゆっくりと木剣を上げた。

 そして、ジョーと同じ様に火の剣の構えにして、息を吐き出す。

 そして、ゆっくり、ゆっくりと木剣を下ろして言った


「よし、1回目、終了! 終わったら直ぐに構え直して始める事! じゃあ次……始め!」

 ジョーがそう言うと3人は構え直す。 そして同じ事を繰り返した。


「スネークは全員の回数を数えてくれよ。俺は監視に行くから」


【わかった、それよりも始めからキツイのはどうかと思うぞ?】

「いいんだよ、この訓練なんて俺が昔からやっている事だから」

【そうかもしれないが……50回位で良かったんじゃないか?】

「いやいや、それじゃあ駄目だ。身体に染み込まない。1つの動作を何回もやらせないと……」

【正論だが……せっかく出来た弟子を(つぶ)すなよ】

「やさしいねぇ、俺も言って欲しいもんだ」

【茶化すなよ、ジョー】

「はいはい、小言はいいから数えてろよ……」

 ジョーはそのままサイリア達の元に歩いていってしまった。


***

 ――(15分後)


 ――あれから、50回目の素振りが始まった。

 カティアとメリーダはこの素振りの恐ろしい所に気がつき始めていた。

 ジョーがカティアの言葉に笑った意味が素振りをしていく内に理解し始めていた。


 1回毎(ごと)に全身を使って振る事がこんなにもキツイとは思わない。


 脚を踏み込んで力を入れ、腰、背筋を使い、腕はゆっくりと動かす為、始めに感じていなかった木剣の重さを振る毎に感じ始めていた。

 全身を余す事なく使う素振り。それこそが『舞流鈍素振り』の真の恐ろしさだった。


「カティア、もっとゆっくり振るんだ。それじゃあ早い」

 ジョーの言葉にカティアは汗を掻きながら、指摘された所を直し、素振りを続けていた。

 しかし、振る、それも振り下ろす時に木剣の重さは容赦なくカティアの腕に疲労を蓄積させていた。


 振る度にさらなる重りをつけられている感覚を覚え始める。


「メリーダ、もっと脚を踏み込む、剣を振る時踏み込みが足らない事が多いぞ」


「……は、はい」

 とても苦しそうな顔で返事を返すメリーダ。


「いいか、1回、1回丁寧に振るんだぞ。それが出来ないと“振り直し”だからな」

 ジョーは悪魔の言葉を言い出した。


 ――(30分後)


 息もあがり、3人とも非常に苦しそうな顔で素振りを続けていた。


「いいか、剣の攻防は全部で9つある。それを“9門”という、切り上げ、下げ、右斜めの上げ下げ、左斜めの上げ下げ、左右薙ぎ、それと突きだ。上と下に1門ずつ、右が3門、左が3門、そして中心が1門。これを繋げると“円”になる。つまり、攻防とは“円”の陣取り合戦のようで、1つの門から剣を侵入させていくことだな……聞いているか、サイリア」

 ジョーは講義をしながらへっぴり腰になっているサイリアに言った。


「もう……無理。わたし……やめる」

 汗だくのまま、へろへろの太刀筋になっている。


「……少しは師匠の威厳を見せようか……。まぁいいよ、休み休むでもいいからちゃんと振れよ」


 ジョーがそう言うとサイリアは限界なのか、ただ頷くだけになった。


 カティアも懸命に振っていた。

 しかし、腕が上がらないのか。変に曲がっている。


「カティア、止めなさい。変に振っても身に着かないし、意味が無い。いいか」

「……はい、ジョー…師匠」

 カティアはそう言って木剣を降ろした。

 ハァハァと――息が上がっている。


「カティア、何回振った?」

 ジョーは質問する。

「……ええっと。110? 120? …あれ」

 

【カティアは116回目だ】

 ジョーの言葉が聴こえたのか、スネークが遠くからカティアの素振りの本数を言う。


「そうか……どうだ、辛いだろ?」

「ハイ……師匠」

「そうだな……これが本当の素振りだよ。1万回振っても剣の振り方は身に着かない、剣の振り方ってのは結構大変なんだ。ゆっくりと、時間をかけて身体に染み込ませていく。そうしてイザという時に無意識で使えるようにならないと“技術”って呼べないんだ。俺の国では“ワザ”とも言うけど」

「“ワザ”ですか……師匠」

「そうだ。この訓練の最終目標は“型”を仕上げる事だ。攻撃の時、力まず、それでいて無駄の無い力で、正確に攻撃する。意識してしまうと、どうしても無駄な力が入ったり、気負い過ぎて失敗してしまうからな。それを防ぐ為の訓練だ! ……分かったな」

 

 ジョーは最愛の弟子に笑いかける。


「は、ハイ、師匠!」

 カティアも残っている元気を振りしぼって返事をした。


 そうして、また気合いを入れ直し、カティアは前を向いた。


「よし!」――と声をだし、また剣を構える。




武術って型稽古が結構重要だったりします。

それに全力で素振りって疲れますよね。

作者は某格闘技経験ありますけど、実戦では5分ほどで息が上がります。

本当にキツイんですよ。

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