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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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サイリアの魔術講座

「じゃあ、カティア。私とあなたが放った魔術の違いは何か分かるかしら?」

 サイリアは得意気に訊いていた。


「えっと……、数と……威力と……曲がって纏まって当たった事…ですか?」

 さっきの結果を自分なりに分析するようにカティアは言う。


「そうね、その通り。じゃあ次はその違いについて説明するわね。魔術の威力の違いそれは放つまでの“溜め”の間に行われた、“魔力量の移行”と“集中力”、そして“想像力”による操作性の違いです」

 そう指を突き立ててサイリアは説明する。まるで教師のようにココが重要ですよと言わんばかりだ。

 サイリアの説明を聞いたカティアは分かっていないのか不思議な顔をした。


「サイリア師匠、違いがわかりません……」

「そうね……ちょっと難しかったかしら。じゃあ、少しずつ分けて話をしていくね」

「はい、お願いします」


「じゃあ、カティアは冒険者学校で“魔力測定装置”で計った事は有るかしら?」

「はい、私は『赤、魔深度50』、『緑、魔深度10』で『魔高度700』でした」

「へえ~、その歳でなかなかの結果ね」

 サイリアはそう言って感心した。

 その様子にカティアは照れていた。


 魔力測定装置とは、水晶の中に現れる【色】と【魔深度】と【魔高度】をあらわしてくれる装置だった。

 古くから冒険者達にも伝わる装置で精度はそれほどでもないが魔術を目指す上での指標の1つとして設計された装置だった。

 色はどの系統の魔術が得意なのかをあらわす。赤、青、黄、緑の4系統を基本として、それぞれを“炎”、“水”、“土”、“風”のどの系統が得意なのかを分別していた。

“だいだい”、“黄緑”、“青緑”、“紫”色と分かれ。複合魔術である“雷”や“氷”などの魔術系統の判断もされる。

 カティアが言う様に2系統の精霊を制御出来ると判断すれば、水晶の中にもう1つ光が見える仕組みだった。

稀有(けう)な存在として“虹”や“暗黒”、“光”の系統の色になる人材もいる】

 純度の高い色彩が出れば、その系統の魔術の覚えも威力も高まる傾向にある。

 そして【魔深度】とは系統毎にどれだけ精霊を維持出来ているかと言う指標だった、高い数値なら威力も上り、精度や複合術の期待も高まってくる。

【魔高度】は術者が現時点で持っている魔力量の高さを現す言葉だった。


 つまり数値が高いほど強く、そしてランクが上の魔術を扱える可能性を秘めている。


「えへへへ、ありがとうございます」

 カティアは嬉しそうにそう言った。

「でもね、カティア。今日は無系統魔術だけをやるからね。そうだ。無系統で練習すると他の魔術の精度も上がってくるのは知ってる?」


「ハイ、……えっと確か…。無系統は精霊の力を借りずに自身の魔力を操り使用する魔術で、威力精度ともに術者の力量が試される基本的な魔術であり、魔術の基礎である……でしたっけ?」


 カティアは冒険者学校で教わった教科書の内容の一文をそのまま答えに出していた。

「そう、そう、そのとおり。だから魔術の矢とかは自身の操作性がとても重要で、遠距離攻撃の基本であり、最も使いやすい魔術なのよ。無系統を鍛えれば、他の魔術を使う時の操作や制御が楽になると言われているの。それでね、魔術の矢を的確に使えれば、混合技で“炎の矢”とか“風の矢”とかに派生して魔術を覚えやすいのよ」


「わかりました、練習の時は魔術の矢を基本にするんですね?」


「そうね、でも瞑想も大事だからね。じゃあ次は魔術の溜めについて教えるわよ。“溜め”というのは非常に重要です。簡単にいえば魔術の矢1弾を創る時にどれくらい魔力を込めるのか? という問題になるの。つまり魔力を多く込めれば威力が上がるのは知っているわね?」


「はい、そこは大丈夫です、師匠」


「でも、1つの魔術に長い時間をかけて魔術を込めては実戦じゃあ使い物にならないの。その為に“魔力量の移行”を素早く行う“集中力”が必要です。そしてもう1つは『魔力密度』の重要なことで、密度を上げて貫通力、威力を底上げする“集中力”、最後に操作性と速度を両立するために“想像力”が必要になってくるの。そうする事で魔術の威力は上がって行きます」


「えっと、つまり魔術に必要な事は素早く魔力を込めて、形づくって、操るって事でいいんですか?」


「そうね、カティアの言う通りです」

「でも……考えてたら、余計に分からなくなっちゃた……」

 そう考えて悩んでいるカティア。

 その様子を見て、サイリアはクスッと笑う。

「カティア、魔術は理論だけでは駄目、“考えるだけじゃなく感じる事なのよ”」

「つまり、何も考えるなって事ですか? サイリア師匠?」


「違う、違う、身体に染み込ませて自然に放つのよ。魔術って心の状態も含まれる事が多いから。考え過ぎて魔術が発動しないって事も多いの、それに暴走だってしちゃうもの。だから数を打って精度を上げるのよ、まずは1発の集中力を高めましょう」


 サイリアの提案にカティアは笑顔で「ハイ、師匠!」と答えた。


「じゃあ、今度は1弾だけ魔術の矢を放ちます。ゆっくりやるからよく見ててね」


 サイリアはそう言って姿勢を的に変えた。

 杖を突き出し――「……射ぬけ」――そう言うとサイリアの周りに魔力が放出される。

 そして杖の周りに鋭く尖った円錐(えんすい)状の太い針のような魔弾が1つ形成された。

「ここで重要なのは。魔力量をどの程度込めるかによるの、魔力が移行しているのが分かるでしょ?」


「はい、わかります。濃い魔力が固まっています」


「そうよ、これが魔力密度、しっかりと魔力を形成出来れば、漏れないで安定して固まるの、その為には集中力が必要だからね」

 サイリアの言葉にカティアはしっかりと魔弾を見て頷いた。

「これから、放ちます。その時にどこに当てるか想像して、速度を決めることが大事、曲がって当てるのか、低空を飛んで当てるのかは状況によって使い分けないといけないの。大抵の場合、自分の仲間の後ろから放つから、曲線を描いて放つ事や、一度上に放って高いに置いて、その後降下させて当てるとかするけど。今回は真っ直ぐに的の脇に当てるからよく見ていてね。……魔術(マジック)(アロー)


 サイリアが最後に呪文を唱えると、さっきよりはゆっくりした速度で真っ直ぐに的の脇に当たり――そのまま的を破壊して奥の草原の丘に突き刺さった。


[ドスウゥゥゥン!]と音がして、暫くすると魔力が霧散して消えた。


「どう、わかったかしら? 今からコレをカティアにやってもらうから……」

 (よし、やったー、成功!)とサイリアは冷静に言いながら心の中で嬉しがっていた。


「師匠、凄い威力。それに正確でした」

 カティアは凄くサイリアを褒め称える。その眼は尊敬の眼差しでサイリアを見つめていた。


 恥ずかしそうに頭に手を置いて褒められるサイリア。


 ――少し離れた場所で。


(おー、おー、すっごく喜んでいるな、サイリア。カッコイイ所でも見せたのか……)

 メリーダが真剣に「ヤ――!トォ――!」と言いながら一撃を打ち込んでいる剣を簡単に受け止めながら、ジョーは思っていた。

 横眼で集中していないように見えるが、スルリ、スルリと位置を変え、「もっと軸足を踏み込んで」と助言も送りながらだ。





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